課題名 | (3) 植物と有用土壌微生物との共生機構の解明 |
---|---|
課題番号 | 2011017638 |
研究機関名 |
農業生物資源研究所 |
研究分担 |
(独)農業生物資源研究所,植物科学研究領域,植物共生機構研究ユニット (独)農業生物資源研究所,植物科学研究領域,植物共生機構研究ユニット (独)農業生物資源研究所,植物科学研究領域,植物共生機構研究ユニット (独)農業生物資源研究所,植物科学研究領域,植物共生機構研究ユニット |
協力分担関係 |
国立大学法人東北大学 国立大学法人名古屋大学 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人三重大学 国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学 石川県立大学 (財)岩手生物工学研究センター 国立大学法人宮崎大学 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 国立大学法人京都大学 |
研究期間 | 2011-2015 |
年度 | 2011 |
摘要 | 1. ダイズなどマメ科作物の窒素固定効率の向上、およびイネなど非マメ科作物への根粒形成能の付与には、根粒共生に関与する植物遺伝子の網羅的な同定が必要である。そこで、マメ科モデル植物ミヤコグサの内生レトロトランスポゾン、LORE1の転移活性化系統を材料に大規模な遺伝子破壊集団(タグライン)を作出し、次世代シーケンサーを用いて破壊遺伝子を網羅的に同定したところ、2,450の系統において1,466遺伝子の破壊が認められた。また、後代種子の得られた2,075系統から共生変異体を15系統選抜した結果、既知の4つの共生遺伝子の破壊が明らかになった他、未知の共生遺伝子を複数同定した。今後、タグラインの系統数を増やし、より多くの共生遺伝子を同定することで、根粒共生の理解および応用に発展すると考えられる。2. 根粒共生に関与する植物遺伝子のうち、根粒での根粒菌の窒素固定の維持に関与する遺伝子の知見は未だ乏しい。そこで、根粒菌の感染により根粒は形成するが、共生する根粒菌の窒素固定活性が全く発現しないミヤコグサ変異体sen1を用いてその原因遺伝子を同定した。ミヤコグサSen1遺伝子はダイズのNodulin21、酵母やシロイヌナズナの液胞性の鉄トランスポーターと相同性の高いタンパク質をコードしており、共生窒素固定能発現に不可欠であることが明らかとなった。Sen1タンパク質の機能を解析することで、植物による根粒菌の窒素固定制御機構を明らかにし、共生的窒素固定の有効利用につなげることが可能になる。3. CCaMK(Calcium Calmodulin protein kinase)は、根粒菌および菌根菌の感染を制御するタンパク質キナーゼであるが、その活性化機構は不明であった。CCaMKのホモロジ-モデリングに基づき変異導入したCCaMKの機能解析から、根粒菌感染はCCaMKへのCaM結合を必要とするが、菌根菌感染はCaM結合を必ずしも必要としないことが明らかになった。CCaMKの自己阻害解除は、キナーゼドメインのT265残基を中心とする「水素結合ネットワーク」が、T265残基の自己リン酸化により崩壊することで生じる可能性を示した。感染に中核的な役割を果たすCCaMKの活性化機構が明らかとなったことで、今後、共生遺伝子の発現制御に関する知見が得られると想定される。4. 主要作物と共生してリン酸などの栄養分および水分を植物に供給する菌根菌の感染様式を明らかにすることで、将来的に低投入農業が可能になる。侵入前装置(PPA)とは菌根菌が植物細胞に感染する前に、菌糸の侵入を容易にする細胞構造であり、感染に必須であると考えられている。機能獲得型のCCaMKを根で発現させ、その機能を解析した結果、CCaMKはPPAの誘導に必要十分であることが明らかとなった。上記の結果をあわせ、菌根菌の感染を人為的に制御し、効率的な共生を確立する方法論の端緒が得られた。 |
カテゴリ | 大豆 |