課題名 | 気象災害リスク低減に向けた栽培管理支援システムの構築 |
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課題番号 | 2014025593 |
研究機関名 |
農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究分担 |
菅野洋光 廣田知良 |
協力分担関係 |
気象庁 北見農試 網走農業改良普及センター 北海道大 北海道立総合研究機構 東北大 岩手大 岩手県立大 農環研 岐阜大 |
研究期間 | 2011-2015 |
年度 | 2014 |
摘要 | 早期警戒・栽培管理支援システムの構築に関しては、 a) 水田作物の気象応答、気象災害リスク評価にもとづく作期設計手法の高度化では、地球温暖化による気温上昇下でも、東北地方では冷害発生リスクが持続し、冷害リスクマネージメントが将来でも重要であることを、温暖化予測気候モデルを用いた解析から明らかにした。 b) 移植栽培中心だった気象災害リスク評価にもとづく水稲作期設計手法を、直播栽培にも適用可能とした。北海道妹背牛地区では、近年、遅延型冷害発生リスクが低減し直播栽培の拡大が期待できる一方、5月播種の障害型冷害発生リスクはほとんど変化せず、適切な水管理が重要と判断した。 c) ダイズの作期決定過程に必要な手法となる開花期予測モデルを、東北地方の実用品種や普及が見込まれる品種に適用した。また、栽培リスクとして、東北地方全域において8月の平均気温やポテンシャル蒸発量が高く、気候湿潤度が低いと百粒重が低下する傾向にあることを明らかにした。 d) 地域ウェブプラットフォームの構築では、北日本(東北・北海道)におけるそれぞれの水稲早期警戒情報、冬期の畑の除雪による土壌凍結促進(雪割り)支援情報、寒締めホウレンソウ栽培支援情報システムと、それらを統合するポータルサイトを、地域ウェブプラットフォームとして構築した。 e) 1か月予報データの早期警戒情報等への適応性の検討では、北海道妹背牛地区の現地観測値で比較検証したところ、気温は1か月先まで常に平年値よりも精度が良かったことから、使用価値があると判断した。一方、降水量は、1週間先までの降水の有無の判定においては、地下灌漑水田の水管理作業適否判断支援情報として、使用価値があることを確認した。 f) 病害モデル等への植生熱収支モデルの適用の検討では、アメダスデータを1kmメッシュへ高解像度化した気象データをBLASTAMに適用し、感染好適条件の出現頻度は実際の葉いもち発生傾向とよく一致すること、葉いもち予察の多い年の大規模気象場との関連を確認した。 g) 宮城県鹿島台でイネの葉面結露を観測し、植生熱収支モデルでの計算結果と概ね一致することを確認し、葉面結露予測への熱収支モデルの適用は可能であると結論した。 h) 降雨・降雪・土壌凍結についての広域的長期気候変動評価に基づく農業影響評価及び脆弱性の評価、適応策の検討では、道内の気候の異なる3地点について、先行降雨指数による干ばつ・湿潤を判別し、平成25年までの33年間の土壌水分長期変動を評価し、中標津での年々変動が大きいことを明らかにした。 i) 週間天気予報スパンで積雪深分布を推定するモデルを構築し、中央研サーバで、9日先までの北海道版積雪深推定値の配信を開始した。 j) 全国に適用可能な積雪荷重推定手法を開発し、平成26年北関東甲信大雪の被害域評価を行った結果、500N/m2を超える積雪荷重分布が推定された地域と実際の被害地域とよく一致した。 k) 土壌凍結深の制御による野良イモ対策のシステムについては、気象庁予報データを取り入れ、Google mapを用いたシステム版について新たに開発したメッシュ積雪深分布推定モデルと結合して、メッシュ農業気象データに基づく土壌凍結深計算手法へと拡張した。 l) 根釧地方を対象に、温暖化予測情報を活用できる最大土壌凍結深推定手法F20nを新たに開発するとともに、この土壌凍結深情報と秋季の有効積算気温及びAPI情報を考慮した牧草(アルファルファ)播種晩限の推定手法を開発した。 農耕地土壌からの温室効果ガス排出を削減する栽培技術の開発に関しては、 a) モデル解析による温室効果ガス排出量の広域評価では、耕起方法や肥料の種類が異なる北海道の輪作畑において土壌からのN2O発生量を調査した結果、作物残さの排出係数は、作物により異なるが、いずれもわが国の温室効果ガス排出量算定で使用中のIPCCデフォルト値1.25%より小さいことを明らかにした。 b) 異なる3種類の土壌に埋設した堆肥ペレットの炭素残存率(42か月後)が黒ボク土で低いこと、灰色低地土では堆肥ペレットの種類で炭素残存率(42か月後)に差がないこと、堆肥ペレットの分解が土壌構造に影響を及ぼすことを明らかにした。 c) DNDC-riceモデルを用いて全国6地点の慣行水田からのメタン放出量をシミュレーションした結果、モデルによる推定値は全体的に過大評価する傾向があるが、放出量の地域間差は再現できることを明らかにした。 |
カテゴリ | 肥料 アルファルファ 気候変動対策 栽培技術 直播栽培 水田 大豆 凍害 播種 品種 ほうれんそう 水管理 輪作 |