課題名 |
日本短角種DM牛の特性解明と系統造成 |
研究機関名 |
岩手県農業研究センター
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研究分担 |
外山畜産
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研究期間 |
新H15~19 |
年度 |
2003 |
摘要 |
目的:ア 肥満,高血圧,動脈硬化等の生活習慣病に対する消費者の関心は高く,食生活面ではそれらを予防・改善するために機能性食品を嗜好する風潮が強い.この傾向は今後さらに強くなるものと思われる. イ 牛肉は良質な蛋白質源で需要も多いが,今日の我が国における脂肪交雑重視の牛肉では,同時に多量の脂肪を摂取することになるので問題視されている. ウ 欧州では,低脂肪の牛肉の需要が高く,脂肪含量が5%以下の牛肉を健康ビーフと定義して差別化を図っている.中でも遺伝的に筋肉肥大となるダブルマッスル(Double-muscling;以下DM)牛の牛肉は柔らかく,脂肪が特に 少ないことから,高値で販売されている.エ 当研究所の鈴木らは,本県の特産である日本短角種にもDM牛が存在し,その原因遺伝子が欧州のDM牛と同じ原因遺伝子であること,脂肪含量が欧州の健康ビーフの定義に当てはまるほど低く産肉量も多いことを明らかにしている.しかし,脂肪交雑を重 視する我が国では,日本短角種DM牛は不良形質を持つものとして淘汰の対象とされてきたため,その発育特性,繁殖特性及び肥育特性に関するデータはほとんど蓄積されていない. オ また,最近では,脂肪の量のみならず質,すなわち,脂肪を構成する脂肪酸の種類がヒトの健康に影響を及ぼすことがわかってきた.中でも,共役リノール酸(Conjugated linoleic acids;以下CLA)は抗ガン作用,抗動脈作用,抗肥満作用,免疫増強作用など多様な機能を持つことで脚光を浴びている.CLAは乳製品や牛肉に特に多く含まれ,その含量は牛にリノール酸またはα-リノレン酸を多く含む飼料を給与で制御することが可能であるとされている. カ 本研究では,日本短角種DM牛の基礎牛群を造成し,その発育特性,繁殖特性及び肥育特性を明らかにするとともに,放牧主体で育成し,α-リノレン酸を多く含むエゴマ等を飼料原料として添加することにより,消費者の健康志向及び自然志向にマッチした岩手オリジナルの低脂肪で機能性のある牛肉,すなわち,機能性健康ビーフを作出することを目的とする.キ なお,本研究は,東北大学大学院農学研究科及び独立行政法人農業技術研究機構畜産草地研究所との共同研究である先端技術を活用した農林水産研究高度化事業「日本短角種DM牛の高度利用による次世代型機能性健康ビーフの開発」の一部であり,東北大学大学院農学研究科からの委託を受けて実施するものである.到達目標:ア 日本短角種DM牛の基礎牛群が造成される. イ 日本短角種DM牛の発育特性,繁殖特性が明らかになる. ウ 日本短角種DM牛の肥育特性が明らかになるとともに,飼養管理技術が確立され,岩手オリジナルの機能性健康ビーフが作出される. 予定成果(初年目):日本短角種DM牛が生産され,発育特性,繁殖特性及び肥育特性が明らかになる.期待効果:本県オリジナルの機能性畜産物が作出される.成果:(1)日本短角種DM牛における筋肥大の原因はミオスタチン遺伝子の変異によるもので,欧州で報告されているDM牛の原因遺伝子と同一であり,劣性遺伝により発現する(鈴木暁之ら,東北畜産学会報,2002).(2)日本短角種DM牛の枝肉は,通常の日本短角種と比べ,枝肉重量には差がないものの,ロース芯面積,バラ厚,皮下脂肪厚及び歩留基準値に有意差が認められ,バラ厚を除けば,DM牛が優れていた(鈴木暁之ら,東北畜産学会報,2002). (3)乳用牛において,リノール酸を多く含む油脂を給与することにより,乳脂中のCLA含量が増加し,ピーナッツ油,ヒマワリ油及びアマニ油の比較では,ヒマワリ油給与により乳脂中のCLA含量が最も高くなった(Kellyら,J Nutr,1998). (4)CLAのカルシウム塩を飼料中に混合することにより,牛肉中のCLA含量を高めることができた(Gassmanら.J Anim Sci,2000).(5)肉用牛において,約150日間の肥育試験の結果,アマニ油給与により,高オレイン酸油脂給与に比べ,筋肉及び脂肪組織中のCLA含量が約71%増加した(Dhimanら,J Anim Sci,2003).(6)粗飼料を多く摂取した肥育牛の体脂肪にはCLAが多く含まれる(九州沖縄農研,2000).
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研究対象 |
肉用牛
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戦略 |
畜産
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専門 |
繁殖
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部門 |
牛
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カテゴリ |
えごま
機能性
飼育技術
機能性食品
ナッツ
肉牛
ばら
繁殖性改善
ひまわり
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