タイトル |
北海道における有機性廃棄物によるカドミウム負荷の実態と土壌・作物へのリスク軽減策 |
担当機関 |
道立上川農試 |
研究期間 |
2003~2007 |
研究担当者 |
中本洋
細淵幸雄
古館明洋
松本武彦
乙部裕一
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発行年度 |
2007 |
要約 |
北海道で発生する有機性廃棄物に由来するカドミウム(Cd)の農地への負荷量は、全耕地面積当たり年間0.27g/10aである。北海道施肥ガイドに準じた施用量の範囲では、作物のCd濃度はコーデックス基準値を下回っており、また、作物のCd吸収を抑制するために土壌pHの管理が重要である。
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キーワード |
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背景・ねらい |
家畜排泄物等の有機性廃棄物を肥料として利用することは、有機農業の促進、循環型社会の形成に寄与する。しかし、有機性廃棄物を利用するには、それらに含まれている有害物質、特にCdの負荷量や土壌・作物への影響を調査しておく必要がある。そこで、本道で発生する有機性廃棄物のCd濃度や利用実態に基づき、有機性廃棄物由来のCd負荷量を明らかにし、施用に伴う土壌・作物へのCdリスクの軽減策を検討する。
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成果の内容・特徴 |
- 北海道で年間に発生する有機性廃棄物由来のCd7,855kgのうち、農業由来の約95%(2,033kg、主に家畜ふん尿)、非農業由来の約20%(1,160kg、水産系およびし尿汚泥等)が農地に負荷されており、全耕地面積に対する農業由来の有機性廃棄物Cd負荷量は0.17、非農業由来は0.10、全体で0.27g/10aと試算される(表1)。
- Cdの平均濃度(mg/kg現物)はホタテウロが18.1と極めて高く、下水汚泥・事業生活ゴミは0.5以下である(表2)。農業由来の稲わら・麦稈・乳牛ふん尿はいずれも低く、0.1を下回っている。野菜・牧草は、それぞれ0.06以下、0.11以下とコーデックス基準や飼料の有害物質の指導基準より低い。
- 野菜畑においてCd濃度の低い牛ふん堆肥区と対照区では、トマト残さの搬出に伴うCd持ち出し量が負荷量を上回るが、Cdを多く含む水産系堆肥区では土壌にCdが蓄積する(表3)。トマト果実のCd濃度は0.02~0.03(mg/kg現物)と低かった。
- 畑作物・牧草のCd濃度(mg/kg)は大豆子実が0.02~0.03、小麦子実が0.05~0.08、小豆子実が0.01未満、およびチモシーが0.02~0.03と低く、処理間差も認められないが、これらの作物でも有機性廃棄物資材施用に伴い、Cd収支がプラスとなるため、Cd負荷量の増加に伴って土壌蓄積するCdが高まる方向である。
- 各種有機性廃棄物資材によるCd負荷量と土壌の0.1MHCl-Cdの増加量の間には直線関係がみられ、回帰式からCd負荷量25g/10aあたり土壌の0.1MHCl-Cdは0.1mg/kg増加することが示された(図1)。
- 炭カル施用による土壌pHの上昇で作物のCd濃度は低下するが、経年的なpH低下に伴い低減効果はなくなる(図2)。また、堆肥連用により作物のCd濃度は20%程度低減した。
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成果の活用面・留意点 |
- 農地に対するカCd負荷を考慮した有機物利用管理に活用できる。
- 土壌のCd濃度は有機性廃棄物施用に伴うCd負荷量に従い高まることから、Cd濃度の高い資材の施用には留意する。
平成19年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分 「北海道における有機性廃棄物によるカドミウム負荷の実態と土壌・作物へのリスク軽減策」(指導参考)
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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カテゴリ |
有機農業
有機栽培
肥料
小麦
施肥
大豆
トマト
乳牛
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