機能性を高めたセリシンを生産する蚕品種セリシンフラボの開発

タイトル 機能性を高めたセリシンを生産する蚕品種セリシンフラボの開発
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2001~2005
研究担当者 間瀬啓介
山本俊雄
寺本英敏
中島健一
田村泰盛
飯塚哲也
発行年度 2004
要約 易にゲル化や乳化する天然高分子セリシンと、紫外線遮蔽効果や抗酸化性、抗菌性を示すフラボノイドを同時に分泌するセリシン蚕品種を交雑育種法により開発した。
背景・ねらい 近年、セリシンは生体適合性などの機能性が明らかにされ、化粧品素材等への利用拡大が期待されている。しかし、現在利用されているセリシンは、生糸精練過程等で溶出するものを回収しているため、加水分解により相当低分子化し、ゲル化・乳化しにくいなど、本来もつ高分子タンパク質としての機能を十分に発揮できない。
一方、セリシンのみを特異的に分泌する蚕品種として育成された「セリシンホープ」(特許3374177号)は、ゲル化しやすい天然高分子セリシンを効率よく生産できる。本研究では「セリシンホープ」にフラボノイドが持つ紫外線遮蔽効果や抗酸化性・抗菌性などの新たな機能を付与することを目的に、交雑育種によりフラボノイドを同時に分泌するセリシン蚕品種を開発した。
成果の内容・特徴
  1. 「セリシンホープ」のもつNd(裸蛹)遺伝子と緑繭系統のもつGa(笹繭a)とGb(笹繭b)の遺伝子が同時に安定して発現する品種を交雑育種法により作出した(図1)。この品種は営繭率98%以上、1頭当たり吐糸量は60mg、セリシンの割合が98.5%であり、フラボノイドは繭層量1g中に70mg(200nmol)含まれており、1頭当たりのフラボノイド量は4.1mgになる(表1)。このことから、この品種を「セリシンフラボ」と命名した。
  2. この品種から得られるセリシンは主に分子量約15万、25万、40万の3成分からなり、それぞれが変成されていない自然のままのタンパク質として回収することができる。また、その水溶液及び水性ゲルには従来のセリシン蚕と比べて紫外線遮蔽効果があり(図2)、抗酸化作用や(図3)抗菌作用(表2)も増進している。
  3. この「セリシンフラボ」が有するセリシンとフラボノイドの分泌性は、いずれも優性遺伝子に支配されているので、養蚕現場で普及している普通品種と交配してもその特性は維持される。しかも雑種強勢が働き、虫質は強健かつ揃いも良く飼育しやすくなり、両形質の分泌量(生産量)はいずれも15%程度高まる(表1)。
  4. セリシン:水の混合によるゲル化が可能なセリシンの濃度範囲は1~20%であり(表3)、これらのセリシン水溶ゲルはフラボノイドの機能性も保たれたまま形状を変化させて使用可能である。また、油分を混合すれば乳化するので、クリームや乳液等の化粧料に用いることができる。

図1

図2

表1

表2

表3

図3
成果の活用面・留意点
  1. 「セリシンフラボ」、あるいはこの品種と普通品種とを交配した交雑種は、フラボノイドを含む高分子セリシン蛋白質を高能率で生産する。そのため別途添加物を用いることなく、従来のセリシンに比較して紫外線遮蔽効果及び抗酸化作用や抗菌作用が大幅に向上した天然高分子セリシンを生産する。
  2. このようなセリシン蚕からは本来有している大きな分子量のままのセリシンが得られるので、水と混合した場合、非常に低い濃度であっても常温下でゲル化し、高濃度から低濃度までの各種濃度の水性ゲルが調製できる。しかもフラボノイドを含有することから、紫外線遮蔽効果や抗酸化性・抗菌性などの機能を付与できる。
  3. フラボノイド入りセリシンの水性ゲルは、天然由来の成分のみからなることから、肌、粘膜など、人体に対する安全性が非常に高い新機能性材料になり得る。またこれらは乳化剤としての作用を有するので、クリームや乳液等の化粧料への利用が期待される。
図表1 226399-1.jpg
図表2 226399-2.jpg
図表3 226399-3.jpg
図表4 226399-4.jpg
図表5 226399-5.jpg
図表6 226399-6.jpg
カテゴリ 育種 カイコ 機能性 くり 品種

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる