| タイトル |
低平地水田の非灌漑期におけるトンボ幼虫の生息環境 |
| 担当機関 |
(独)農業工学研究所 |
| 研究期間 |
2003~2005 |
| 研究担当者 |
若杉晃介
藤森新作
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| 発行年度 |
2005 |
| 要約 |
非灌漑期に落水すると、田面の土壌乾燥や地温低下に弱いアオモンイトトンボ幼虫は10日程度で全滅し、水田内に越冬する他のトンボ幼虫も同様に生息が難しくなる。そのため、トンボ類を保全するには、通年湛水が行えるビオトープや水田基盤等の整備を必要とする。
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| キーワード |
非灌漑期、落水、土壌乾燥、地温低下、トンボ幼虫、通年湛水、ビオトープ、水田基盤
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| 背景・ねらい |
水生昆虫の多くは水田を産卵や幼虫の生育、採餌場所としており、これらの生息環境を保全するためには、通年湛水等を必要とする。しかし、灌漑用水の多くは取水が水稲栽培期間に限られていることや、近年の乾田化に伴って、非灌漑期の土壌水分は極めて低い状態にある。これらが一因して、水生昆虫の生息地は激減し、農村地帯の生物多様性は大きく低下していると思われる。そこで、非灌漑期の落水等が水生昆虫であるトンボ幼虫の生息に与える影響について調査するとともに保全に必要な条件や整備技術の検討を行う。
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| 成果の内容・特徴 |
- 農業工学研究所内の2筆の水田(50×50m区画)を用いて、通年湛水と非灌漑期落水の管理を行い、トンボ幼虫の生息状況を観察した(図1、2)。通年湛水ほ場では、水田を主な生息地とする7種の越冬が確認された。一方、非灌漑期は落水し、降雨以外の水分供給がないほ場では、落水前に5種の生息を確認したが、落水後はシオカラトンボ幼虫のみが土壌中に生息していた(表1)。
- 低平地水田地帯で一般的に生息するアオモンイトトンボ幼虫について、土壌乾燥や寒さに対する能力を水管理の異なるワグネルポット内の生息状況から精査した(図3)。湛水管理と室内の湿潤管理は1ヶ月経過しても高い生存率を維持し、地表面温度が零下になることはなかった(図4、5)。また、野外の湿潤管理は地表温度が零下まで低下し、1ヶ月以内に供試個体とした全てのヤゴが死滅した。乾燥管理は室内外に関わらず、10日程度で全滅し、その時の土壌水分(体積含水率)は54%であった。
- 通年湛水を行うことでトンボ幼虫を乾燥と寒さから守り、高い生存率での越冬を可能とすることから、幼虫の保全には地下水のポンプアップ等による通年湛水を実施したビオトープ整備の必要性が明らかとなった。また、一般的な水田では、非灌漑期の用水補給は困難であることから、降雨を湛水貯留するための漏水対策や畦畔の補強・嵩上げ、水田の一部掘削などの水田基盤整備を必要とする。
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| 成果の活用面・留意点 |
- トンボ類は水田生態系を代表する生物で、個体数や種の多さから農村の生物多様性を表す指標として広く用いられている。
- 環境との調和に配慮した事業等で、水田を利用したビオトープ整備を行う際の基礎的な知見となる。
- 近年、水田雑草の抑制と鳥類の保全等のために各地で実施されている冬季湛水は、幼虫で越冬するトンボ類の保全においても有効であるといえる。
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| 図表1 |
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| 図表2 |
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| 図表3 |
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| 図表4 |
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| 図表5 |
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| 図表6 |
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| カテゴリ |
病害虫
乾燥
雑草
水田
水管理
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