タイトル | 耐病性が強く、強稈・多収で、ブレンドに適したパン用小麦新品種「ハルイブキ」 |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 東北農業研究センター |
研究期間 | 1988~2001 |
研究担当者 |
伊藤誠治 伊藤美環子 吉川 亮 佐藤暁子 星野次汪 谷口義則 中村 洋 中村和弘 田野崎眞吾 八田浩一 |
発行年度 | 2001 |
要約 | 小麦「ハルイブキ」は耐倒伏性・耐病性が強く、多収で、製粉性がやや優れる。製パン適性はやや高く、他品種とのブレンドにより製パン適性の向上が期待できる。また、「白神こだま酵母」の使用により、優れた製パン性を示す。秋田県で認定品種に採用。 |
キーワード | 小麦、ハルイブキ、耐病性、製パン適性、ブレンド、白神こだま酵母 |
背景・ねらい | 従来国内産小麦の用途はうどん、きしめんなどの日本式めんが主体であったが、最近全国的に国内産小麦でパンを製造することが盛んになりつつある。このため、製パン適性の高い良質品種に対する要望が強い。そこで、寒冷地向けの早生・多収で、耐寒雪性・耐病性が強く、強稈で、製パン適性の高い品種育成を図る。 |
成果の内容・特徴 | 小麦「ハルイブキ」は、早生・多収、耐寒雪性、耐病性及び高製パン適性を育種目標に、昭和63年度(平成元年5月)東北農業試験場(現 東北農業研究センター)において、晩生で耐病性が強く、高製パン性と関係のある5+10グルテニンサブユニットをもつユーゴスラビア品種「Stozher」を母とし、早生・多収で耐寒雪性が強く、製パン適性がやや優れた「東北195号」を父として人工交配を行い、以降系統育種法で選抜・固定を図ってきたものである。平成12年度の世代は雑種第12代(F12)である。 「キタカミコムギ」に比較して、次のような特徴をもつ(表1)。 1. 播性はⅤで、出穂期で4日、成熟期で3日程度早い。 2. 稈長はやや短く、穂長は短く、穂数は同程度である。 3. 耐寒雪性はやや強く、耐倒伏性は強く、穂発芽性は中でやや強い。 4. 赤さび病、うどんこ病及び縞萎縮病のいずれにも強い。赤かび病は中で同程度である。 5. 多収で、千粒重は大きいが、リットル重は同程度である。外観品質はやや劣る。 6. 硬質小麦で、製粉性はやや優れる。粉の白さ、明るさはともにやや低い。 7. 粉の蛋白含量は3~4%高く、5+10高分子量グルテニンサブユニットを持つ。 バロリメーター・バリューが高く、生地の伸張抵抗が大きく、伸張度が小さい。 8. アミログラムの最高粘度は低い。 9. 製パン適性はナンブコムギよりやや高く、他品種とのブレンドにより製パン適性の向上が期待できる(表2)。また、秋田県でパン酵母として開発された「白神こだま酵母」の使用により、優れた製パン性を示す(図1)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 東北地域の根雪期間が110日以下の平坦地に適応する。 2. 秋田県では、平成12年秋播から認定品種に採用されている。 3. [1]雪腐病にやや弱いので、種子消毒などにより防除に努める。[2]収穫期の雨濡れにより穂発芽して低アミロになりやすいので、成熟期に達したら雨に当てないよう速やかに収穫する。[3]低蛋白になると製パン性が低下するので、原粒蛋白含量が12%以上になるよう、融雪期追肥、減数分裂期追肥及び出穂期追肥を組み合わせた適切な施肥管理を行う。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
カテゴリ | 病害虫 育種 萎縮病 うどんこ病 小麦 種子消毒 新品種 施肥 品種 防除 |