甘いコムギ「Sweet Wheat(スイートウィート)」

タイトル 甘いコムギ「Sweet Wheat(スイートウィート)」
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター
研究期間 2002~2006
研究担当者 Patricia Vrinten(重点支援)
新畑智也(日本製粉)
石川吾郎
中村俊樹
日本製粉)
米丸淳一
齊藤美香(重点支援
発行年度 2006
要約 モチコムギと高アミロースコムギの交配後代から、DNAマーカー選抜で得られたマルトースを中心とするオリゴ糖を多量に含む甘味種コムギ Sweet Wheat(スイートウィート)は、新規コムギ素材となる。
キーワード コムギ、モチ、高アミロース、DNAマーカー、澱粉合成酵素
背景・ねらい コムギ種子重量の約70%は、アミロースとアミロペクチンから構成される澱粉で占められる。したがって、それら二つの成分の量的、質的な改変は澱粉の特性を変化させ、コムギ粉加工製品の品質改良や全く新しい製品開発に結びつき、最終的にはコムギの用途拡大に寄与すると考えられる。東北農研では、既にアミロース合成を行う顆粒結合型澱粉合成酵素I型(Granule-Bound StarchSynthaseI: GBSSI)の機能を失いアミロースを欠くモチ系統とアミロペクチン合成に関与する酵素の一つである可溶性澱粉合成酵素II型(Starch SynthaseII: SSII)を欠き、側鎖の短いアミロペクチンと高いアミロース含量を持つ高アミロース系統を開発している。そこで、さらに新規変異系統開発を目的として、それら系統を交配しその後代においてDNAマーカー選抜(Marker Assisted Selection:MAS)を用いてGBSSIとSSIIを完全に欠く二重変異体を選抜する。
成果の内容・特徴
  1. 普通系コムギにおいては、GBSSI及びSSII遺伝子がそれぞれ三種類ずつ存在する(各々A1, B1, D1とする。図1)。GBSSI遺伝子が全て変異型でSSII遺伝子が全て正常型で、GBSSI酵素を欠き、SSII酵素を持つモチ系統を母親に、また逆にGBSSI遺伝子が全て正常型、SSII遺伝子が全て変異型で、GBSSI酵素を持ち、SSII酵素を完全に欠く高アミロースコムギ系統を父親として交配し、その後代より分離すると予想される64種類のハプロタイプの中から両遺伝子全て変異型の二重変異体をDNAマーカーで選抜(図1)。
  2. 選抜に用いたDNAマーカーは、H13年度成果情報(http://www.naro.affrc.go.jp/top/seika/2001/tohoku/tohoku01009.html)記載のGBSSI遺伝子の正常型と変異型を区別する「部分モチ選抜用DNAマーカーセット」とH17 年度成果情報(http://www.naro.affrc.go.jp/top/seika/2005/tohoku/to05007.html)記載のSSII遺伝子の正常型と変異型を区別する「高アミロースコムギ選抜用マーカーセット」である。
  3. 二重変異体の発達過程の種子(開花後25日目)の糖度(Brix)は通常の品種系統の2倍近い値を示し、その原因は高いスクロース(蔗糖)、マルトース(麦芽糖)、マルトトリオースの蓄積による(図2)。
  4. ムギ類には甘味種は存在せず、世界初の甘味コムギである。甘味種のトウモロコシ、Sweet Corn(スイートコーン)に対してSweet Wheat(スイートウィート)と呼ぶ。
  5. スイートウィートは、登熟期後半(開花後35日以降)急激に種子容積が減少し、乾燥種子はしなびた(shrunken)状態になる(図3)。そのため千粒重は3~4割低下する。
  6. 製粉したスイートウィート粉は、甘味を呈する。
成果の活用面・留意点
  1. 新規コムギ粉素材として用途開発研究に供試できる。
  2. 皺粒であるために製粉に関しては、種皮の混入度合いが高くなる。
  3. 二重変異体は隔離栽培の必要があり、純度検定のためにも、選抜等はDNAマーカーで行うことが必要である。
  4. スイートウィート以外のハプロタイプ(図1)も今回のMASシステムで選抜可能である。
図表1 232616-1.jpg
図表2 232616-2.gif
図表3 232616-3.jpg
カテゴリ 加工 乾燥 DNAマーカー とうもろこし 品種

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