タイトル |
モッツァレラタイプのチーズ製造過程における放牧飼養乳中脂肪酸の変化 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター |
研究期間 |
2007~2009 |
研究担当者 |
朝隈貞樹
上田靖子
秋山典昭
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発行年度 |
2009 |
要約 |
放牧飼養乳を原料とし、モッツァレラタイプのチーズを製造すると、機能性脂質CLAは、製造過程で舎飼い飼養乳を原料にするよりも2-3倍高い値を維持し、製品となる。
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キーワード |
放牧、モッツァレラ型チーズ、脂肪酸、CLA(共役リノール酸)、バクセン酸
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背景・ねらい |
放牧飼養により牛乳中の脂肪酸組成は様々に変化し、機能性脂質である共役リノール酸(CLA)のc9t11型及びt10c12型は増加する。 CLA(c9t11)は、80-90℃の加熱やある種の乳酸菌やビフィズス菌により増加することから、放牧飼養乳を原料に、加熱を要するモッツァレラタイプのチーズを製造し、乳酸菌・ビフィズス菌添加および加熱行程による、脂肪酸組成の特徴的な変化を明らかにする。これにより、放牧飼養の特徴を生かした乳製品製造のためのCLA高蓄積化技術の開発を目指す。
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成果の内容・特徴 |
- 放牧草の乾物採食量約13kg/日程度の生産乳を原料とする場合、脂質/蛋白質に変化はないが、舎飼い飼養乳と比べて無脂固形分は低い。モッツァレラタイプのチーズ製造過程において、スターター(ST-M5:Streptococcus thermophilus, ABT-3:Streptococcus thermophilus, Lactobacillus acidophilus, Bifidobacterium lactis)添加から練圧目標pH(平均5.29)に達するまでの時間は、放牧飼養乳を原料とすると短くなる(表1)。
- CLA(c9t11)及びCLA(t10c12)濃度は、全ての製造過程(原料乳、カード、チーズ0日目)において、放牧飼養乳区が舎飼い飼養乳区に比べて高く、c9t11では約3倍以上、t10c12で約2倍の濃度となる(図2)。
- チーズ0日目から5日目までの貯蔵(4℃5日間)によるCLAの濃度変化は見られない(図2)。
- CLA生合成経路に関与するステアリン酸、オレイン酸、αリノレン酸、バクセン酸(t11)は(図1)、CLAと同様な濃度変化を示し、放牧飼養乳区が舎飼い飼養乳区に比べて有意に高い(表2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 本成果に用いた乳酸菌及びビフィズス菌は、クリスチャンハンセン社から発売されているST-M5及びABT-3である。ABT-3は、ヨーグルト等の機能性乳製品製造用のものであり、放牧飼養乳を原料とする乳製品製造・販売する際の高付加価値化に活用できる。
- 本成果におけるバクセン酸(t11)、CLAについては、生合成メカニズムはもとより風味や物性に及ぼす影響についてのさらなる検討が必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
機能性
くり
高付加価値
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