原子力発電所事故で放出された放射性セシウムの森林内の分布を明らかに

タイトル 原子力発電所事故で放出された放射性セシウムの森林内の分布を明らかに
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 金子 真司
三浦 覚
大貫 靖浩
赤間 亮夫
池田 重人
田中 浩
清野 嘉之
外崎 真理雄
黒田 克史
発行年度 2012
要約 福島県の森林で放射能汚染状況を調査した結果、スギ林では樹木と土壌に放射性セシウムが半分ずつ分布していたのに対して、落葉広葉樹林やアカマツ林では落葉層に多く分布していることを明らかにしました。
背景・ねらい 東京電力福島第一原子力発電所事故による森林の放射能汚染の状況を調査しました。原発からの距離の異なる3カ所のスギ林を比較すると、空間線量率が高い森林ほど放射性セシウムの汚染レベルは高くなっていました。同じ調査地で樹種の違いを比較すると、常緑樹のスギやアカマツでは葉の放射性セシウム濃度が高く、落葉広葉樹の葉は低濃度でした。また、木材(心材、辺材)は低濃度でした。いずれの森林も落葉層は高濃度でしたが、その下の土壌は低濃度でした。森林内に蓄積している放射性セシウムの分布割合は、スギ林では全体の半分が葉と枝にあり、残りの半分は落葉層と土壌にありました。広葉樹林は大半のセシウムが落葉層や土壌にあり、アカマツ林も落葉層と土壌の分布割合が高くなっていました。樹種による分布の違いは3月の事故当時の葉の量が関係しているものと考えられます。
成果の内容・特徴

森林の放射性セシウム汚染

東京電力福島第一原子力発電所の事故によって放出された放射性物質によって、周辺の森林は広く汚染されました。放出された放射性セシウムの半減期(半分の量になるまでの時間)はセシウム134が2年、セシウム137は30年と長いため、汚染は長期間続くと予想されます。実際、チェルノブイリ周辺では今でも放射性物質が検出されていますが、土壌の性質や樹木の種類、気候条件などによって放射性セシウムの動態は異なるといわれています。そこで福島県の現状を把握するため、原子力発電所からの距離の異なる3カ所の森林で放射性セシウムの分布を調査しました。

原発からの距離や種類による汚染レベル

平成23年8月から9月にかけて福島県の川内村、大玉村、只見町のスギ林に調査地を設けました。大玉村では、スギ林のほかアカマツ林、落葉広葉樹林でも調査し、樹類による違いを比較しました(図1、写真1)。川内村、大玉村、只見町の空間線量率(高さ1m)は、それぞれ毎時3.3、0.3、0.1マイクロシーベルトと原発に近いほど線量率は高く、これと比例し、スギ林の葉や土壌などの放射性セシウム濃度も空間線量率が高いほど高くなっていました。
樹種の違いを見ると、スギやアカマツ林では葉の放射性セシウム濃度が高く、ついで枝、樹皮の順で、幹材部(木材内部の辺材と心材)は非常に低濃度でした(図2)。一方、落葉広葉樹林では葉の放射性セシウム濃度は1kgあたり600ベクレルとスギやアカマツの10分の1以下でしたが、落葉層の濃度はスギやアカマツよりも高い状態でした。落葉層はいずれの森林も高濃度でしたが、その下の深さ5cmまでの表層土壌は落葉層の10分の1程度になり、さらに深い部分は非常に低濃度でした。

森林内部の放射性セシウムの分布

樹木の大きさを推定し、森林内に蓄積している放射性セシウムの分布を求めました。スギ林では葉や枝等の樹木に全体の半分があり、落葉層と土壌に残りの半分が分布していました。一方、事故当時に葉が付いていなかった落葉広葉樹林は落葉層に放射性セシウムが最も多く分布していました(図3)。事故のあった3月には、常緑樹であるスギやアカマツには葉が付いていましたが、広葉樹にはまだ葉が出ていなかったため、放射性セシウムの多くが落葉層に積もったものと考えられます。常緑針葉樹でもアカマツはスギに比べて葉量が少ないため、落葉層の割合が多くなったのでしょう。
このように、森林内の放射性物質の分布は、樹木の種類によってずいぶんと違うので、森林の放射性セシウムを除染するにあたっては、分布を考慮して作業を進めるのが効率的です。今後、スギの葉は落葉し、落葉層の有機物は分解して放射性セシウムは次第に土壌に移行すると考えられます。また一部の放射性セシウムは樹木に吸収されるので、森林内の分布は変化するでしょう。長期的なモニタリングを続けるとともに、分布の変化を考慮して、森林の利用や除染を考える必要があります。

本研究は森林総合研究所交付金プロジェクト「東日本大震災緊急調査:放射性セシウムの空間分布及び空間変異メカニズムの解明」の成果です。主要な成果は9月30日と12月27日に林野庁からプレスリリースされました。
図表1 235341-1.gif
図表2 235341-2.gif
図表3 235341-3.gif
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2012/documents/p38-39.pdf
カテゴリ モニタリング

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