温室内の気流・気温分布を改善するための循環扇の制御手法

タイトル 温室内の気流・気温分布を改善するための循環扇の制御手法
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2009~2011
研究担当者 石井雅久
奥島里美
森山英樹
発行年度 2011
要約 トマトを生産する温室で換気窓を閉じた場合、室内の気流を0.3~0.5m・s-1で流動させるには、1000㎡当たり10~15台の循環扇が必要である。また、温風暖房ではダクトの風上と風下に気温差を生じるが、循環扇で室内の空気を流動させると気温差が小さくなる。
キーワード 温室、環境制御、循環扇、気流分布、気温分布
背景・ねらい 冬季は暖房コストを低減するために温室の換気窓を閉じる機会が多くなるが、換気窓を閉じると室内の空気流動は僅かとなり、気温、湿度、二酸化炭素濃度などの環境因子に分布が生じる。また、植物の葉とその周囲の環境との間では、エネルギー、水分、炭酸ガスなどの交換が行われるが、これらの物質交換を促すためには0.3~0.5m・s-1の気流速が必要である。近年、温室内環境の改善を目的に、循環扇を設置する生産者が増えているが、適正な設置台数や制御方法は明確でない。そこで、草丈約1.8mのトマトを生産する温室内で汎用の循環扇(直径0.36m、風量79m3・min-1)を異なる条件で稼働させたときの気流・気温分布を解析し、温室で循環扇を適正に設置するための台数および制御手法を提示する。
成果の内容・特徴
  1. 日中に適する循環扇の制御手法を明らかにするため、トマトを生産する温室で1000㎡当たりの循環扇台数が5台(ケース1:循環扇b)、10台(ケース2:循環扇aおよびd)、15台(ケース3:循環扇b、cおよびd)となるように処理区を設けている(図1)。
  2. 夜間暖房時における循環扇の制御手法を明らかにするために、循環扇を温風ダクトの風下側(ケース1:循環扇b)と温風ダクトの風上側(ケース1’:循環扇e)となるように設置している(図1)。
  3. 日中に換気窓を閉じた温室内で循環扇を稼働させると、室内の平均気流速はケース1が0.24m・s-1、ケース2が0.36m・s-1、ケース3が0.44m・s-1となり、循環扇の稼働台数が増えるほど気流速は大きくなる。一般に、野菜、花き、果樹などの草丈がある植物を温室で生産する場合、葉、茎、果実などが抵抗となり、室内の気流速は小さくなる。したがって、トマトを生産する温室内の平均気流速を0.3m・s-1以上で流動させるには10a当たり10~15台の循環扇が必要である(表1)。
  4. 日中に換気窓を閉じた温室内で循環扇を稼働させると、停止時と比べて室内の気温は僅かに低下するが、循環扇の稼働台数が増えるほど室内の気温分布は小さくなる(図2)。
  5. 夜間暖房時に循環扇を温風ダクトの風下側で稼働させると(ケース1)、暖房機に近いH地点のΔT(地上1.5m高の各地点の気温と平均気温の差)は+2.4℃であるが、暖房機から遠いAおよびB地点のΔTは約-1℃である。また、循環扇を温風ダクトの風上で稼働すると(ケース1’)、風下側(A、BおよびC地点)と風上側(H地点)のΔTはケース1よりも小さくなり、室内の気温分布を約±1℃まで小さくできる(図3)。
成果の活用面・留意点
  1. 循環扇を導入または導入を検討しているトマトを生産する施設経営農家に対し、循環扇を適正に設置するための台数およびその制御方法を示す。
  2. 他の野菜、花き、果樹などの草丈がある植物を生産する温室や、葉菜類や花き苗などの草丈がない植物を生産する温室への適応は、別途、検討する必要がある。
  3. ファンには圧力型(換気扇)と風量型(扇風機)があるが、循環扇には後者が適する。
図表1 235705-1.gif
図表2 235705-2.gif
図表3 235705-3.gif
図表4 235705-4.gif
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2011/141b0_10_02.html
カテゴリ 環境制御 経営管理 コスト トマト

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