グリシンとD-アラニンをペプチドから遊離する新規麹菌アミノペプチダーゼ

タイトル グリシンとD-アラニンをペプチドから遊離する新規麹菌アミノペプチダーゼ
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所
研究期間 2010~2011
研究担当者 楠本憲一
丸井淳一朗
松下(森田)真由美
多田功生
鈴木 聡
服部領太
天野 仁
石田博樹
山形洋平
竹内道雄
発行年度 2011
要約 我が国の醸造産業で麹菌として用いられているAspergillus oryzaeは、醸造食品の呈味性付与に重要なアミノペプチダーゼを多数生産する。ゲノム情報に基づいて遺伝子組換え技術により高生産したGdaAは、グリシン及びd-アラニンをペプチドN末端から遊離する活性を示すアミノペプチダーゼである。本酵素は米麹から簡便に抽出できる。
キーワード 麹菌、タンパク質・ペプチド分解、アミノペプチダーゼ
背景・ねらい Aspergillus oryzaeは我が国の伝統的発酵食品の製造に麹菌として利用されており、産業上重要な糸状菌である。麹菌のアミノペプチダーゼは味噌や醤油等の呈味性付与に深く関与していることが知られている。本菌のゲノム情報解析から、30種類以上のアミノペプチダーゼ様遺伝子が見出されており、醸造工程の最適化のために、これらの遺伝子産物の醸造における役割の解明が望まれている。本研究では、これらのうち、グリシン及びd-アラニン遊離活性を示すGdaAの酵素活性や基質特異性、酵素化学的性質を明らかにすることを目指したものである。
成果の内容・特徴
  1. 麹菌ゲノム解析株(A. oryzae RIB40)のゲノム情報中には、グラム陽性細菌(Ochrobactrum anthropi)のd-アミノペプチダーゼと43%のアミノ酸配列同一性を示す遺伝子gdaAが見出される。
  2. gdaA高発現組換え麹菌株の液体培養菌体から調製した無細胞抽出液から、細胞内酵素であるGdaAタンパク質を硫安分画及び4段階のカラムクロマトグラフィーにより精製することができる。
  3. GdaAは、各種アミノアシルパラニトロアニリド基質(Xaa-pNA、表1)やオリゴペプチド基質への反応性が既知のアミノペプチダーゼとは異なり、グリシンあるいはd-アラニンを遊離する活性が高い新規グリシン・d-アラニンアミノペプチダーゼである。
  4. 図1に示すとおり、本酵素は微アルカリ条件(pH8-9)で活性を示し、pH8.5が至適pHである。また、0-60℃の間で酵素活性を示し、40℃が至適温度である。一方、pH6付近でも活性を示し、微酸性の発酵食品でも機能すると考えられる。
  5. gdaA破壊麹菌株の液体培養菌体抽出液における緩衝液可溶性のグリシン及びd-アラニンアミノペプチダーゼ活性は非破壊(対照)株よりも極めて低く、無細胞抽出液中の同活性の大部分を本酵素が担う(図2)。また、本酵素は米麹を破砕せずに水中に一部が抽出可能であり、細胞内在酵素でありながらその調製が容易である。
成果の活用面・留意点
  1. 本成果はゲノム解析株を用いて得られたものであり、当該グリシン・d-アラニンアミノペプチダーゼは米麹を水抽出することにより簡便に活性が得られることから、今後、実用菌株における酵素生産様式について解明していく必要がある。
  2. グリシンは甘味を呈するアミノ酸であり、解明した麹菌のグリシン・d-アラニンアミノペプチダーゼについて、麹菌を利用した発酵食品の製造工程における熟成や呈味性等への関与を明らかにすることが必要である。
図表1 235760-1.png
図表2 235760-2.png
図表3 235760-3.png
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nfri/2011/330d0_10_05.html
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