タイトル |
太陽熱処理期間中のポリマルチ被覆土壌からの一酸化二窒素放出 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 |
2009~2012 |
研究担当者 |
西村誠一
駒田充生
建部雅子
米村正一郎
加藤直人
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発行年度 |
2012 |
要約 |
露地野菜栽培において、太陽熱処理期間中にポリマルチ被覆された土壌中で生成する一酸化二窒素は、側方の畝間土壌へのガス拡散、およびポリマルチの透過によって大気中に放出される。夏期の高温時のポリマルチ被覆では、ポリマルチの透過による一酸化二窒素放出の割合が高くなる。
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キーワード |
太陽熱処理、一酸化二窒素、ポリマルチ、畝間、ガス拡散
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背景・ねらい |
ポリエチレンフィルムによるマルチ被覆(ポリマルチ被覆)は、露地野菜栽培において地温・土壌水分の保持、雑草防除、肥料成分の溶脱抑制など様々な目的で用いられるが、中でも、作付け前に施肥と同時にポリマルチ被覆をして一定期間継続する技術(太陽熱処理)が近年普及している。太陽熱処理の際、ポリマルチ被覆下の土壌では、施肥窒素から温室効果ガスである一酸化二窒素(亜酸化窒素;N2O)が生成され大気中に放出されると考えられる。本研究では、ポリマルチ被覆期間中のN2Oの大気中への放出経路および放出量を明らかにすることを目的とする。
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成果の内容・特徴 |
- ポリマルチ被覆下の土壌中で生成されたN2Oは、土壌表面からポリマルチを透過して大気中に放出されるとともに、側方への拡散によってポリマルチ被覆されていない畝間の土壌表面からも大気中に放出される(図1、3)。
- 畝間土壌表面からのN2O放出は、密閉チャンバー法等の一般的なガスフラックス測定法により測定できる。また、ポリマルチ透過によるN2O放出は、ポリマルチ直下の温度およびN2O濃度、およびポリマルチのガス透過係数の測定データを拡散方程式に代入することにより、算出される(式1)。ポリマルチのガス透過係数は温度によって大きく異なるため、複数の温度条件でガス透過係数の測定を行う必要がある(図2)。
- 気温の低い冬期のポリマルチ被覆では、ポリマルチのガス透過係数が低いため、畝間からのN2O放出量が相対的に高い。一方、気温の高い夏期のポリマルチ被覆では、地温の上昇にともなってポリマルチのガス透過係数が高くなるため、ポリマルチのガス透過による放出が顕著に高くなるとともに、大きな日変動を示す(図3)。
- 施肥後のポリマルチ被覆にともなうN2O放出量およびその施肥窒素に対する割合は、冬期よりも夏期に大幅に高くなる(図3)。本研究では、ポリマルチ透過由来および畝間土壌表面からの放出を含むN2O総放出量は、冬期のポリマルチ被覆期間(32日間)では190kgNha-1の施肥に対して0.20kgNha-1、夏期のポリマルチ被覆期間(太陽熱処理;35日間)では60kgNha-1の施肥に対して1.59kgNha-1であった。
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成果の活用面・留意点 |
- 圃場試験は、関東地方の淡色黒ボク土壌の露地野菜栽培圃場において行った。
- 圃場におけるN2O放出を正確に推定するためには、ポリマルチ被覆および畝間を含めた圃場全体を考慮する必要がある。本試験の結果は、2006 IPCC Guidelines for National Greenhouse Gas Inventoriesにおいて実測データの不足が指摘されていた部分のデータを示すものであり、温室効果ガス発生インベントリーの精緻化に寄与する。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/narc/2012/151a1_01_01.html
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カテゴリ |
肥料
病害虫
雑草
施肥
野菜栽培
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