タイトル |
草地更新による採草地表面の放射線空間線量率と新播牧草中セシウム濃度の低減 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
2011~2012 |
研究担当者 |
渋谷 岳
山本嘉人
進藤和政
平野 清
栂村恭子
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発行年度 |
2012 |
要約 |
草地更新は採草地表面の放射線空間線量率と新播牧草中放射性セシウム濃度を低減でき、放射性セシウムを深く埋没させるプラウ耕を組み合わせる完全更新法が有効である。また、確実な土壌撹拌が出来れば、ディスクハロー耕等による表層撹拌でも移行低減効果が得られる。
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キーワード |
草地、更新、プラウ、ディスクハロー、放射性セシウム
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背景・ねらい |
東京電力福島第一原子力発電所の事故により放射性物質に汚染された農地は東北や関東に広がっている。畜産物への放射能汚染の拡大を防ぐため、飼料中の放射性物質暫定許容値が農林水産省により設定された結果、多くの永年草地で利用自粛される事態となっている。そこで、永年草地の除染対策として、採草地における草地更新の有無や耕起方法の違いが採草地表面の空間線量率及び土壌から牧草への放射性セシウム(Cs)の移行量に及ぼす影響を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 土壌から牧草への放射性Cs移行低減を目的として、プラウ耕とディスクハロー耕を組み合わせた汚染草地の完全更新について、作業手順例を示す(図1)。2012年度の現地事例の結果から、確実な効果を得るためには、前植生の枯殺、丁寧な耕起作業、土壌診断に基づいた施肥により土壌中(採取深15cm)の交換性カリウム目標値を40mg/100g乾土とすることに留意する必要がある。また、ディスクハロー耕等で表層撹拌することによる簡易更新の手順も図1にあわせて示す。
- 草地更新前後における10mメッシュで測定した採草地表面(0cm)の空間線量率は、簡易更新区で、平均2.7μSv/hから1.7μSv/hへ、完全更新区では、2.6μSv/hから0.8μSv/hへといずれの場合でも低下し(図2)、草地更新により作業者の外部被曝量を低減できる。
- 耕起前草地では、0-5cm深の表層土壌に放射性Csが集中して存在することから、地表面における空間線量率の低減は耕起による希釈と土壌による遮蔽効果に起因する。完全更新区では下層(10-20cm)の放射性Cs濃度が高く、簡易更新区では上層(0-10cm)が高くなることにより、完全更新でより大きな草地表面の空間線量率低減効果が得られる(図3)。
- 更新後の新播牧草(オーチャードグラス)の1番草中放射性Cs濃度は、簡易更新および完全更新いずれにおいても、未更新の対照草地に比べて大きく低下する(図4)。
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成果の活用面・留意点 |
- 普及対象:放射能汚染地域において、永年草地を利用する畜産農家、公共牧場管理者および草地除染を推進する行政担当者。
- 普及予定地域・普及予定面積等:除染対象草地面積:岩手、宮城、福島、栃木、群馬5県の合計でおよそ38,000ha(除染実施済含む)。実施の際は、各自治体の畜産担当課等に問い合わせて行う必要がある。
- その他:国および県作成の草地除染マニュアル等に活用されている。
- これまでに行った調査によると、0-15cm深土壌中の交換性カリウム濃度が40mg/100g乾土以下の場合、暫定許容値を超える牧草を生産する事例が散見されることから、カリウム施肥における更新時の目標値としている。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2012/510b0_01_84.html
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カテゴリ |
施肥
土壌診断
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