イネにおける新規な除草剤耐性遺伝子の単離とその利用

タイトル イネにおける新規な除草剤耐性遺伝子の単離とその利用
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2007~2013
研究担当者 雑賀啓明
堀田順子
田口(塩原)文緒
野中聡子
横井(西澤)彩子
岩上哲史
堀清純
松本隆
田中剛
伊藤剛
矢野昌裕
角康一郎
清水力
土岐精一
発行年度 2013
要約 特定の除草剤に対して耐性を示すイネ品種を解析し、除草剤の解毒代謝に関与する新規のシトクロムP450遺伝子「CYP72A31」を単離した。CYP72A31遺伝子の過剰発現により、イネ及びシロイヌナズナの除草剤耐性を向上させることに成功した。
キーワード イネ、アセト乳酸合成酵素、除草剤耐性、解毒代謝、シトクロムP450
背景・ねらい 植物の除草剤耐性機構は、除草剤が結合する標的タンパク質の変化(標的変異)、または解毒代謝等による植物体内での有効除草剤量の減少に大別される。解毒代謝は複数の除草剤耐性に関与することが多いため、難防除雑草の発生や除草剤耐性作物品種の育成の観点から重要な形質である。しかしながら、その分子機構が解明された例はほとんどない。
 ビスピリバックナトリウム塩(BS)は、アセト乳酸合成酵素(ALS)を阻害する除草剤である。近年、BS耐性に関してイネに品種間差が認められ、その原因が解毒代謝である可能性が示唆されていた。本研究では、BS耐性に関わるイネの遺伝子を単離するとともに、単離した遺伝子が除草剤耐性作物の育成に応用できるか検討した。
成果の内容・特徴
  1. BS耐性を示すイネ品種「Kasalath」と感受性を示すイネ品種「コシヒカリ」の交雑後代を作出し、マップベースクローニング法によって第1染色体の23.6Mbに存在するBS耐性遺伝子CYP72A31(Os01g0602200)を単離した(図1)。
  2. コシヒカリと同様にBS感受性を示すイネ品種「日本晴」において、CYP72A31を過剰発現させたところ、形質転換イネのカルスや幼苗は、非形質転換体と比較して強いBS耐性を示した。またBS耐性品種であるKasalathにおいても、CYP72A31の過剰発現によって非形質転換体よりBS耐性が向上した(図2)。日本晴、Kasalathいずれの品種においても、CYP72A31遺伝子のmRNA量が多い形質転換カルス系統は、より高い濃度のBSに対しても耐性を示した。
  3. CYP72A31を過剰発現させたシロイヌナズナの幼苗は、非形質転換体より強いBS耐性を示した(図3)だけではなく、BSとは構造が異なるALS阻害型除草剤であるベンスルフロンメチル(BSM)に対しても強い耐性を示した。
  4. BSM耐性に関与するイネの遺伝子として、CYP72A31遺伝子とは異なるグループのシトクロムP450遺伝子CYP81A6が既に同定されている。RNAi法によりCYP81A6遺伝子の発現を抑制したイネは、非形質転換体とほぼ同程度のBS感受性を示した。以上の結果から、BSMの解毒代謝にはCYP72A31とCYP81A6の両者が関与しているのに対し、BSの解毒代謝にはCYP72A31は関与しているが、CYP81A6はほとんど関与していないことが示唆された。
成果の活用面・留意点
  1. DNAマーカー選抜によってCYP72A31遺伝子を導入することにより、除草剤耐性イネ品種育成が可能である。また、CYP72A31遺伝子を形質転換することにより、イネ以外の作物にも除草剤耐性を付与できると期待される。
  2. CYP72A31遺伝子の機能解析を進めることにより、除草剤の解毒代謝に関する基礎的知見が得られる。また、得られた知見は、新規の除草剤開発や除草剤耐性作物の品種育成に利用することができる。
  3. CYP72A31遺伝子は、形質転換細胞・個体の選抜マーカーや、F1ハイブリッドなどの交配種子・個体の選抜等、様々な分野に応用できる可能性がある。
図表1 236358-1.jpg
図表2 236358-2.jpg
図表3 236358-3.jpg
研究内容 http://www.nias.affrc.go.jp/seika/nias/h25/nias02502.html
カテゴリ 病害虫 除草剤 DNAマーカー 難防除雑草 品種

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