イネの干ばつ耐性を高める深根性遺伝子の特定

タイトル イネの干ばつ耐性を高める深根性遺伝子の特定
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2008~2012
研究担当者 宇賀優作
杉本和彦
小川諭志
Jagadish Rane
石谷学
原奈穂
木富悠花
犬飼義明
小野和子
菅野徳子
井上晴彦
竹久妃奈子
本山立子
長村吉晃
呉健忠
松本隆
高井俊之
奥野員敏
矢野昌裕
発行年度 2013
要約 イネの根を深い方向に伸ばす遺伝子を発見した。根の張り方が浅いイネに本遺伝子を導入すると、根が深くまで伸び、干ばつに強くなることが実証された。
キーワード 干ばつ耐性、深根性、量的形質遺伝子座、重力屈性
背景・ねらい 干ばつは、作物生産に甚大な被害を及ぼす大きな農業問題である。とくに、発展途上国では飢餓の主要な原因の1つとなっている。世界の食糧問題を解決するうえで、作物における耐乾性の強化は極めて重要な課題である。深根性(根が土壌深くまで伸びる性質)は、乾燥地域において植物が土壌深層から水を獲得するうえで重要な形質であるが、これまで深根性に関与する遺伝子は明らかでなかった。本研究では、イネの深根性に関与する遺伝子を発見するとともに、深根性遺伝子がイネの干ばつ耐性を向上させることを明らかにした。
成果の内容・特徴
  1. 遺伝学的手法により、深根の陸稲品種「Kinandang Patong」と浅根の水稲品種「IR64」から交配・作成した解析集団を用いて深根性に関わる遺伝子DRO1を特定した。機能解析の結果、DRO1は根端で働き、重力屈性に関与していることがわかった(図1)。Kinandang PatongはDRO1が機能して深根になるが、IR64ではDRO1の一部が欠損しており、その結果、根の重力屈性が低下し浅根になることが判明した。
  2. DNAマーカー選抜育種により、Kinandang Patong由来の機能型DRO1をIR64へ導入した系統(Dro1-NIL)を育成した。干ばつ状態でない畑で栽培すると、Dro1-NILは根伸長角度を大きくすることで原品種のIR64より2倍以上根が深く張ることが明らかとなった(図2)。
  3. 国際熱帯農業センター(CIAT、コロンビア)内の干ばつ状態の畑でDro1-NILとIR64を栽培し、両品種の収量を比較した。中程度の干ばつ条件では、IR64の収量は通常の畑で栽培した場合の半分に減少したが、Dro1-NILは通常時と同程度の収量が保たれた。さらに厳しい干ばつ条件では、IR64はほとんど収穫できなかったが、Dro1-NILは通常時の30%程度の収量が得られた。一方、通常の畑で栽培した場合の収量は、両品種でほぼ同じであった(図3)。
  4. 形質転換体イネを用いた解析から、根端でのDRO1の発現を高めると発現量に応じて根がより深くなり、逆にDRO1の発現を低くすると根が浅くなることが判明した。DRO1の遺伝子発現を制御することで、イネの根を浅根から深根に、深根から浅根に自由に変えることが可能になると示唆された。
  5. トウモロコシやソルガム、オオムギなどの他の作物にもDRO1に相同する遺伝子が存在した。
成果の活用面・留意点
  1. IR64はアジアで広く栽培され、母本にもなっている主要品種である。そこで、DRO1を導入したIR64のアジアにおける普及をめざし、国際イネ研究所(IRRI、フィリピン)と連携し、干ばつが問題となっているアジアの天水田で実証試験を計画している。さらに、ラテンアメリカ稲へのDRO1の導入および評価をCIATと連携して進めている。
  2. 深根性の改良は、単に乾燥耐性を強化するだけでなく、例えば、国内のイネ品種の耐倒伏性や収量性(登熟性)の改善にも寄与することが期待できる。
  3. 世界各地で発生する干ばつ被害に対し、DRO1に相同する遺伝子を活用した干ばつ耐性品種を開発することで、トウモロコシのような畑作物の安定生産への貢献が期待できる。
図表1 236360-1.jpg
図表2 236360-2.jpg
図表3 236360-3.jpg
研究内容 http://www.nias.affrc.go.jp/seika/nias/h25/nias02504.html
カテゴリ 育種 乾燥 水田 ソルガム DNAマーカー とうもろこし 品種 陸稲

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