タイトル |
ニホンナシにおけるゲノムワイドなマーカーを用いた形質予測 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 |
2011~2013 |
研究担当者 |
林武司
岩田洋佳
寺上伸吾
高田教臣
澤村豊
山本俊哉
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発行年度 |
2013 |
要約 |
ニホンナシ76品種における9つの形質データとゲノムワイドに配置した162個のマーカーのデータを用いて、マーカーの遺伝子型から形質値を予測するための統計モデルを構築する。収穫期などの形質については、高い精度での予測が可能である。
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キーワード |
ニホンナシ、果樹、ゲノミックセレクション、形質予測、ベイズ推定
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背景・ねらい |
ゲノム情報を利用した育種法として、ゲノム全体に配置した多数のマーカーをもとに形質の遺伝的能力を予測し、その予測値にもとづいた効率的な選抜を行うゲノミックセレクションが注目されている。特に、世代間隔が長く形質評価に多大な時間とコストを要する果樹においては、形質評価を必要とせずに個体選抜を可能とするゲノミックセレクションは、効率的なゲノム育種法として大きな期待を集めている。果樹におけるゲノミックセレクションの実用化を目指した基盤的な研究として、ニホンナシの品種集団においてマーカーを用いた形質値予測の精度を調べる。
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成果の内容・特徴 |
- ニホンナシ76品種について、階級値として評価された9形質(収穫期、黒斑病抵抗性、果実硬度、果実重、果実形、酸度、糖度、短果枝の着生、樹勢)および162個のマーカー(161個のSSRマーカーとS遺伝子座)のデータを用いる。
- 形質がM 段階の階級値で評価されている場合、評価値の背後に連続的な潜在変数を想定し、プロビットモデルによって階級値と潜在変数を図1の(1) 式のように関係づける。ここで、yi は品種i の評価値、yi *は評価値に対する潜在変数を表す。
- 潜在変数を形質の表現型値とみなし、すべてのマーカーの遺伝子型を説明変数とする図1の(2)式のような線形モデルを考える。ここで、J はマーカーの個数、Lj はマーカーj のアリルの個数、xijl (x'ijl )は品種i のマーカーj における母方(父方)由来のアリルを表す変数、βjl はマーカーj におけるアリルl の形質への効果、γj はマーカーjをモデルに含めるか(γj =1)否か(γj =0)を示す変数であり、またα1はモデルの切片、ei はモデルの残差である。
- 1個抜きのクロスバリデーションによって、形質予測モデル(2)の精度を評価した。クロスバリデーションにおいては、76品種のそれぞれ1つの品種を除いた残り75品種のデータから、ベイズ推定により(2)式のパラメータ(α1,βjl,γj )を推定してモデルを構築し、除いた品種に対して遺伝子型データから形質値の予測を行う。9形質における各品種の評価値と予測値のプロットを図2に示す。
- 収穫期、果実硬度、短果枝の着生については、予測値と実測値との間に0.6以上の相関が見られ、十分な予測精度が得られる。
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成果の活用面・留意点 |
- 一般に、形質予測の精度は利用できるマーカー数とともに向上することが予想され、ゲノム上に高密度に配置されたSNPの利用により形質予測の精度のさらなる向上が期待される。
- しかしながら、形質によって予測精度に違いがあり、精度が低い形質については、マーカー数の増加やモデルの改良により精度の向上が可能かどうかを検討する必要がある。
- イネやムギ等の自殖性作物についても、高密度のマーカーを用いて、適切な予測モデルを構築することにより高精度の形質予測が可能であると考えられる。
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図表1 |
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図表2 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/narc/2013/narc13_s29.html
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カテゴリ |
育種
ゲノム育種
コスト
抵抗性
品種
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