タイトル |
農業被害を引き起こす大型哺乳類5種の分布拡大シミュレーション |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 |
2011~2014 |
研究担当者 |
百瀬浩
井上聡
斎藤昌幸
倉島治
松田裕之
|
発行年度 |
2014 |
要約 |
イノシシ、シカ他大型哺乳類5種の既存分布調査資料を分析して、日本全国における分布拡大シミュレーションを行うことができる。2028 年時点で、北関東、北陸、東北南部などでイノシシ、シカ等の分布が拡大すると予測される。
|
キーワード |
野生動物、大型哺乳類、分布拡大、シミュレーション
|
背景・ねらい |
近年、野生動物による農作物被害が深刻化しており、多くの地域で、イノシシ、シカ等の分布および被害が急速に拡大している。有害獣の分布拡大状況を事前予測できれば、拡大が予想される地域での早期の農業被害防止対策や、拡大そのものを防止するための対策検討などが可能になる。そこで、現在の分布状況をもとに大型哺乳類5種の分布拡大予測モデルを構築し、それを用いて有害獣の分布拡大を予測する手法を開発する。
|
成果の内容・特徴 |
- 環境省の自然環境保全基礎調査の第2回(1978年)及び第6回(2003 年)で行われた哺乳類の全国分布調査結果から、ニホンジカ、カモシカ、イノシシ、ニホンザル、ツキノワグマについて、日本全国を約5km 四方のメッシュに分割した場合の在―不在データを作り、これを分布拡大予測モデル構築のための元データとする(図1の左側2列)。
- 構築する分布拡大予測モデルは次式の様に、単位時間あたりに対象種の分布があるメッシュに拡大する確率(Zi)を、既存の分布メッシュからの距離Dの項(分散確率)および移動先メッシュの環境要因X の項(定着確率=生息適合度)の積によって推定するものであり、パラメータの推定には最尤法を使用する(表1)。
 - モデルの適合度の指標となるAUC と判別的中率(CCR)は、ニホンジカで0.913 と83.9%、カモシカで0.961と90.0%、イノシシで0.951と88.2%、ニホンザルで0.861と78.2%、ツキノワグマで0.928と86.5%であり、モデル適合度は高い。
- モデルを用いて、2028年時点での分布拡大シミュレーションを行うと、環境変動を仮定しない場合、温暖化により冬期の積雪深が減少するなど気候等の環境変動を考慮した場合のいずれにおいても、関東北部、北陸、東北南部等の地域で分布が拡大すると予測される(図1の右側2列)。
|
成果の活用面・留意点 |
- 本成果は、行政等の鳥獣害対策担当者および野生鳥獣の保護管理担当者などへの情報提供を目的としている。
- 東北、北陸等、イノシシやニホンジカの分布拡大が予想される地域では、農業被害の増加が懸念されるため、早めの被害対策検討が必要である。以下のURLでこれら地域の詳細図を掲載している。http://www.naro.affrc.go.jp/org/narc/chougai/
- 本シミュレーション結果は、餌等の資源を巡る競合等の種間関係を考慮していない。
|
図表1 |
 |
図表2 |
 |
研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/narc/2014/narc14_s38.html
|
カテゴリ |
シカ
鳥獣害
|