プロテオミクスによる骨格筋細胞分泌因子の解析

タイトル プロテオミクスによる骨格筋細胞分泌因子の解析
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所
研究期間 2012~2014
研究担当者 尾嶋孝一
大江美香
中島郁世
柴田昌宏
千国幸一
室谷進
西邑隆徳
発行年度 2014
要約 骨格筋細胞が分泌するタンパク質およびペプチドは、増殖から分化に至る過程でその種類と量が変化し、分泌量が分化直後にピークに達するものが多い。これらには、骨格筋組織を構築する筋・脂肪・神経・内皮細胞の増殖や分化を活性化する因子が含まれる。
キーワード 骨格筋、分泌性因子、網羅的解析、生理活性因子
背景・ねらい 分泌性の増殖因子は細胞の増殖や分化の調節因子として作用する。骨格筋は運動を司る組織であるため、これまでは骨格筋細胞自体が増殖因子等の生理活性因子を積極的に分泌するとは考えられなかった。一方、骨格筋量の調節、特に筋肥大に関してはインスリン様増殖因子、ミオスタチンなどの様々な分泌性の因子が関与していることが報告されている。そこで、家畜の枝肉格付に寄与する赤身肉の歩留向上と増産を目指し、骨格筋細胞由来の分泌性因子に着目した。マウス由来の培養骨格筋細胞をモデルとして増殖から分化、成長に至る過程で分泌される因子について、プロテオームの手法を用いて網羅的発現解析を行い、発現プロファイルを作成したものである。
成果の内容・特徴
  1. 作成された分泌因子プロファイルは、合計8814本のMSシグナル全てを解析して得られた437個のタンパク質/ペプチドからなり、そのうち約8%が分泌性シグナルペプチドを持つタンパク質である。これらの中には成長因子に関連する分子、細胞外マトリックス構成成分、内在性タンパク質分解酵素阻害因子などを含む。
  2. 細胞増殖期の発現量を基準として、各過程での発現量を標準化し相対定量を行い、発現パターンを解析すると、(1)分化につれて分泌量が増加するパターン、(2)分化につれて分泌量が減少するパターン、(3)分化直後に分泌量がピークに達するパターンがあり、(3)のパターンを取る因子が多い。
  3. 得られたプロファイルとこれまでの各因子の機能に関する知見から、骨格筋細胞の分泌因子について以下の特徴が挙げられる。骨格筋細胞は増殖期において脂肪細胞分化を抑制する因子、および神経細胞の誘引を忌避する因子を分泌し、分化、成長が進むにつれて筋分化や成長を促す因子、血管内皮細胞を誘引する因子、および神経細胞を誘引する因子を分泌する(表1、図1)。
成果の活用面・留意点
  1. プロテオミクスの手法により作成した発現プロファイルは効率的に骨格筋肥大をもたらす因子を見いだすための研究基盤として活用できる。
  2. 骨格筋細胞の分泌因子プロファイルは、増殖から分化に至る過程の培養マウス骨格筋細胞において得られたものである。
  3. 図1は発現プロファイルの結果から得られたモデルである。見出した分泌性因子の各細胞に与える具体的な効果(細胞増殖活性化・分化促進・成長促進など)は推定であり、確認する必要がある。
図表1 237110-1.jpg
図表2 237110-2.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2014/nilgs14_s22.html
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