豚肉の肉質関連代謝物質の分布およびと畜後の生成過程は筋肉間で異なる

タイトル 豚肉の肉質関連代謝物質の分布およびと畜後の生成過程は筋肉間で異なる
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所
研究期間 2011~2015
研究担当者 室谷進
大江美香
中島郁世
尾嶋孝一
発行年度 2015
要約 ブタの腰最長筋(ロース)には、中間広筋(モモの一部)に比べ、β-アラニン関連物質が多く含まれるが親水性アミノ酸が少ない。貯蔵中ではイノシン酸を含むATP分解産物と、疎水性アミノ酸やペプチド等タンパク質分解産物が腰最長筋でより多く蓄積する。
キーワード 豚肉、貯蔵、筋線維型、イノシン酸、メタボロミクス
背景・ねらい 国内食肉生産および市場の活性化に向け、食肉の一層の付加価値向上が必要である。このため食味性や機能性、健康性等に関連する因子の解明が求められている。貯蔵中の食肉では食味関連物質が生成するが、その筋肉間の違いについては解明されていない。本研究では水溶性成分を中心とするメタボロミクス(代謝性低分子化合物の網羅的解析)により、代謝特性(筋線維型)の異なる2種のブタ筋肉(速筋型または遅筋型)について、と畜後の代謝物質プロファイルを経時的に作成する。さらに、その貯蔵過程における代謝物質の分布変化を比較し食味関連物質の生成機構の違いを解明する。これにより肉質を特徴づける因子の生成機構を解明し肉質マーカーの探索を通じて肉質向上の基盤構築をめざす。
成果の内容・特徴
  1. 試料には、2℃で貯蔵中の豚枝肉(LWD種)から採取したと畜0.5,6,24, 168時間後の腰最長筋(速筋型;白色筋)および中間広筋(遅筋型;赤色筋)試料(n=3)を用いている。代謝物質プロファイルはキャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計(CE-TOF MS)による網羅的解析で得られたものであり、計188種の物質からなる。
  2. と畜直後(0.5時間後)で61物質、貯蔵後(168時間後)で64物質の含量に筋肉間の有意差がある。また腰最長筋で48物質、中間広筋で43物質にと畜直後-貯蔵後間の有意な含量変化がある。
  3. 各試料の物質含量に対する主成分分析の結果では、第1主成分と第2主成分により各試料が筋肉と貯蔵時間の違いで明瞭に区分される(図1)。貯蔵過程を通じ、腰最長筋はカルノシン、アンセリン等のβ-アラニン関連物質に富む一方、中間広筋はグルタミン酸等の親水性アミノ酸に富む。イノシン酸(IMP)等ATP分解産物やペプチドについては腰最長筋では経時的に増加するのに対し、中間広筋では24時間後以降変化が認められない。疎水性アミノ酸、芳香族アミノ酸は両筋肉で増加する傾向がある。これらの結果から腰最長筋では中間広筋に比べてタンパク質分解が進んでいると考えられる。
  4. ATPを出発物質、うま味物質であるIMPを中間代謝物とする一連の反応の進行速度と、IMPおよび最終物質のヒポキサンチン(Hypoxanthine)の蓄積は腰最長筋と中間広筋で異なり、IMPの蓄積は腰最長筋で有意に多い(図2)。腰最長筋でのIMPの蓄積はIMPからイノシンへの反応の進行が中間広筋より遅いためと考えられる。
成果の活用面・留意点
  1. 本成果は、筋細胞の代謝特性(筋線維型)を変化させることでイノシン酸蓄積制御が可能であることを示唆する基礎的知見である。
  2. 本研究では速筋として腰最長筋、遅筋として中間広筋を用いたが、今回得られたうま味関連物質等の蓄積に対する筋肉の影響がどの筋肉でも認められるか否かについては、別の筋肉を用いて検討する必要がある。
  3. 中間広筋はモモの一部であるが、必ずしもモモ部位を代表する筋肉ではなく、同じモモ部位の周囲の筋肉とは代謝特性が異なる。
図表1 237699-1.gif
図表2 237699-2.gif
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2015/nilgs15_s32.html
カテゴリ 機能性 肉牛 もも 良食味

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