タイトル |
低標高地での越夏性や永続性に優れるトールフェスク極早生品種「Kyushu 15」 |
担当機関 |
(国)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター |
研究期間 |
1995~2015 |
研究担当者 |
桂真昭
我有満
松浦正宏
長谷健
上山泰史
松岡秀道
小橋健
後藤和美
高井智之
山下浩
波多野哲也
上床修弘
松岡誠
荒川明
木村貴志
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発行年度 |
2015 |
要約 |
トールフェスク「Kyushu 15」は、出穂が早生品種「ナンリョウ」より1週間程度早く、低標高地の越夏性と永続性に優れる極早生品種で、放牧に利用できる。
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キーワード |
トールフェスク、越夏性、永続性、放牧、飼料作物育種
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背景・ねらい |
トールフェスクは、西南暖地の中標高(標高300m)以上の永年利用において、寒地型イネ科牧草の中で最も生産力が高いことから基幹草種として利用されている。その一方で、肉用牛繁殖経営における放牧利用において、低標高地でバヒアグラスなどの暖地型牧草と組み合わせて周年で放牧利用できる品種が求められている。そこで、低標高地での越夏性や永続性に優れるトールフェスク品種を育成する。
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成果の内容・特徴 |
- 「Kyushu 15」は、越夏性で選抜された19栄養系を育種材料とし、それらに由来する母系を、出穂性、収量性、病害程度、乾物消失率により選抜して、阿蘇で多収であった3母系の種子を等量混合し、それらを隔離採種して育成した品種である
- 出穂は、早生品種の「ナンリョウ」より1週間程度早く、極早生に属する(表1)。
- 年間乾物収量は、低標高地では早生の多収品種である「ナンリョウ」と同程度か、より高い(図1)。
- 最終刈り後の基底被度は「ナンリョウ」よりやや高い(表1)。低標高地における秋の最終刈り乾物収量は「ナンリョウ」より高く(図1)、低標高地における越夏性に優れる(図3)。
- 利用3年目の最終刈り後の基底被度は「ナンリョウ」よりやや高い(表1)。低標高地における利用3年目の最終刈り乾物収量は、「ナンリョウ」と同程度か、より高く(図1)、低標高地における永続性に優れる。
- 各種の病害程度は「ナンリョウ」よりやや低い(表1)。
- 放牧条件下での利用草量は「ナンリョウ」よりやや低いが、草量の利用率、草丈利用率は平均で「ナンリョウ」よりやや高い傾向である(表1)。季節生産性や草丈利用率が「ナンリョウ」より安定しており(図2)、放牧適性は「ナンリョウ」よりやや優れる。
- 粗タンパク質含有率と推定TDN含量は、「ナンリョウ」と同程度である(表1)。
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成果の活用面・留意点 |
- 西日本を中心に、寒地型牧草の夏枯れや永続性が問題となる地域で利用できる。特に、低標高地では肉用牛繁殖経営における放牧利用の中で、バヒアグラス草地と組み合わせた利用が見込まれる。また、出穂が10日程度遅い中生品種「ウシブエ」との併用も見込まれる。
- 各地域における慣行の栽培管理で利用できるが、西日本の低標高地での利用においては、越夏性を十分に発揮させるため、7月中旬から9月上旬の入牧や刈取りを避けることを基本にする。
- 佐賀県では、「佐賀県環境の保全と創造に関する条例(佐賀県条例第48号、2002年)」で、トールフェスクを移入規制種として指定しており、通常の栽培は禁止されている。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/karc/2015/karc15_s03.html
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カテゴリ |
育種
寒地
経営管理
栽培技術
飼料作物
肉牛
繁殖性改善
品種
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