タイトル | 残差解析の活用によるコムギ遺伝資源の放射性セシウム蓄積性の推定 |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター |
研究期間 | 2012~2019 |
研究担当者 |
久保堅司 小林浩幸 新田みゆき 竹中祥太朗 那須田周平 藤村恵人 高木恭子 永田 修 太田 健 信濃卓郎 |
発行年度 | 2020 |
要約 | 圃場内の交換性カリ含量のバラツキを残差解析で補正することにより、コムギの放射性セシウム蓄積性の多様性を解析できる。本解析により、放射性セシウムの蓄積性が特徴的な系統を選定できる。 |
キーワード | コムギ、放射性セシウム、カリウム、移行性、遺伝的多様性 |
背景・ねらい | 2011年3月の東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故により、放射性セシウムの影響を受けた地域では、土壌から作物への放射性セシウムの移行を低減するため、カリ肥料の増施対策がとられている。カリ肥料の施用量を適正化しつつ作物への放射性セシウムの移行を低減するためには、セシウムが蓄積しにくい品種とその特性の活用が有効な一手段と考えられる。本研究では、放射性セシウムの飛散の影響を受けた現地圃場において、カリ肥料を施用しない条件でコムギの国内外の遺伝資源198系統の放射性セシウムの蓄積性を、2カ年にわたり評価することにより、低蓄積系統を明らかにする。また、圃場内の交換性カリ含量のバラツキがコムギ遺伝資源の放射性セシウムの蓄積性に及ぼす影響についても解明する。 |
成果の内容・特徴 | 1.初年目(2012年)の収穫時の圃場内には、土壌の交換性カリ含量に約4倍(51.6~194 K2O mg kg-1)、放射性セシウム濃度に約2倍(2321~5901 Bq kg-1)のバラツキが認められる(図1)。本現地圃場は原発事故前に水田として利用されており、土壌の交換性カリ含量は水口付近で低く、含量の分布は用水の流入と流出の影響を受ける。 2.本圃場で栽培したコムギ子実と茎葉の放射性セシウム濃度には系統間で各々約10倍 (10.3~104.6 Bq kg-1、24.6~285.8 Bq kg-1) の差異が認められる(図省略)。一方で土壌の交換性カリ含量が低い地点で生育した系統の子実と茎葉の放射性セシウム濃度は高いという関係が2カ年とも認められ、作物体への放射性セシウムの蓄積に対する土壌の交換性カリ含量の影響は大きい(図2)。 3.土壌の交換性カリ含量と子実・茎葉の放射性セシウム濃度の回帰曲線(図2)を用いて残差解析を行い、各系統の子実・茎葉の放射性セシウム濃度への土壌の交換性カリ含量の影響を補正すると、土壌の交換性カリ含量と茎葉の放射性セシウム濃度との関係(土壌ExK:茎葉RCs)の残差は年次間で有意な正の相関関係を示し(r=0.161、P <0.05)、残差(土壌ExK:茎葉RCs)は残差(土壌ExK:子実RCs)と有意な正の相関関係を示す(図3)。 4.残差解析(図3)で低蓄積と推定した系統群の、子実の放射性セシウム濃度と移行係数(作物体の放射性セシウム濃度/土壌の放射性セシウム濃度)は、高蓄積と推定した系統群と比較して、低い(表1)。 |
成果の活用面・留意点 | 1.本成果は、福島県内の現地圃場(8a、灰色低地土(軽埴土)、除染無し)、主要な粘土鉱物組成はスメクタイト、2:1-2:1:1型中間種鉱物)で得られた結果である。 2.本解析手法は、各種作物における圃場での放射性セシウムの蓄積性の評価に活用できる。 3.本研究で低蓄積と推定した系統については、土壌の交換性カリ含量が数段階に異なる条件を設けた栽培試験等により、放射性セシウムの蓄積性を評価・確認する必要がある。 |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/tarc/2020/tarc20_s21.html |
カテゴリ | 肥料 遺伝資源 水田 品種 |