NMRによる農業メタボロミクスプロトコール

• 担当機関: （国）農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門
• 研究期間: 2016～2020
• 研究担当者: 関山恭代; 池田成志; 小野裕嗣; 浅野賢治; 岡崎和之; 冨田理; 小林晃; 小林有紀; 染谷信孝; 津田昌吾
• 発行年度: 2020
• 要約: 農業分野におけるメタボロミクスの活用を促進するため、栽培現場での分析用試料の取り扱い、分析者が知っておくべき栽培現場作業の基本事項を明確にし、農研機構でのNMRメタボロミクスについて具体的な実施例およびトラブル事例と対応をとりまとめる。
• キーワード: 農業メタボロミクス、栽培計画、メタデータ、サンプリング方法、NMR、代謝プロファイル
• 背景・ねらい: メタボロミクスによって分かる代謝プロファイルや成分プロファイルは、農産物の生理状態や食品の品質を反映する重要な表現型であり、フードサプライチェーンの各段階において、効果的な栽培技術の開発や品質向上のための環境制御などの指標になり得る。しかし、栽培中の作物や収穫後の農産物の代謝は複数の環境要因や生物間相互作用の影響を受けて複雑に変化するため、実用に足る指標として活用するにはデータの精度を向上させ、メタデータ(収量などの基本的な農業データや栽培時の環境データなど、試料に関する一連の情報)と紐づけされた農業現場試料のデータ蓄積をはかり、さらに何年にもわたる追跡調査を行う必要がある。メタボロミクスは様々な研究分野において利用が進んでおり、医療診断分野で実用化されているが、農業研究においては活用例が少なく特に栽培現場の試料を扱う際の問題も多い。そこで本研究では、栽培現場での分析用試料の取り扱い、分析者が知っておくべき栽培現場作業の基本事項を明確にし、具体的な実施例およびトラブル事例と対応をとりまとめ、栽培現場と分析室のスムーズな連携および農業研究でのメタボロミクス活用を促進することを目的とする。
• 成果の内容・特徴: 1.農業メタボロミクスは栽培・分析・データ解析と活用の3つから構成される(図1)。; 2.農業メタボロミクスを成功させるためには、構成要素のうち、(1)栽培計画、(2)サンプリング、(3)保存・輸送の各工程において、表1に示した項目について、栽培担当者と分析担当者との双方で打合せと確認を行うことが重要である。 ; 3.農研機構における農業メタボロミクスの実施例として、(1)ジャガイモ疫病抵抗性関連代謝の解析、(2)ジャガイモそうか病関連代謝の解析、(3)テンサイ褐斑病関連代謝の解析があり、代謝マーカーの候補が特定されている。 ; 4.実施例と異なる試料を扱う場合でも、公開されているデータベースおよびプロトコール(表2)を参考にすることができる。 ; 5.栽培現場における適切な分析用試料の取り扱い方法、分析現場における試験計画や分析計画の立て方を具体的に示すことで、効率的なメタボロミクスの実施が可能となり、データに基づいた栽培管理や品質管理が可能になる。
• 成果の活用面・留意点: 1.本成果について、標準手順作業書としてとりまとめ、詳細な情報提供を図る。 ; 2.本成果は、NMRによるメタボロミクスだけでなく、質量分析等の他の機器分析を行う際にも活用できる。また、受託分析サービスに農業試料を供する際にも参考となる。 ; 3.作物の代謝プロファイルは栽培条件や地理的要因により変化する可能性があるため、複数圃場における調査や年次間差異の確認が必要である。
• 研究内容: https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nfri/2020/nmr.html
• カテゴリ: 環境制御 環境データ 栽培技術 栽培条件 データベース 抵抗性 てんさい ばれいしょ 輸送