ダイズは開花期後に放射性セシウムをより吸収しやくすくなる

タイトル ダイズは開花期後に放射性セシウムをより吸収しやくすくなる
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター
研究期間 2012~2020
研究担当者 松波寿弥
内田智子
小林浩幸
太田健
信濃卓郎
発行年度 2021
要約 ダイズは、開花期後の吸収過程におけるカリウムと放射性セシウムの識別の低下、および成長にともなう土壌の交換性放射性セシウム/カリウム比の増加により、放射性セシウムをより吸収しやすくなる。
キーワード カリウム、ダイズ、放射性セシウム
背景・ねらい 2011 年3 月11 日の東日本大震災にともない、東京電力福島第一原子力発電所で事故が発生し、福島県を中心とした東日本の広範囲において農作物や土壌が放射性物質に汚染された。放射性セシウム、特に137Cs は半減期が長く、長期にわたり土壌に残留するため、経根吸収由来の間接汚染は長期にわたる問題となる。ダイズは、他の作物に比べて移行係数が高く、事故後のモニタリング検査においても他の作物に比べて基準値超過割合が高い。原発事故の被災地域では、土壌から作物への放射性セシウムの移行を低減するためにカリウム(K)の追加的な施用が広く推奨されているが、Kの追加的施用には莫大な費用と労力を要する。これらのことから、ダイズ可食部への放射性セシウムの移行を効率的に低減でき、かつK施肥量を減らす手法の開発が強く望まれている。本研究では、異なるK施用条件下におけるKおよび放射性セシウム(137Cs)の吸収および体内分布の変動性を明らかにする。
成果の内容・特徴 1. ダイズのK吸収量は、5葉期(V5期)から子実肥大期(R6期)にかけて著しく増加する。K吸収量の増加に伴って、137Cs吸収量も増加する(図1)。
2. K施用は、Kの吸収や体内分配よりも137Cのそれらに強い影響を与える。K施用は、137Csの吸収だけでなく、子実への137Csの分配も減少させるが、子実の137Cs蓄積に影響を与える主要因は137Csの吸収である(図1、2)。
3. 土壌中の交換性137Cs/K比は、各生育ステージの地上部における137Cs/K比と正の相関があり、開花期(R2期)後の回帰直線の傾きは開花期以前のほぼ倍である(図3)。この結果は、開花期後は吸収過程におけるKと137Csの識別が低下し、土壌の交換性137Cs/K比が同じでも137Csを吸収しやすくなっていることを意味している。
4. 土壌の交換性137Cs/K比は、成長が進むにつれて増加する傾向を示し、K施用によって減少する(表1)。
5. 開花期後の吸収過程におけるKと137Csの識別の低下、および成長にともなう土壌の交換性137Cs/K比の増加により、放射性セシウムをより吸収しやすくなる。
成果の活用面・留意点 1. 本成果は、ダイズの放射性セシウム吸収抑制対策としてのカリの施用量や施肥時期の最適化の基礎情報として活用する。
2. 本成果は、福島県内の現地圃場において、カリ施用水準を5段階(カリ無施用、播種前の交換性カリ含量23 mgK2O/100g、38 mgK2O/100g、58 mgK2O/100g、78 mgK2O/100g)設けて実施したダイズ(タチナガハ)の栽培試験から得られた結果である。土壌タイプおよび土性は、それぞれ灰色低地土および砂質粘土であり、試験開始直前(2015年5月中旬)の土壌の放射性セシウム濃度は2.74 kBq/kgである。
図表1 248989-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/tarc/2021/tarc21_s08.html
カテゴリ 施肥 大豆 播種 モニタリング

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