タイトル | リンゴの根頭がんしゅ病抵抗性に関与する3箇所の染色体領域 |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹茶業研究部門 |
研究期間 | 2011~2020 |
研究担当者 |
森谷茂樹 岩波宏 土師岳 岡田和馬 清水拓 須﨑浩一 北本尚子 片寄裕一 呉健忠 山本俊哉 阿部和幸 |
発行年度 | 2021 |
要約 | 複数の根頭がんしゅ病菌菌株に対して抵抗性を示すリンゴ属の野生種ミツバカイドウを用いて、リンゴの根頭がんしゅ病抵抗性に関与する3箇所の染色体領域を特定した。根頭がんしゅ病抵抗性のリンゴ台木の育成において、これらの領域を集積することが有効と考えられる。 |
キーワード | リンゴ台木、ミツバカイドウ、抵抗性遺伝子、根頭がんしゅ病菌、量的形質遺伝子座(QTL) |
背景・ねらい | リンゴの根頭がんしゅ病は根頭がんしゅ病菌(Rhizobium rhizogenes (Ti)およびRhizobium radiobactor (Ti))を病原とする土壌病害である。罹病樹がすぐに枯死することはないものの、一度罹患すると有効な治療法がない。特に、苗木生産の段階で罹患した場合、苗木の商品価値が無くなるために影響が大きい。このため、根頭がんしゅ病に抵抗性を示す台木の開発が求められている。農研機構ではこれまでに、リンゴ属の野生種であるミツバカイドウの1系統「サナシ63(JP番号169477)」が、複数の根頭がんしゅ病菌菌株に対して抵抗性を示し、その抵抗性は後代に遺伝することを明らかにしている。しかしながら、本病に対する抵抗性を病原菌の接種検定によって調べるには、煩雑な作業と数年にわたる反復試験が必要である。 そこで、根頭がんしゅ病抵抗性台木の育種を効率的に進めるため、「JM7」とミツバカイドウ「サナシ63」とを交雑して得られた実生集団を用いたQTL解析を行って、根頭がんしゅ病抵抗性に関与する染色体領域を特定する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 抵抗性に関与する染色体領域(量的形質遺伝子座:QTL)は3箇所あり、接種に用いた根頭がんしゅ病菌の菌株ごとにQTLとして検出される箇所の対応が異なる(表1)。 2. 山形県で単離された根頭がんしゅ病菌のPeachCG8331株、長野県で単離された長野No.1、および長野No.2株に対しては、ミツバカイドウの第2染色体に抵抗性に関与する領域が認められる(図1)。この遺伝子座をRrr1(Resistance to Rhizobium rhizogenes 1)と名付ける。 3. Rrr1領域を詳しく解析すると、217kbの領域内に病害抵抗性遺伝子に特徴的なアミノ酸配列を持つ推定遺伝子が4種類認められる(図2)。 4. 青森県で単離されたARAT-001株に対しては、罹病性であるリンゴ台木品種「JM7」の第11および第15染色体に抵抗性に関与する領域が認められる(図1)。抵抗性のミツバカイドウではなく、罹病性の「JM7」に抵抗性に関与する領域が認められたことは、本菌株に対する抵抗性が潜性アレルのホモ接合により発現することを示唆する。 5. 青森県で単離されたARAT-002株および秋田県で単離された鹿角2株に対しては、「JM7」の第11染色体に抵抗性に関与する領域が認められる(図1)。成果の内容・特徴4.で見いだされたARAT-001株への抵抗性に関与する領域とほぼ重なっていることから、抵抗性をもたらす要因は同一である可能性が高いと考えられる。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 実験に用いた根頭がんしゅ病菌の菌株は、わが国のリンゴ主産県に実際に分布しているものであり、特定された染色体領域のDNAマーカー選抜によって、実用的な抵抗性台木の育成に利用できる。 2. 根頭がんしゅ病菌の病原性(レース)や毒性によっては、本研究で明らかにされた染色体領域を有していても本病が発病する可能性があることに留意する。 |
図表1 | ![]() |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/nifts/2021/nifts21_s01.html |
カテゴリ | 育種 台木 治療法 DNAマーカー 抵抗性 抵抗性遺伝子 苗木生産 病害抵抗性 品種 りんご |