(1)農業環境中における有害化学物質のリスク評価手法及びリスク管理技術の開発

課題名 (1)農業環境中における有害化学物質のリスク評価手法及びリスク管理技術の開発
課題番号 2010014994
研究機関名 農業環境技術研究所
研究分担 (独)農業環境技術研究所,有機化学物質研究領域
協力分担関係 長野県農業試験場
富山県農林水産総合技術センター
福岡県農業総合試験場
新潟県農業総合研究所・園芸研究センター
太平洋セメント株式会社・中央研究所
(株)フジタ
高輝度光科学研究センター
研究期間 2006-2010
年度 2010
摘要 ア 農薬等の環境リスク評価手法及びリスク低減技術の開発(1)化学物質のリスク低減技術の開発 ディルドリン残留ほ場で8 科18 作物を栽培し、各作物の可食部および株元土壌を分析したところ、可食部への移行率(可食部中濃度/土壌中濃度)はウリ科作物が高く、ウリ科以外ではダイコン、ニンジン、バレイショが高い傾向にあった。また、可食部への移行率を残留基準値で除した基準値超過指標値を算出したところ、ダイコンやバレイショは残留基準値が低いため、基準値超過指標値はカボチャやズッキーニと同様に高い値となった。以上から、ディルドリン残留ほ場におけるキュウリの代替作物としては、他のウリ科作物、および残留基準値の低い根菜類(ダイコン)やイモ類(バレイショ)は避けるほうが適切であることが示された。 土壌タイプの異なるヘプタクロル類残留8 ほ場(火山放出物未熟土・灰色低地土・黒ボク土)で栽培した3 品種のカボチャを対象に、栽培前土壌の50%メタノール・水抽出法の有用性を検証したところ、収穫カボチャ果実中のヘプタクロル類濃度との間で良好な相関関係が認められた。この土壌抽出法は、平成21年度にキュウリ-ディルドリンにおいても妥当性が確認されており、現在問題となっているウリ科野菜のPOPsについては、栽培前に行える汚染度予測技術としての有用性が実証された。(2)有機化学物質のリスク評価手法の開発 水田で使用する農薬について、その物理化学性、環境条件、流域特性などの情報を用いて、河川水中の農薬濃度を精度良く予測し、地図上に濃度分布を表示するシミュレーションモデル(GIS 結合型PADDY-Large モデル)を開発した。このモデルでは、どの地域でどの時期に河川水中の農薬濃度がどの程度で推移するのかを可視的に評価することができる。また、農薬の施用量や施用方法を変化させたシナリオでの評価を、流域での農薬使用の管理方法の検討に活用することも可能である。 大気中のPOPs 様物質(24 物質)について、日本、中国、韓国、台湾の106 地点でパッシブサンプラーによる大気の捕集・分析を行ったところ、大気中エンドスルファン類について、大陸から、九州西部・南西諸島域への移流・拡散の影響が示唆された。イ 重金属汚染リスク評価手法及び汚染土壌修復技術の開発(1)リスク低減技術の開発汚染水田に塩化鉄を溶かした用水を入れて土壌と混合し、カドミウムを溶出させて排水することにより、土壌のカドミウム濃度を60~80%、生産される玄米のカドミウム濃度を70~90%低減する実規模のオンサイト土壌洗浄技術(化学洗浄法)を確立した。本技術においては、洗浄処理後に土壌pHを矯正し、ミネラル補給して水稲を栽培すると、玄米収量はほとんど減少せず、食味や栄養分も大きく変化しない。また、農業排水路に放流する排水中の塩素イオン等の溶存成分は藻類、ミジンコ、魚類などを用いた影響評価で生態系に悪影響を及ぼさないことを示した。標準的な工費は10アールあたり約300万円と客土(300~600万円程度)と同等以下の水準であり、平成21年度の普及に移しうる成果であるファイトレメディエーションと比較して、高濃度の汚染地域を短期間で浄化したい場合等に適する技術として活用が期待される。 平成23年2月末日から、食品衛生法に基づくコメのカドミウム基準値が、現行の1.0mg/kg未満から0.4mg/kg以下となることを踏まえ、これまでに本研究所が開発したカドミウム汚染土壌の浄化技術、土壌中カドミウムの吸収、移行抑制技術をとりまとめ「農作物中のカドミウム低減対策技術集」として作成・公表した。本資料は、農作物のカドミウム汚染リスク低減対策の関係者の施策立案・実施に資することが期待される。(2)カドミウム、ヒ素の吸収機構の解明及びリスク評価手法の開発 ナス果実のカドミウム濃度を低下させる台木種であるスズメナスビは、根から地上部へのカドミウムの移行量が少ないことを平成21年度に明らかにしていたが、シンクロトロン放射光源マイクロビーム蛍光X 線分析法を使って、この台木種の根の内皮近傍でカドミウムが高蓄積していることを可視化することに成功した。これは、スズメノナスビを台木として用いるナスカドミウム低減技術(平成19年度普及に移しうる成果)の作用機構の解明を進める上で重要な知見である。 土壌や作物中の有機ヒ素の動態解明に関して、土壌に添加されたジフェニルアルシン酸(DPAA)は、微生物の働きによってメチル化や脱フェニルにより形態変化し、イネはこれらのヒ素化合物を吸収するが、玄米へ移行するのはDPAAとメチルフェニルアルシン酸の2種類のみであることを明らかにした。この成果は、茨城県旧神栖町のDPAA関連有機ヒ素化合物による汚染問題の解決に寄与するとともに、農業環境中のこれら有害化学物質のリスク評価に貢献することが期待される。
カテゴリ 病害虫 かぼちゃ 管理技術 きゅうり 水田 ズッキーニ 台木 だいこん なす にんじん 農薬 ばれいしょ 品種 良食味

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