課題名 | 土着天敵等を利用した難防除害虫の安定制御技術の構築 |
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課題番号 | 2012020386 |
研究機関名 |
農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究分担 |
守屋成一 井原史雄 武田光能 佐藤安志 |
協力分担関係 |
生物研 茨城農総セ 千葉農林総研セ 静岡農技研 岐阜農技セ 島根農研セ 福岡農総試 鳥取農総研 信越化学工業 アリスタライフサエンス株式会社 |
研究期間 | 2011-2015 |
年度 | 2012 |
摘要 | 農業に有用な生物多様性指標の評価に基づいた環境保全型農業の評価・管理技術の開発に関しては、a)天敵類の活動を強化する下草管理を行ったナシ園において、9月以降にハダニ類が発生し、それに伴う天敵カブリダニ類の観察数は通常のシバ草・雑草管理よりシロクローバ草生管理で多くなることを確かめた。ヒイラギモクセイでは、モクセイマルハダニが6月上~中旬と7月下旬~8月上旬にピークを持つ二山形の発生消長を示し、ハダニカブリケシハネカクシとハダニクロヒメテントウの発生時期はハダニの発生に同調することを見出した。b)指標候補種である茶園のクモ類について、種特異的プライマーを使ったPCR産物の有無から餌メニュー(被食者相)を調査する手法を開発した。c)リンゴ、ナシ、モモ、カキ、カンキツ園の下草やインセクタリープランツとして、シロクローバや、ヒメイワダレソウ、イワダレソウ、アップルミント、ヒャクニチソウ、バミューダグラス、ナギナタガヤを定植すると、カブリダニ類、クモ類、ゴミムシ類、ヒメハナカメムシ類、寄生蜂類の定着が促進されることを明らかにした。d)環境保全型栽培のネギにおける主要チョウ目害虫の天敵類はオオハサミムシ、コモリグモ類、サラグモ類、ゴミムシ類、寄生蜂類であることを明らかにした。 天敵類の保護増強に有効な総合的害虫管理体系の確立に関しては、a)捕食性天敵タイリクヒメハナカメムシ及び寄生性天敵Trichogramma evanescenceに対して合成ピレスロイド剤及びネオニコチノイド剤の常用濃度下における薬剤抵抗性個体の選抜技術を開発した。b)アザミウマなどの微小害虫の天敵であるタイリクヒメハナカメムシ及びオオメカメムシを対象に、翅の切除等で飛翔不能化した放飼試験により、飛翔不能化しても定着率の大幅な改善は見込めないことを明らかにした。c)野菜害虫コナガ・ハダニ類の優良天敵(コナガコマユバチ・カブリダニ)を対象に、トラップを用いた天敵採集法やDNAマーカー等を用いた遺伝子診断法を開発した。d)既知のカブリダニ類の核ゲノム上リボソームRNA遺伝子塩基配列を比較し、農業に有用な土着天敵と期待できるケナガカブリダニ及びニセラーゴカブリダニの種特異的プライマーを設計した。e)カブリダニが捕食した種の識別法開発のために、ナミハダニ卵を捕食させたカブリダニから、ハダニ特異的プライマーによるPCR産物(核ゲノム上リボソームRNA遺伝子ITS領域)のフラグメント解析を行い、被食種を特定できることを明らかにした。f)チャノキイロアザミウマ新系統はそのミトコンドリアCOI遺伝子塩基配列データを基に設計した4プライマーを用いたLAMP法により識別可能であることを確かめた。DNAの簡易抽出法としてはPrepMan Ultraを用いた方法が有効であった。g)チャトゲコナジラミの有望天敵であるシルベストリコバチの系統識別法を確立するとともに、個体群構造の解析等に役立つシルベストリコバチのマイクロサテライト遺伝子座9座を明らかにした。h)蜜源等の代替餌を供給する天敵給餌装置について、容器の材質や代替餌となる糖類の組み合わせを検討し、コナガコマユバチを含む複数の天敵に対して生存期間延長効果を持つプロトタイプを開発した。i)冬季のアブラナ科葉菜類におけるニセダイコンアブラムシ対策として、オオムギ上にトウモロコシアブラムシを定着させ、ダイコンアブラバチを用いるバンカー法が可能であることを、無加温の栽培施設で確認した。また、ダイコンアブラバチには二次寄生蜂のAlloxysta sp. nr victrixの発生がほとんど見られないことを明らかにした。j)バンカー法の組み立てに関して、有機施設栽培での害虫発生状況を調査したところ、ミニトマトのワタアブラムシ、エンサイやシュンギクのモモアカアブラムシ、アブラナ科野菜のニセダイコンアブラムシやモモアカアブアラムシ、レタスのモモアカアブラムシなどが安定生産の妨げになっており、これらの安定的な防除のためにそれぞれの栽培体系に合致したバンカー法技術の開発が必要と判断した。k)ピーマンに農薬登録のある殺虫剤、殺ダニ剤のうち、エマメクチン安息香酸塩、クロルフェナピル、スピノサドは、ギフアブラバチ成虫に対する影響が強く、薬液を添加された成虫の死亡率が高くなることを明らかにした。ナスの葉裏に寄生しているジャガイモヒゲナガアブラムシは、ギフアブラバチ放飼5日目以降に個体数が20~30%まで減少し、ジャガイモヒゲナガアブラムシに対する速効的な抑制効果を確認した。 このほか、侵入害虫チャトゲコナジラミの分布拡大と発生状況に対応した戦略的総合防除体系を確立してマニュアル化し、冊子体の配布や農林水産省ウェブサイトを使った公開等により、防除対策の迅速な普及を図った。 |
カテゴリ | 病害虫 ICT あぶらな エンサイ 害虫 かき かぶ カメムシ 管理技術 栽培技術 栽培体系 雑草 施設栽培 しゅんぎく だいこん 茶 DNAマーカー 抵抗性 土着天敵 なす ねぎ 農薬 ばれいしょ ピーマン 微小害虫 防除 ミニトマト もも 薬剤 りんご レタス わた その他のかんきつ |