課題名 | 気象災害リスク低減に向けた栽培管理支援システムの構築 |
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課題番号 | 2015027853 |
研究機関名 |
農業・食品産業技術総合研究機構 |
協力分担関係 |
京都大学 北見農試 網走農業改良普及センター 気象庁 宮城県古川農試 東北大学 岩手大学 岩手県立大 弘前大学 十勝農業組合連合会 |
研究期間 | 2011-2015 |
年度 | 2015 |
摘要 | 早期警戒・栽培管理支援システムの構築に関しては、 a) 北日本(東北・北海道)における水稲早期警戒情報、雪割り支援情報、寒締めホウレンソウ栽培支援情報と、全国版の早期警戒・ 栽培管理支援情報伝達システム、及び関東以西のコムギの発育ステージ予測システムを統合するポータルサイトを構築し、全国版早期警戒・栽培支援システムとしてMAFFIN内で試験運用を実施した。 b) 北海道の地域・水稲品種に対応した水稲早期警戒情報システムを構築し、a)のシステム上で運用試験を開始した。メッシュ農業気 象データの予測値を活用した前歴期、危険期の低温警戒情報、及び、水稲作型設計法に基づく、移植日に対する各種リスク(活着期低温、障害型冷害発生、遅延型冷害発生)の発生確率情報のウェブサイト上での利用を可能とした。 c) 北海道妹背牛地区を対象として開発したアプリの実証試験を実施し、予測情報を含むメッシュ農業気象データを利用した給水管理 情報は、乾田直播の苗立ち率向上やコムギの収量増に効果があることを確認した。 d) 早晩性の異なる北海道の主要な水稲8品種について、栽培管理支援ツールで使用する発育モデルのパラメータを新たに作成した。 e) メッシュ農業気象データから水稲の出穂期を面的に予測する数値モデルを開発した。モデルの精度(30年間の二乗平均平方根誤差 )は2日前後であり、従来モデルと同程度である。出穂期のメッシュ図は、作柄表示地帯の出穂期をよく表現しており、本数値モデル は実用可能な方法であると判断した。 f) ダイズでは、大気CO2濃度上昇による収量増加の品種間差とその要因を明らかにした。また、開花期予測モデルの予測精度は-3~8 日であることを明らかにした。 g) 一ヶ月先までの中長期気象予測データを含む「メッシュ農業気象データ」を使用して構築した水稲、土壌凍結に関する早期警戒・ 栽培システムを、a)の全国版早期警戒・栽培支援システムに反映させたことで、中長期気象予測データがシステム上に展開された。 h) 北日本の4月、8月の負の気温相関について、先行する4月気温が低い(高い)とインドネシアを中心とした海洋大陸で下層風及び対流活動が強く(弱く)、続く8月の気温が高く(低く)なる明瞭な関係が認められ、北日本の4月の気温から同8月の気温を予測する上 で役立つ指標を得た。 i) 気象庁の「アンサンブル(複数計算結果比較処理)予報」の気象予測データを用いてイネ葉いもち感染好適条件の発生確率を実験 的に求め検証した結果、感染好適条件の発生確率は、気象予測データの精度が高いおよそ3日~4日先までが参照できる目安であることを明らかにした。 j) 葉面濡れモデルの計算結果を宮城県の現地圃場の観測値と比較し、葉面保水率を閾値とすることにより葉面濡れ時間の判定予測が 可能なことを明らかにした。 農耕地土壌からの温室効果ガス排出を削減する栽培技術の開発に関しては、 a) 先行降雨指数(Antecedent Precipitation Index:API)と、乾土効果(窒素発現)の計算基準となる水熱係数HTCの年々変動が良好 に一致し、先行降雨指数から乾土効果を推定できる可能性を得た。 b) コムギの雪腐病について、道東での発生面積率が拡大しつつあり、十勝地域では好適温度条件が高い菌種に変わりつつある可能性 をを明らかにした。 c) 過去の道東の収量決定傾向を基に、平成27年の十勝地方におけるコムギの多収要因を明らかにした。コムギの炭水化物蓄積量の品 種間差を示した。 d) 先行降雨指数による解析から、降雨による作業阻害の度合いは季節や作業内容によりで異なることを定量的に示した。 e) 積雪水量推定モデルの降雪水量推定部分に改良を加え、消雪日推定精度を若干向上させた。 f) 北海道の2地点(羊ヶ丘と美唄)で実施した水稲栽培試験において、水田土壌からのメタン発生量は、ワラ無施用よりもワラ施用において有意に高くなるが、堆肥施用によって増加しないとする平成26年と同様の傾向を確認した。 g) 水田浅耕によるメタン発生量の低減について、稲ワラすき込み後の高土壌水分が稲ワラの分解阻害に及ぼす影響をより正確に反映 できるようDNDC-riceモデルを改変し、多地点で得たメタン発生量の実測値により予測精度の向上を確認した。 h) 水田浅耕では、メタン発生量の低減による温暖化緩和効果が一部では認められるものの、ほ場や気象条件による効果発現の不確実 性が大きいこと、分解が遅いバイオ炭の畑への施用では、施用量に比例して土壌中の炭素蓄積量が増加し、大きな地球温暖化緩和効果が期待できることをLCAにより明らかにした。 i) 牛ふん堆肥(慣行バラ、慣行ペレット、窒素付加ペレット)を3種類の主要農耕地土壌へ埋設した堆肥分解試験において、炭素残存率は埋設から54ヶ月経過すると土壌間、堆肥間で差がほとんどなくなることを明らかにした。 このほか、 a) モデルシミュレーション及び全国版早期警戒・栽培管理支援システムの基礎となるメッシュ農業気象データ配信システムの要素と 予報期間の拡充と普及を進めた。さらに、電源設備のない農地などの場所で、二重通風筒を要せずに高精度な気温測定ができる温度計を考案し、特許出願した。 |
カテゴリ | 乾田直播 気候変動対策 栽培技術 水田 水稲 大豆 凍害 ばら 羊 品種 ほうれんそう 水管理 |