農畜産物の品質評価・保持・向上技術の開発

課題名	農畜産物の品質評価・保持・向上技術の開発
課題番号	2015027871
研究機関名	農業・食品産業技術総合研究機構
協力分担関係	横浜市立大学鹿児島大学東京農工大学筑波大学東京大学北海道大学北里大学九州大学宮崎大学大阪大学
研究期間	2011-2015
年度	2015
摘要	野菜・果樹・花の品質劣化機構の解明と品質保持技術の開発に関しては、 a) 鮮度マーカー遺伝子の発現を指標として、ブロッコリーの流通過程に与える要素技術の組合せ効果について検討を行った結果、MA 包装とエタノール蒸気処理の組合せによってブロッコリーの鮮度が好適に保たれることを外観品質及び遺伝子発現から確認した。 b) 紫外・近赤外分光法を用いるチンゲンサイ葉柄中硝酸イオンの非破壊計測法を開発し、参照値（破壊測定）と非破壊計測値との間に相関係数0.87（n=48）を得た。 c) 成熟果実においてオーキシン生合成が抑制される硬肉モモは、オーキシン生合成の鍵酵素であるフラビンモノオキシゲナーゼ（PpYUC10-3）遺伝子の上流に2,567bpのDNAが挿入されていることを明らかにした。 d) リンゴ品種「シナノゴールド」の長期貯蔵に最適な1-MCPの処理条件、及びシャインマスカットの収穫前殺菌処理が長期貯蔵に有効であることを明らかにした。 e) 収穫前のジベレリン・プロヒドロジャスモンの混合散布が貯蔵果実の香りを改善することを明らかにした。またウンシュウミカンを従来の3～5℃より高い10℃付近で貯蔵すると、新鮮な食味を維持しつつβ-クリプトキサンチン含量を3ヶ月程度維持・増強できることを明らかにした。 f) ダリア切り花は輸送後のベンジルアデニン（BA）再散布と糖質処理により、ラナンキュラス切り花は輸送後BA、糖質及び抗菌剤溶液で後処理することにより日持ちが向上し、グラジオラス切り花はエチレン阻害剤で前処理し低酸素包装することにより、保管後の品質が向上することを明らかにした。 g) ユリ及びチューリップ花弁では、表皮細胞に比べ柔細胞において早期から老化が進行し、柔細胞では外観上の老化が認められる前にDNA断片化や細胞崩壊等が起きることを明らかにした。 h) カーネーション切り花は採花後に水を切らすことで香気成分の発散が減少し、このとき、ショ糖からブドウ糖への代謝を触媒する β-フルクトフラノシダーゼ遺伝子の発現が低下することを明らかにした。 i) 赤色を中心とした様々な色の花の存在が人物評価に与える影響を検証し、人物の魅力度評価は赤色花弁の花で上昇しないことを明らかにした。畜産物の品質関連因子の解明と品質評価技術の開発に関しては、 a) 乳中含量の高い4種のmicroRNAは、乳タンパク質率及び無脂乳固形分と中程度の正の相関があることを明らかにした。 b) ブタアディポネクチンの定量基盤となるモノクローナル抗体を開発した。 c) 放牧牛では、miR-208bの活性化と筋転写因子MyoDの抑制により、筋線維型が細胞径の細い遅筋型へ移行することを明らかにした。 d) 豚肉の貯蔵中に、最長筋（ロース）ではイノシン酸等ATP分解産物とアミノ酸等タンパク質分解産物が増加するのに対し、中間広筋（モモの一部）ではこれら食味関連成分の変動が小さいことを明らかにした。 e) 顕微ラマン分光により脂肪の結晶化度と結晶多形を同時かつ非破壊的に可視化する技術を開発し、食肉脂肪の「しまり」等の物性に関係する脂肪の結晶状態を、視覚的に定量評価した。 f) 乳用種牛肉の官能特性を評価できる用語として「うま味」を選定するとともに、「地鶏肉らしい食感」を構成する「かみ切りやすさ」と「変形しやすさ」は、機器分析の剪断力価と有意な正の相関があることを明らかにした。加工適性の解明と加工技術の開発に関しては、 a) 酵素剥皮を実施する際の最適な条件(推奨条件)を各種カンキツ類で明らかにし、それぞれの条件において剪断応力、色調等の果実品質が無処理果実と同等程度で維持されていることを明らかにした。 b) 非スターター性乳酸菌EG9株をチーズスターターに添加することにより、熟成時の遊離アミノ酸生成が促進されることを明らかにした。 c) GABA生産菌と他の乳製品スターターを共培養した発酵乳では、アンジオテンシン変換酵素（ACE）阻害活性ペプチド類の増加とACE 阻害活性値の上昇を確認した。 d) カロテノイド生産乳酸菌は、好気培養によりイソプレノイド及びカロテノイド生合成系遺伝子群の発現量が増加し、菌株の酸化ストレス耐性が向上することを明らかにした。
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