弾力性と成形性を有するセリシンハイドロゲルの作製

タイトル 弾力性と成形性を有するセリシンハイドロゲルの作製
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2003~2006
研究担当者 岡田英二
間瀬啓介
高林千幸
寺本英敏
中島健一
飯塚哲也
発行年度 2004
要約 蚕品種「セリシンホープ」より得られる未変性セリシンを原料とし、セリシンのみからなり、弾力性と成形性を有するハイドロゲルを作製した。セリシンハイドロゲルは、組織再生や創傷治癒への応用が期待できる。
キーワード セリシンホープ、セリシン、ハイドロゲル、組織再生、創傷治癒
背景・ねらい カイコの繭糸タンパク質であるセリシンは、これまで製糸・精練の工程で不要なものとして廃棄されてきたが、最近になって多くの機能性を有することが分かってきた。例えば、骨や歯の無機成分であるアパタイトの核形成や、動物細胞の増殖を促進する作用などが報告されており、生体材料としての応用が期待されている。しかし、セリシンはフィブロインとの分離工程における熱やアルカリ処理によって容易に変性するため、その利用範囲は限られていた。
近年、セリシンのみを分泌する蚕品種「セリシンホープ」(特許第3374177号)が開発され、変性していないセリシンを大量に入手できるようになった。本研究では、このセリシンホープの繭層から得られる未変性セリシンを原料とし、セリシンのみからなり、弾力性と成形性を有するハイドロゲル*の作製を試みた。セリシン由来のハイドロゲルは、組織再生材料や創傷治癒剤としての応用が期待できる。
*ハイドロゲル:多量の水を保持している親水性高分子の構造体
例)ゼリー、こんにゃくなど
成果の内容・特徴
  1. セリシンホープ繭層より調製したセリシン水溶液の電気泳動像は明瞭なタンパク質バンドを示し、未変性のセリシンからなることを確認した(図1)。
  2. セリシンはアルコール処理によって凝集構造を形成することから、数種のアルコールの添加によるゲル化の状態を検討した結果、エタノールが最適であった。
  3. 濃度約1%のセリシン水溶液に、約10容量%のエタノールを加え冷蔵下で静置することにより、弾力性と成形性を有するセリシンハイドロゲルを得た(図2左)。ゲル化に用いたエタノールは、ゲルを水中に浸漬することで除去できる。
  4. 熱処理によって変性したセリシン水溶液からは、もろいゲル(図2右)しか得られないことから、セリシンのみからなるハイドロゲルの作製には未変性のセリシンが必要であることが確認できた。
  5. 赤外分光分析より、エタノール添加によって生じた凝集部が結び目となり、ゲルの網目構造を形成していると推察された。
  6. セリシンハイドロゲルの特徴として、以下の点が挙げられる。
    1)架橋試薬等を用いないため、残留物の危険性がない。
    2)ゴム状の弾力性とともに、任意の形状に加工可能な成形性を有する。
    3)98~99%という高い含水率を示す。

図1

図2
成果の活用面・留意点 セリシンの持つ機能性を生かし、組織再生材料や創傷治癒剤等として医療分野への応用展開が期待できる。今後、細胞接着性や薬剤徐放性などの機能解析を行い、生体材料としての応用に向けた基礎データを蓄積する必要がある。
図表1 226398-1.jpg
図表2 226398-2.jpg
カテゴリ カイコ 加工 機能性 こんにゃく シカ 品種 薬剤

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