タイトル | イネの誘導抵抗性に関わる転写因子WRKY45の発見とその利用 |
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担当機関 | (独)農業生物資源研究所 |
研究期間 | 2003~2007 |
研究担当者 |
加来久敏 高辻博志 菅野正治 霜野真幸 中山明 林長生 姜昌杰 |
発行年度 | 2007 |
要約 | イネにおいて抵抗性誘導剤ベンゾチアジアゾールの作用に必須の役割を担う転写因子WRKY45を見出し、この転写因子を過剰発現させたイネが、いもち病および白葉枯病に極めて強い抵抗性を示すことを明らかにした。 |
キーワード | イネ、抵抗性誘導剤、転写因子、いもち病、白葉枯病 |
背景・ねらい |
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成果の内容・特徴 | 1.BTH処理により、イネにおいて発現誘導される転写因子WRKY45(ワーキー45)を見出した。RNAi法によりWRKY45遺伝子を発現抑制したイネでは、BTHによるいもち病抵抗性誘導が損なわれていることから、本転写因子がBTHの作用に必須であることが示された(図1)。また、WRKY45は約300種の防御遺伝子を制御していることがわかった (図1) 2.構成的プロモーター(トウモロコシ・ユビキチン・プロモーター)の制御下にWRKY45遺伝子をイネで過剰発現させた結果(WRKY45-oxイネ)、いもち病(糸状菌病)に対して極めて強い抵抗性が認められた(図2)。また、WRKY45-oxイネのいもち病抵抗性の強さは極強品種の「戦捷」よりも強いことがわかった。 3.WRKY45-oxイネは、細菌病の白葉枯病にも極めて強い抵抗性を示した(図2)。このことから、BTHなどの抵抗性誘導剤と同様、WRKY45-oxイネは多種の病原体に対して抵抗性を有すると考えられる(複合病害抵抗性)。 4.防御応答に関わる転写因子の過剰発現は生育障害をともなう場合が多いが、WRKY45-oxイネでは、プライミング効果により抵抗性反応が病原体感染後にのみ活性化するため、生育障害が比較的少ない(図1、図3)。しかしながら、環境の影響により恒常的に抵抗性反応が誘導され、生育障害が強くなる場合があることがわかった(図3)。 5.イネのサリチル酸経路は、WRKY45の経路とOsNPR1の経路に分岐していることがわかり(図4)、WRKY45に対応する転写因子をもたないシロイヌナズナのサリチル酸経路とは異なることが明らかになった。WRKY45経路とOsNPR1経路の機能分担により、より高度な病害応答を可能にしていると推測される。 |
成果の活用面・留意点 | 1.環境により影響を受ける生育遅延を最小化するため、プロモーターの選択による導入WRKY45の発現レベルの最適化を試みている。 2.WRKY45導入による飼料用イネの複合病害抵抗性強化により、WRKY45の実用利用を図る。 3.WRKY45の機能はイネ科作物に共通している可能性が高く、コムギやトウモロコシへの応用が期待できる。 |
カテゴリ | 病害虫 いもち病 飼料用作物 抵抗性 とうもろこし 農薬 病害抵抗性 品種 |