湯種製パン法の食パン生地の特性と得られたパンの品質、食感の特徴

タイトル 湯種製パン法の食パン生地の特性と得られたパンの品質、食感の特徴
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター
研究期間 2006~2010
研究担当者 山内宏昭
西尾善太
伊藤美環子
長澤幸一
田引 正
鈴木達郎
瀧川重信
野田高弘
発行年度 2010
要約 湯種製法の食パン生地は、従来法の生地に比べ生地ガス保持性の低下等生地特性が劣るが、製パン吸水は向上する。また、湯種食パンは、従来法のパンに比べ比容積は低下するが、ソフトで保存中のパンの硬化(老化)が非常に遅く、食感は弾力性の強い特徴を示す。
キーワード 湯種パン、小麦粉、製パン性、老化、食感
背景・ねらい 近年、ほのかな甘みがありモチモチ食感の湯種製法のパン(小麦粉の一部に同量の熱湯を添加しミキシングした生地を一晩冷蔵して調製される湯種生地を添加して製造されるパンのこと)が、ロングセラーヒット商品として注目されている。しかし、湯種製パン法の製パン性、得られたパンの品質等について科学的なデータは余り発表されていない。そこで、本研究では標準的な食パン配合、製法の湯種パンを試作し、従来法(湯種生地無添加のノータイム法)のパンと比較して湯種製パン法の製パン性と得られたパンの物性(老化、食感等)について評価・解析した。
成果の内容・特徴
  1. 湯種製法による食パン製造においては、湯種生地の添加量の増加に伴って、生地ガス保持性、ガス発生量、比容積が低下し、最終発酵時間が増加する等従来法に比べ製パン性が低下するが、製パン吸水が増加するためパンの水分含量は増加する(表1)。
  2. 湯種製法の食パン製造においては、湯種生地の添加量の増加に伴う比容積の低下によりパンの外観、パンの内相の品質がやや低下する傾向がある(図1)。
  3. 湯種製法の食パンではその生地の添加量の増加に伴って、保存経時のパン中のデンプンの老化が遅くなる(図2)。
  4. 湯種製法のパンではその生地の添加量の増加に伴って、焼成直後のパンはソフトになり、その硬化(老化)は明らかに遅くなる。また、保存中のパンは従来法のパンと比較し高い凝集性(パンの弾力性の指標)を示し、弾力性の強い特徴的食感を示す(図3)。
  5. 湯種生地の特性、湯種パンの品質(主に比容積、内相、食感)等から総合的に判断し、湯種パンを商品化する場合、湯種生地の添加量は20%が適当である(表1、図1、図3)。
成果の活用面・留意点
  1. 本成果は市販外国産強力小麦粉を用いて得られたものである。
  2. 本成果の内容を利用し、十勝地域の製パンメーカーにおいて道産小麦粉を用いた湯種食パンが開発、商品化され、継続的に販売されている。
図表1 234634-1.png
図表2 234634-2.png
図表3 234634-3.png
図表4 234634-4.png
カテゴリ 小麦

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