タイトル |
カキ育種における柔軟・多汁な実生個体の出現率の推定 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 |
研究期間 |
2009~2011 |
研究担当者 |
伴 雄介
河野 淳
三谷宣仁
佐藤明彦
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発行年度 |
2012 |
要約 |
一般化線形モデルによりカキ両親の果肉硬度平均値が中程度の交配組合せでも柔軟な実生個体が約13%出現すると推定される。また、両親の多汁性および果肉硬度の平均値が中程度の交配組合せから多汁な実生個体が約11%出現すると推定される。
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キーワード |
カキ、果肉硬度、多汁性、一般化線形モデル、官能評価
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背景・ねらい |
果樹育種では、交配親の特性値から、望ましい特性を持つ実生個体の出現率を推定することが育種を効率的に進めるうえで重要になる。果実重、熟期、糖度のような定量データの場合、実生個体の出現率は、子が両親を同一とする家系における平均値から正規分布にしたがって分離することを前提としたモデルにより、両親の平均値(平均親値)をもとに推定されてきた。その前提を必要としないモデルである一般化線形モデル(ロジスティック回帰)をカキの重要形質である果肉硬度および多汁性の官能評価データに適用し、果肉が柔軟および多汁な実生個体の出現率を推定する。
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成果の内容・特徴 |
- 果肉硬度を官能により5段階(1=軟; 2=やや軟; 3=中; 4=やや硬; 5=硬)評価したデータを用い、平均親値を説明変数、果肉硬度が軟の個体の出現率を目的変数とした回帰モデルを求めると、統計的に有意な回帰式が得られる(表1)。
- 得られた回帰は平均親値が低いほど果肉硬度が軟の実生個体出現率が高まる傾向を示すが、傾きは比較的なだらかである(図1)。回帰式より、果肉硬度が中程度(平均親値=3)の交配組合せでも、果肉硬度が軟の実生個体が13%程度出現すると推定される。
- 多汁性を官能により5段階(1=少; 2=やや少; 3=中; 4=やや多; 5=多)評価したデータを用い、多汁性が多の個体の出現率を目的変数、多汁性の平均親値のみを説明変数とした単回帰モデルおよび多汁性と果肉硬度の平均親値を説明変数にした重回帰モデルを求めると、両モデルはともに統計的に有意になる(表2)。このうち、重回帰モデルは単回帰モデルより残差逸脱度が小さく、より適合度の高いモデルである(表2)。
- 多汁性と果肉硬度を説明変数とした重回帰モデルでは、多汁性が多の実生個体出現率は果肉硬度の平均親値の影響を受け、同程度の多汁性の平均親値でも果肉硬度の平均親値が低いほど、多汁性が多の実生個体出現率は高まる(図2)。多汁性および果肉硬度が中程度(平均親値=3)の交配組合せでも、多汁性が多の実生個体が11%程度出現すると推定される。
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成果の活用面・留意点 |
- 柔軟・多汁な実生個体の出現率は、交配親の選択や目標獲得実生数など、カキ育種の交配計画を作成する際の指標として活用できる。
- 一般化線型モデルによって、他樹種においても、育種過程で蓄積されてきた官能評価による形質データを用いて、望ましい形質を持つ実生個体の出現率を推定できる。
- 出現率のような割合データでは、偶然の変動によりデータのばらつきが50%で最大に、0%および100%近くで最小になる。そのため、モデルの当てはまりがよい場合でも、データのばらつきが見かけ上大きくなることがある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/fruit/2012/142b0_01_06.html
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カテゴリ |
育種
かき
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