アブシジン酸代謝酵素遺伝子の変異集積はコムギの穂発芽耐性を向上させる

タイトル アブシジン酸代謝酵素遺伝子の変異集積はコムギの穂発芽耐性を向上させる
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 作物研究所
研究期間 2009~2013
研究担当者 蝶野真喜子
松中仁
関昌子
藤田雅也
乙部千雅子
小田俊介
小島久代
小林大佑
川上直人
発行年度 2013
要約 コムギでは、アブシジン酸代謝酵素の同祖遺伝子群に生じた変異を集積すると、種子に含まれるアブシジン酸量が増えて、収穫適期の種子発芽が抑制される。この遺伝子変異の集積は、圃場に播種した際の発芽を阻害することなく、穂発芽耐性を向上させる。
キーワード コムギ、アブシジン酸、代謝酵素、遺伝子変異、穂発芽
背景・ねらい 乾燥地を起源とするコムギは休眠が弱く、収穫期が多雨・多湿となる日本では穂発芽しやすい。そのため、穂発芽耐性の向上したコムギ品種の作出が強く望まれている。種子発芽を抑制する植物ホルモンのアブシジン酸(ABA)は、種子が成熟する過程で蓄積され、また、種子が吸水し発芽する過程で急激に減少する。このABA量の減少に関わるABA代謝酵素(主にABA8'位水酸化酵素、以下ABA8'OH)が機能を失えば、種子の中に含まれるABA量が維持されて、発芽が抑制される可能性がある。そこで、コムギの種子で発現するABA8'OH同祖遺伝子群(TaABA8'OH1s)の変異集積個体を用いて、TaABA8'OH1s の変異集積がABA量や種子発芽に与える影響について圃場レベルで解析し、TaABA8'OH1s の変異集積が穂発芽耐性の向上につながるかどうか検討する。
成果の内容・特徴
  1. 品種「タマイズミ」(TaABA8'OH1-D 挿入変異を有する)とそのガンマ線照射変異体TM1G1833(TaABA8'OH1-A 欠失変異とTaABA8'OH1-D 挿入変異を有する)を比較すると、種子成熟過程における種子重や種子の含水率の変化には大きな違いはないが、TaABA8'OH1 の発現量は「タマイズミ」よりTM1G1833で少なく(図1)、ABA量は「タマイズミ」よりTM1G1833で多い(図2)。
  2. .収穫適期に採取した種子や穂を用いて発芽試験や穂発芽検定を行うと、TM1G1833は「タマイズミ」より発芽しにくく(図3)、穂発芽しにくい(図4)。
  3. 収穫直後の種子(休眠種子)では、「タマイズミ」よりTM1G1833で発芽が抑制されているが、収穫後保存して休眠から覚めた種子(非休眠種子)では、TM1G1833は「タマイズミ」と同程度に発芽し、生育する。
  4. 以上のように、TaABA8'OH1s に生じた変異を集積すると、種子成熟過程の種子に含まれるABA量が増大し、収穫適期における種子発芽が抑制され、穂発芽耐性が向上する。このTaABA8'OH1s の変異集積による発芽抑制効果は休眠種子で顕著であり、非休眠種子を圃場に播種した際には発芽阻害や生育遅延を生じない。よって、TaABA8'OH1s の変異集積は、コムギの穂発芽耐性の向上に利用できる。
成果の活用面・留意点
  1. TaABA8'OH1s の遺伝子変異の集積は、圃場に播種した場合に発芽阻害や生育遅延を生じることなく、穂発芽耐性を向上させる。
  2. 「タマイズミ」以外の品種を用いてTaABA8'OH1s の変異集積による発芽抑制効果を検討する必要がある。
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図表2 236461-2.jpg
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研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nics/2013/nics13_s07.html
カテゴリ 乾燥 播種 品種

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