遺伝子組換えカイコの第一種使用等としての隔離試験飼育の開始

タイトル 遺伝子組換えカイコの第一種使用等としての隔離試験飼育の開始
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2008~2014
研究担当者 河本夏雄
行弘研司
飯塚哲也
岡田英二
津田麻衣
田部井豊
冨田秀一郎
木内信
瀬筒秀樹
発行年度 2014
要約 遺伝子組換えカイコの養蚕農家での飼育を可能とするため、遺伝子組換え動物として国内初の第一種使用等となる遺伝子組換えカイコの飼育試験を開始し、管理手法の検討やモニタリングを実施した。
キーワード 遺伝子組換えカイコ、第一種使用等、生物多様性影響評価、高機能シルク
背景・ねらい 新しい産業を興すため、蛍光を発するシルクなど付加価値の高いシルクを生産する遺伝子組換えカイコの開発が進んでいる。遺伝子組換えカイコを養蚕農家で飼育するためには、遺伝子組換えカイコの飼育により生物多様性影響が生じるおそれがないことを示した上で、カルタヘナ法に基づく主務大臣の承認を受けなければならない(図1)。カイコは極めて高度に家畜化された動物であり、人間の助けがなければ餌も採れず、成虫も飛べないこと等から、自然条件で生存・繁殖することはない。しかしながら、国内にはカイコの近縁野生種であるクワコが生息しており、特にクワコとの交雑性に起因する生物多様性影響が生じる可能性について適切に評価することが求められる。
本研究では、一般的な養蚕農家でのカイコの飼育におけるクワコとの交雑の可能性を検証するとともに、遺伝子組換え動物として国内初となる第一種使用等として、緑色蛍光シルクを生産する遺伝子組換えカイコの隔離飼育区画での飼育の大臣承認を得て、飼育試験を開始し、養蚕農家で飼育する場合の生物多様性影響を評価するための科学的データを取集した。
成果の内容・特徴
  1. 北海道から熊本まで日本各地37か所で採集したクワコ3,633頭について、ミトコンドリアCOI遺伝子の塩基配列をカイコ147系統と比較したところ、両者には明確な違いがあり、カイコとクワコが交雑した痕跡は見られなかった。
  2. 屋外に掘った穴の中でカイコ5齢幼虫(4回の合計で800頭)を飼育したところ、アリやハチなどの昆虫やムクドリなどにすべて捕食され、繭を形成した個体はなかった。
  3. 緑色蛍光シルクを生産する遺伝子組換えカイコと非遺伝子組換えカイコの行動を比較したところ、5齢幼虫の移動距離は両者で統計的な有意差がなかった(図2左)。また、メス成虫の産卵範囲は遺伝子組換えカイコの方が狭かった。
  4. カイコの幼虫や糞を含む飼育残渣が与える影響の調査として、幼虫や糞の粉末を土壌中に混入し、ブロッコリーの発芽や生育、土壌細菌数などを調査したところ、遺伝子組換えカイコと非遺伝子組換えカイコで統計的な有意差は見られなかった(図2右)。
  5. 緑色蛍光シルクを生産する遺伝子組換えカイコを、養蚕農家と同じような環境で飼育した場合の生物多様性影響を調査するため、隔離飼育区画で第一種使用等による飼育試験を開始した(図3)。周辺でクワコを採集するモニタリングを実施したところ、遺伝子組換えカイコとクワコとの交雑個体は見つからなかった。
成果の活用面・留意点
  1. 今回取りまとめた手法を活用して、遺伝子組換えカイコの行動特性や有害物質産生性等による生物多様性影響を評価することができるようになった。また、これと併せて、隔離飼育区画での飼育試験で得られるデータを第一種使用規程承認申請に活用することにより、養蚕農家での遺伝子組換えカイコの飼育が可能になると期待される。
図表1 236879-1.jpg
図表2 236879-2.jpg
図表3 236879-3.jpg
研究内容 http://www.nias.affrc.go.jp/seika/nias/h26/nias02610.html
カテゴリ カイコ 繁殖性改善 ブロッコリー モニタリング

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