高温下における乳用種育成前期牛の維持要求量および成長に対する利用効率

タイトル 高温下における乳用種育成前期牛の維持要求量および成長に対する利用効率
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産研究部門
研究期間 2015~2016
研究担当者 野中最子
田鎖直澄
樋口浩二
Witthaya Sumamal
永西修
栗原光規
寺田文典
発行年度 2016
要約 ホルスタイン種育成前期雌牛における維持に要する代謝エネルギー量に環境温度(18~33°C)の影響は認められない。一方、代謝エネルギーの成長に対する利用効率は、高温環境下では増体に占める体脂肪の蓄積割合が高く、適温環境下と比較し高い値となる。
キーワード 乳用種育成雌牛、高温環境、代謝エネルギー、利用効率
背景・ねらい 育成期の経済性を考慮する場合、育成雌牛の維持および成長に要するエネルギー量の正確な推定が極めて重要である。近年になり地球規模での温暖化が懸念されており、高温環境下では、泌乳牛の生産性の低下のみならず、育成雌牛においても増体量が低下している。適温環境下のみならず、高温環境下における育成牛の維持エネルギー要求量や成長に対するエネルギーの利用効率について検討することは、育成雌牛を効率的に飼養する上で非常に有益である。そこで、ホルスタイン種育成前期雌牛のエネルギー出納試験結果を用いて、適温環境下あるいは高温環境下における維持に要する代謝エネルギー量(MEm)および成長に対する代謝エネルギーの利用効率(kg)について検討する。
成果の内容・特徴
  1. 解析するにあたり、適温環境下(10ヵ月齢、18~23°C)および高温環境下(9ヵ月齢、28~33°C)におけるホルスタイン種育成前期雌牛22頭・のべ53例のエネルギーおよび窒素出納成績を用いる(表1)。解析は給与飼料を変量とする混合モデルを用いる。
  2. 適温および高温環境下でのMEmおよびkgを求めるために、代謝エネルギー摂取量および蓄積エネルギー量による回帰分析を行う(図1)。その結果、MEmは適温環境下で538kJ/BW0.75、高温環境下で529 kJ/BW0.75であり環境温度間で差は認められない(P>0.05)。
  3. 一方、成長に対する代謝エネルギーの利用効率であるkgは適温環境下で0.456、高温環境下0.564であり高温環境下で高い(図1、P<0.05)。適温および高温における体タンパク質あるいは体脂肪への蓄積配分を求めると、高温環境下では、エネルギーが体脂肪としてより多く蓄積しており(図2、P<0.05)、その結果、kgも高くなる。
  4. 以上の結果より、ホルスタイン種育成前期雌牛における維持に要する代謝エネルギー量には、環境温度(18~33°C)の影響は認められないが、代謝エネルギーの成長に対する利用効率は、適温環境下と比較し高温環境下で高くなる。
成果の活用面・留意点
  1. 日本飼養標準・乳牛の基礎データとして、育成期における夏季の給与指針の参考となる。
  2. 一般的に高温時には血流量や呼吸数の増加により維持に要するエネルギー量は増加すると言われているが、増体日量0.9kg程度を目標とした高栄養飼料給与の場合、維持に要するエネルギー量に及ぼす高温環境の影響は無視できる。
  3. 成長途中である育成雌牛の体脂肪が増加すると、分娩時の難産や分娩後の産乳成績にも負の影響を及ぼす可能性があるため、高温環境下では育成雌牛のエネルギー要求量と体蓄積配分の特性を考慮した飼料設計が望まれる。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nilgs/2016/nilgs16_s05.html
カテゴリ 飼料設計 乳牛

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