タイトル |
炊飯後に褐変しにくく、食味に優れる二条裸麦品種「キラリモチ」 |
担当機関 |
(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 西日本農業研究センター |
研究期間 |
2000~2017 |
研究担当者 |
吉岡藤治
柳沢貴司
長嶺敬
高橋飛鳥
高山敏之
土井芳憲
松中仁
藤田雅也
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発行年度 |
2017 |
要約 |
裸麦品種「キラリモチ」は、プロアントシアニジンフリーの特性を有し、炊飯後に褐変しにくい。もち性であるため食味に優れ、既存品種に比べてβ-グルカン含量が高い。オオムギ縞萎縮病、うどんこ病に抵抗性である。
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キーワード |
二条ハダカムギ、プロアントシアニジンフリー、もち性、低褐変、β-グルカン
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背景・ねらい |
主食用の大麦は炊飯後の白度が高い品種が望まれているが、既存の品種は炊飯後に褐変しやすい。褐変にはポリフェノールの一種であるプロアントシアニジンが関与する。またもち性大麦は、炊飯麦が粘弾性に富み食味が良くなり、健康維持機能があるとされる食物繊維のβ-グルカン含量が高まる。そこで、プロアントシアニジンフリー(ant28遺伝子による)特性ともち性(アミロースフリー)の特性を両方有し、機能性成分であるβ-グルカン含量も既存品種に比べて高い特徴を持つ品種を育成する。
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成果の内容・特徴 |
- 「キラリモチ」は、2000年7月に「四国裸103号」(後のユメサキボシ)と「大系HL107」(後のとちのいぶき、ant28遺伝子を持つ)のF1を母親とし、「四国裸97号」(アミロースフリーのもち性)を父親として人工交配し、系統育種法で育成した裸麦である。品種登録出願した2009年度の世代は雑種第11代である。
- 二条並性で、播性の程度はIである。「イチバンボシ」と比べると出穂期は同程度で、成熟期は3日遅い。「ユメサキボシ」と比べると出穂期・成熟期ともに2日早い(表1)。
- 稈長は「イチバンボシ」より短く、穂数は多い。「ユメサキボシ」と比べると穂長・穂数は同程度であり、耐倒伏性は"強"である(表1)。
- オオムギ縞萎縮病抵抗性・うどんこ病抵抗性は"極強"で、開花受粉性だが赤かび病抵抗性は"やや強"である。穂発芽性は"易"である(表1)。
- 子実重と整粒重は「イチバンボシ」「ユメサキボシ」より劣る(表1)。
- 60%歩留搗精した精麦白度は「イチバンボシ」「ユメサキボシ」よりやや優れる。精麦時間は長く掛かるが、砕粒率は低い(表1)。
- 精麦の全ポリフェノール含量は「イチバンボシ」「ユメサキボシ」の半分で、プロアントシアニジンはほとんど含まれない。このため炊飯保温後の明るさ(L*)・赤み(a*)の変化が少なく(表1)、褐変しにくい(写真1)。
- β-グルカン含量は「イチバンボシ」「ユメサキボシ」に比べて約1.5倍高い(表1)。
- 炊飯麦の食味は「イチバンボシ」「ユメサキボシ」と比べて白さ・粘り・味がかなり優れる。硬さは軟らかく、香りはやや優れる(表2)。
- アミロースフリーのもち性の特性を示し、「ダイシモチ」と区別できる(写真2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 普及対象:生産者、精麦加工事業者、食品関連業者、消費者
- 普及予定地域・普及予定面積等:茨城県で2017年2月に奨励品種に採用され、2018年産は約92ha作付け、2020年産で300haを作付け見込み。2017年度に岡山県・広島県で産地品種銘柄に認定された。これらを含め、2017年12月までに33道県・延べ約190生産者に種子提供しており、利用許諾先は20件以上になった。2018年産の推定作付面積は全国で200~300ha、2019年産はさらに増加すると見込まれる。
- その他:「キラリモチ」が原料であることを明記した精麦商品も複数販売されている。
栽培上の注意点として、交雑を避けるため他品種と隣接して栽培しない。穂発芽性が易なので適期収穫を徹底する。二条種であるが開花受粉性なので赤かび病の防除は開花期に行う。
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/popular/result020/2017/17_031.html
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カテゴリ |
病害虫
育種
萎縮病
うどんこ病
大麦
加工
機能性成分
受粉
抵抗性
はだか麦
品種
防除
良食味
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