RdDM を介したエピゲノム編集によるイネ形質改変

タイトル RdDM を介したエピゲノム編集によるイネ形質改変
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門
研究期間 2016~2018
研究担当者 若佐雄也
川勝泰二
発行年度 2018
要約 内生遺伝子のRNA-dependent RNA methylation(RdDM)によるtranscriptional silencing (TGS)誘導を介した形質改変は、これまでイネでは困難とされていたが十分に適用可能である。しかし、形質の安定性には課題が残る。
キーワード NPBT、イネ、エピゲノム編集、RdDM、TGS
背景・ねらい new plant breeding techniques(NPBT)は、自然変異との違いが区別できない、若しくはゲノム自体には変更を加えないようにしておこなわれる植物形質改変技術の総称である。これにより改変された作物は、従来の遺伝子組換え作物の定義から外れることから、これまで消費者が感じていた懸念を払拭し、社会的受容の壁を突破できる潜在性を有している。
RdDMなどのDNAのメチル化を介した遺伝子発現制御(エピゲノム編集)は、ゲノムDNAの塩基配列の変更無しに形質改変可能であることから、NPBTの1つとして期待されている。方法としては、標的遺伝子のプロモーター領域と相同な2本鎖RNAを産生させてシトシンメチル化を誘導し、TGSを引き起こす技術である。この方法の特長は、2本鎖RNAを産生する遺伝子カセットを後代分離で除去しても、メチル化およびTGSは維持されると言われている点にある。しかし、これまでのイネにおけるRdDMによるTGSに関する研究では、内生遺伝子のTGS誘導自体困難とされていたこともあり、後代におけるTGS維持についての知見も無い。そこで本研究では、RdDMによるTGSを介した形質改変が新しいイネ育種技術として適用可能かを明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 本技術では、標的遺伝子プロモーターの2本鎖RNAの発現によってRdDMを誘導し、遺伝子発現を抑制する(図1)。本成果は、これまで困難とされていたイネ内生遺伝子のTGS誘導を6例成功させ、イネにおいても適用可能であることを示している(表1)。
  2. 2本鎖RNA発現遺伝子を後代分離で除去後、数世代にわたりTGSを維持した系統が得られる一方、途中で解除される系統も存在する。また、胚乳組織ではTGSが100%解除され、TGSを維持しづらい組織であることを示す(図2)。
  3. TGSと類似した方法にcDNA領域の2本差RNAを産生させ、mRNA分解を介してタンパク質発現を低下させるpost transcriptional gene silencing(PTGS)があるが、標的遺伝子が相動性の高いファミリーを構成していた場合、TGSの方がPTGSよりも特異性の点で優れている。
成果の活用面・留意点
  1. イネにおいてもRdDMを介したエピゲノム編集が可能であることが示されたことから、新しいイネ形質改変法として期待される。
  2. 本技術は付与形質の安定的遺伝性に課題があり、今後さらなる基礎研究を要する。
  3. TGSの解除は減数分裂時に生じやすいことから、増殖に減数分裂を介さない栄養繁殖作物での適用も興味深い。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nias/2018/nias18_s16.html
カテゴリ 育種 繁殖性改善

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