タイトル | 自家和合性で果実が大きくヤニ果の発生の少ないウメ新品種「麗和」と「和郷」 |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹茶業研究部門 |
研究期間 | 1997~2019 |
研究担当者 |
八重垣英明 末貞佑子 山口正己 土師岳 澤村豊 安達栄介 山根崇嘉 鈴木勝征 内田誠 |
発行年度 | 2020 |
要約 | 「麗和」と「和郷」は自家和合性のウメ新品種である。30g以上の果実が収穫できて、果実の生理障害であるヤニ果の発生が少ない。自家不和合性品種の結実不良が問題となっている地域で結実を安定させる品種として期待できる。 |
キーワード | ウメ、自家和合性、大果、ヤニ果 |
背景・ねらい | ウメの主要品種である「南高」や「白加賀」は自分の花の花粉では受精・結実できない自家不和合性を持つため、安定した栽培のためには受粉樹の混植が必要である。また近年、開花期の天候不順の影響で、訪花昆虫の活動低下などにより結実が安定しない年が増えている。受粉樹が不要となる自家和合性品種を用いることで結実不良の問題の解決が期待できることから、自家和合性品種が求められている。しかし、ウメの自家和合性品種は『小梅』と呼ばれる果実が10g程度以下の品種が多く、高値販売が期待される大果の自家和合性品種は少ない。また、一般に大果品種ではヤニ果と呼ばれる生理障害の発生が目立つものが多く、白干し梅等への加工利用の際に問題となっている。 そこで、自家和合性を持ち、果実が30g以上と大果になり、ヤニ果の発生が少ない新品種を育成する。 |
成果の内容・特徴 | 1.「麗和」は1998年に農研機構果樹研究所(現 果樹茶業研究部門)において「加賀地蔵」に自家和合性の「月知梅」を交雑し、得られた実生から選抜した。「和郷」は1999年に自家和合性を持つ「剣先」に選抜系統のMM-43-22(梅郷×MM-20-2)を交雑し、得られた実生から選抜した。いずれも2008年よりウメ第3回系統適応性検定試験に供試してその特性を検討し、2020年2月の同試験成績検討会において新品種候補とした。2020 年4月30日に品種登録出願し、2020年7月16日に出願公表された。 2.樹姿は「麗和」は直立と開張の"中間"、「和郷」は"やや開張"である。花型は「麗和」は八重咲き(図1)、「和郷」は一重咲きで、両品種とも花粉発芽能力を有し、自家和合性である。開花盛期は「麗和」は3月12日頃、「和郷」は3月11日頃で、「南高」より遅く、「白加賀」より早い。収穫盛期は「麗和」6月22日頃で「南高」と同時期、「和郷」は6月18日頃で「南高」より早い(表1)。 3.果形は「麗和」は"円"で整い、「和郷」は"短楕円"である。果皮の地色および果肉の色は「麗和」は"緑"および"淡緑"、「和郷」はいずれも"淡緑"である。果実重は「麗和」は38g程度、「和郷」は34g程度で「南高」より小さいものの、ウメの中では大果である(図1および2)。核重は「麗和」は2.7g程度、「和郷」は1.7g程度で「南高」より小さい。「和郷」は果実重に占める核重の割合が4.8%程度と極めて低い(図2)。外ヤニ果および内ヤニ果の発生は両品種ともほとんど見られない。果汁の滴定酸度は両品種とも6.7程度で「南高」、「白加賀」と有意な差は無い(表2)。 4.両品種とも成熟期の果皮および果肉の軟化がやや遅く、白干し梅に加工した際に硬めの製品となることがある。梅ジュースに加工した際に大きな問題は見られない。 5.両品種の花粉は他品種にも受粉可能であり、開花期も遅いため、「白加賀」、「古城」、「露茜」などの雄性不稔性で開花期が遅い品種の受粉樹として有望である。 |
成果の活用面・留意点 | 1.普及対象:ウメ生産者。 2.普及予定地域・普及予定面積・普及台数等: 自家和合性品種の導入により結実不良の改善を目指すウメ産地および雄性不稔性で開花期が遅い品種を栽培しているウメ産地。 「麗和」は関東、近畿、四国、九州地方で、「和郷」は関東、近畿、四国地方での系統適応性検定試験は行われているが、それ以外の地域では試験を行っておらず、これらの地域での特性は明らかになっていない。「麗和」は四国、九州地方では果実が小さくなる傾向がある。 3.その他:苗木の販売は2021年の秋季より開始予定。 |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nifts/2020/20_025.html |
カテゴリ | うめ 加工 自家和合性品種 受粉 新品種 生理障害 茶 品種 |