タイトル | 乳房炎治療に有効な免疫調節因子に中鎖脂肪酸モノグリセリドを配合すると効果が高まる |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 |
研究期間 | 2017~2019 |
研究担当者 |
菊佳男 大田方人 林智人 長澤裕哉 立松謙一郎 宮澤光博 櫛引史郎 津久井利広 猪狩義勝 都丸友久 諏訪久仁子 |
発行年度 | 2020 |
要約 | 組換え牛顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子(rbGM-CSF)に中鎖脂肪酸モノグリセリドを基剤として配合することによって、rbGM-CSFの乳房内拡散性および分散性が高まり、rbGM-CSF単独に比べ乳房炎用注入剤としての治療効果が向上する。 |
キーワード | 乳房炎用注入剤、顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子、中鎖脂肪酸モノグリセリド |
背景・ねらい | 牛の乳房炎は、乳用牛の病傷事故発生件数において最も多い疾病であり、治癒後も乳量の減少あるいは乳質の低下を引き起こすことによって、酪農生産者に重大な経済的損失を与える疾病である。乳房炎に対する治療の多くは抗菌薬の利用により行われるが、薬剤耐性菌出現の問題からその使用量の低減が求められている。乳房炎治療に用いられる抗菌薬の代替薬として、免疫調節因子の1種である顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子(GM-CSF) が期待されており、泌乳期乳房炎に対して、遺伝子組換えカイコから精製した牛GM-CSF(TGrbGM-CSF)が一定の治療効果を有することを確認している。本研究では、抗菌性乳房内注入剤の基剤として開発された、薬剤の乳房内拡散性・分散性を向上させる効果を有する中鎖脂肪酸モノグリセリド(MCM)の配合がTGrbGM-CSFの生物活性に及ぼす影響を検証し、その配合によって乳房炎治療効果が向上することを明らかにする。 |
成果の内容・特徴 | 1.GM-CSF依存性細胞株TF-1B細胞にTGrbGM-CSF(400 pg/mL)とMCM(1.0、2.0、4.0、8.0 x 10-3 %(w/v))を添加培養することによってTF-1B細胞の増殖性試験を行うと、いずれのMCM濃度を配合した場合でもTGrbGM-CSFの生物活性は阻害されないことが示される(図1)。MCMを基剤としてTGrbGM-CSFに配合することによって、TGrbGM-CSFの効果は抑制されずに乳房内におけるTGrbGM-CSFの拡散性・分散性が高まることが見込まれる。 2.乳房炎症状を示す乳用牛に対して、MCM(5 w/v%)を配合したTGrbGM-CSF(100 μg/5 ml/乳房)を乳房内に注入すると、TGrbGM-CSF単独よりも、乳房炎症状の指標である乳汁中の体細胞数を低減させ、乳房炎治療効果が向上する(図2)。また、この効果は従来の乳房炎治療薬であるセフェム系抗菌薬含有泌乳期用乳房注入剤と同等の効果である。 |
成果の活用面・留意点 | 1.免疫調節因子であるGM-CSFにMCMを基剤として配合することにより、GM-CSF単独よりも効果の高い乳房炎用注入剤として活用することができ、乳房炎治療時の抗菌薬使用量の低減に貢献する可能性がある。 2.MCMを配合したTGrbGM-CSFは、単回投与によっても乳房炎治療効果を有するが、複数回投与や他の薬剤との併用によって更に治療効果を高めることが期待できる。 |
図表1 | ![]() |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/niah/2020/niah20_s17.html |
カテゴリ | カイコ 耐性菌 乳牛 薬剤 |