タイトル | 国内で有効なダイズ茎疫病抵抗性遺伝子を有する育成系統を選抜できるDNAマーカー |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 中日本農業研究センター |
研究期間 | 2016~2020 |
研究担当者 |
松岡淳一 高橋真実 山田哲也 河野雄飛 山田直弘 高橋浩司 森脇丈治 赤松創 |
発行年度 | 2021 |
要約 | 国内のダイズ茎疫病菌株に広く効果的な抵抗性を示す「すずみのり」は第三染色体短腕に抵抗性遺伝子RpsT1、RpsT2、RpsT3を保有する。3遺伝子を挟むDNAマーカー(BARCSOYSSR_03_209とBARCSOYSSR_03_385)は「すずみのり」由来のダイズ茎疫病抵抗性の選抜に有効である。 |
キーワード | ダイズ茎疫病、抵抗性遺伝子、Rps、ダイズ、DNAマーカー |
背景・ねらい | 集中豪雨等で突発的な多発生が懸念されるダイズ茎疫病(以下、茎疫病)に対して、抵抗性遺伝子の利用は、低コストで効果の大きい防除対策である。これまで実施した茎疫病抵抗性遺伝資源の探索の結果、「すずみのり」(旧系統名「東山231号」)は国内で収集した病原型の異なる茎疫病菌株の約9割に抵抗性を示したことから有望な遺伝資源である。国内のダイズ育成系統への茎疫病抵抗性遺伝子導入を促進するために、「すずみのり」と罹病性「シュウレイ」との交雑後代を用いて当品種の保有する抵抗性遺伝子座の解析を行い、抵抗性遺伝子の効果を評価するとともに、抵抗性系統の選抜に有効なDNAマーカーを見出す。 |
成果の内容・特徴 | 1. 「すずみのり」では、第三染色体短腕の狭い領域(約8cM)に3種類の茎疫病抵抗性遺伝子RpsT1、RpsT2、RpsT3が集積している。RpsT1、RpsT2、RpsT3は3遺伝子の両端を挟むSSRマーカーBARCSOYSSR_03_0209およびBARCSOYSSR_03_0385を併用することで理論上99.2%の精度で3遺伝子を有する系統を選抜できる(図1-A、B)。 2. BARCSOYSSR_03_0209およびBARCSOYSSR_03_0385は「すずみのり」と国内の主要品種(「エンレイ」、「里のほほえみ」、「フクユタカ」、「タチナガハ」、「ミヤギシロメ」、「シュウレイ」、「タンレイ」)などとの間で多型を示す。そのためこれらのマーカーは「すずみのり」の抵抗性遺伝子を上記品種に導入する際、抵抗性系統の選抜に利用できる(図1-C)。 3. RpsT1、RpsT2、RpsT3をすべて保有する後代系統は国内の茎疫病20菌株すべてに抵抗性を示し、いずれの遺伝子も持たない後代系統はそれらすべてに罹病性を示す(表1)。本研究で明らかになった抵抗性遺伝子座の導入により、「すずみのり」と同等の広い病原型に対する効果を持つ抵抗性系統の選抜が可能である。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 本成果は「すずみのり」に由来する抵抗性を有する後代系統の選抜に適用する。 2. 「すずみのり」は複数の茎疫病抵抗性遺伝子を集積しているため、単一の菌株(病原型)に対し抵抗性を誘起する遺伝子数が多くなることにより(表1)、1遺伝子による抵抗性と比較してダイズ品種・系統が罹病化するリスクが軽減される。一方、これらは全て真性抵抗性であるため、遺伝子を導入した品種を長期間栽培することで生じうる病原菌の病原性変異に伴う抵抗性打破には注意を要する。 |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/carc/2021/carc21_s07.html |
カテゴリ | 遺伝資源 大豆 DNAマーカー 抵抗性 抵抗性遺伝子 低コスト 品種 防除 |