ｂ．未利用バイオマス及び資源作物を原料とした低コスト・高効率バイオエタノール変換技術の開発

• 課題番号: 2009013914
• 研究機関名: 農業・食品産業技術総合研究機構
• 研究分担: （独）農業・食品産業技術総合研究機構,食総研,食品素材科学研究領域,糖質素材ユニット; （独）農業・食品産業技術総合研究機構,食総研,食品バイオテクノロジー研究領域,機能分子設計ユニット; （独）農業・食品産業技術総合研究機構,食総研,微生物利用研究領域,酵母ユニット; （独）農業・食品産業技術総合研究機構,食総研,食品バイオテクノロジー研究領域,生物機能利用ユニット; （独）農業・食品産業技術総合研究機構,東北研,寒冷地バイオマス研究チーム; （独）農業・食品産業技術総合研究機構,畜草研,機能性飼料研究チーム
• 協力分担関係: 国立大学法人東京大学; 秋田県総合食品研究所; 国立大学法人帯広畜産大学; 国立大学法人山口大学; （独）産業技術総合研究所; （独）森林総合研究所; 国立大学法人京都工芸繊維大学; 学校法人日本大学; 国立大学法人熊本大学; 国立大学法人北海道大学
• 研究期間: 2006-2010
• 年度: 2009
• 摘要: １）稲わらのアルカリ前処理における、洗浄時等にでん粉等の易分解性糖質やキシランの流亡の抑制のため、水酸化カルシウムによる前処理後に炭酸ガスで中和する技術を開発した。稲わら試料の水酸化カルシウム前処理後に炭酸ガスまたは塩酸中和を行い、酵素糖化工程に供した。その結果、炭酸ガス中和法により調製した試料について、コシヒカリではキシランが、そしてリーフスターではキシラン及び易分解性糖質が系内に残存し、後段の酵素糖化効率向上に成功した。２）燃料エタノールを安価に製造する直接発酵技術の開発を目指している。アンモニア前処理した稲わらをエノキタケで発酵処理したところ、ごく微量の糖化酵素の添加だけで効率的なエタノール生産を実現した。5mg/g生成糖相当の酵素を添加した場合では最大0.34L/kgバイオマスのエタノール生産が確認された。エタノール回収率は非常に高く、アンモニア処理した稲わらの総6単糖に対し約78%に達した。３）セルロース糖化酵素を効率的にオンサイト生産するため、Trichoderma reesei ATCC66589株により酵素生産の効率化を進め、市販酵素製剤原液とほぼ同等の力価を得ることに成功した。エタノール発酵工程の効率化のために、発酵を阻害する因子に耐性を有する酵母の解析及び育種を実施している。本年度は酵母NFRI3164株から、エタノールや酸への耐性を強化した変異株を取得した。また、てん菜、馬鈴しょ、甘しょなど資源作物からのエタノール生産に優れている酵母株を発見した。収穫期の稲わら中では、易分解性糖質の大部分が稈部に局在していることを確認し、リーフスター稈部を基質として、基質濃度20%の条件で8.8%（w/v）のエタノール生産を達成した。また、グルコースとキシロースの混合液を基質としてSaccahromyces cerevisiae及びPicha stipitisによる発酵法を開発し、30℃、40時間で85.5%の発酵収率を得た。さらにキシロース代謝経路を導入したSaccharomyces cerevisiaeを作製 することにより、高い発酵能が得られた。また、40℃においても高いエタノール発酵能を有する酵母株を得ることができた。４）甘しょ、馬鈴しょ及びてん菜原料のバイオエタノール発酵残さの粗たんぱく質はそれぞれ28%、47%、22%で、原料の5-10倍高い含量であった。これらの粗脂肪も原料に比べて発酵残さの方が7倍以上高かった。一方、甘しょと馬鈴しょの場合は粗繊維(OCW)と酸性デタージェント繊維(ADF)は原料に比べて発酵残さは8倍以上、てん菜が2倍程度高くなった。甘しょ、馬鈴しょ及びてん菜のバイオエタノール発酵残さの容量は原料に比べて顕著に減少した。また、馬鈴しょからの発酵残さサイレージの調製試験では、乳酸生成能と酸耐性が高く、サイレージ発酵に有効な乳酸菌畜草1号とRO50を選抜した。これら乳酸菌の添加により、乳酸が高く、pHが低い良質なサイレージが調製でき、長期貯蔵も可能であることが認められた。さらに、てん菜原料の発酵残さ中の糖含量は0.5%以下となり、エタノール発酵過程において消費された。甘しょ、馬鈴しょ及びてん菜のバイオエタノール抽出残さの可消化養分含量(TDN)はそれぞれ50%、44%、43%と推定され、原料に比べその可消化養分量(TDN)は大幅に減少した。甘しょ、馬鈴しょ及びてん菜を利用したバイオエタノール抽出残さの粗たんぱく質と粗脂肪などの飼料成分のロスは少なく、牛の餌として利用できる。
• カテゴリ: 育種 えのきたけ 生産拡大 長期保存・貯蔵 低コスト