農作物等における放射性物質の移行動態の解明と移行制御技術の開発

課題名 農作物等における放射性物質の移行動態の解明と移行制御技術の開発
課題番号 2012020447
研究機関名 農業・食品産業技術総合研究機構
研究分担 太田健
協力分担関係 東京大学
福島県農業総合センター
岩手県農業研究センター
栃木県農業試験場
茨城県農業総合センタ-
宮城県畜産試験場
産総研
研究期間 2012-2015
年度 2012
摘要 農作物等における放射性物質の移行動態の解明と移行低減技術の開発に関しては、a)水稲では、長期間カリを施用しないと、三要素を施用した場合に比べて玄米の放射性セシウム含量が高まる傾向を示したが、玄米への移行係数は平成23年度よりも低下傾向にあった。茨城南部の圃場(交換性カリ含量15mg~22mg/100g)で調査した結果、カリ施肥法(量、時期)による明確な違いはなく、中干しの長期化と早期落水によって移行が有意に低減することを明らかにした。このほか、平成23年成果として示した土壌の交換性カリ25mg/100gを目標とする対策の実施により、平成24年作玄米の放射性セシウム濃度の低減に寄与したとする評価を得た。b)粘土含量の高い現地農家圃場において、水による土壌撹拌・除染(代かき除染)後の水稲生産では、玄米に15%の減収が認められたのに対して、ゼオライトの1t/10a施用によって7%の減収に留まり、玄米放射性セシウム濃度が代かきもゼオライト施用も行わない対照区の20%に低減(代かき除染のみでは40%に低減)する効果を確認した。c)ムギ類、ナタネの平成24年作における移行係数は各々子実で移行係数は極めて低く、土壌の交換性カリ含量が低いと高まる傾向を明らかにした。また、夏作・秋作キャベツの移行係数についても土壌の交換性カリ含量と負相関を認めた。d)ダイズでは、平成23年作においてカリ施肥やバーミキュライト施用による移行抑制が顕著であった圃場は、セシウムを固定しにくい粘土鉱物組成であることを明らかにした。生育期間中の放射性セシウム濃度は、開花期では葉が葉柄、茎の2倍以上高く、生育の経過に伴いその差は減少し、子実肥大盛期における子実中の放射性セシウム濃度は他器官の1/3程度で、それ以降大差はなくなるなど、各器官におけるセシウム集積経過を明らかにした。また、硫酸カリの増施は子実の放射性セシウムの吸収抑制効果があり、ケイ酸カリ増施では明確な効果がないことを明らかにした。e)飼料作物では、堆肥を継続的に施用し、窒素単肥の肥培管理とした飼料用トウモロコシ-イタリアンライグラス二毛作栽培体系において、放射性セシウムの移行を抑制できる栽培後土壌の交換性カリ含量は、関東東海地域の飼料畑土壌診断基準の上限値程度であることを明らかにした。f)放射性セシウムを3,800 Bq/kgを含む堆肥を7t/10a施用して栽培した飼料用トウモロコシでは、放射性セシウム濃度が3 Bq/kg(水分80%換算)上昇した。このとき、堆肥から作物への放射性セシウムの移行程度は、土壌よりも低く、放射性セシウムを含む堆肥を施用しても作物の放射性セシウム濃度への影響は小さいことを明らかにした。g)平成23年に6圃場で調査した飼料用稲地上部への放射性セシウムの移行係数を調査し、平成24年度作に同一圃場で調査した放射性セシウム濃度は、平成23年度から55~88%減少したことを明らかにした。また、放射性セシウムの移行抑制には、堆肥の施用が有効であり、窒素多肥の継続は移行を高める傾向があること、刈り取り位置を高くすることにより放射性セシウム濃度の低減が可能であることを明らかにした。h)採草地における牧草中の放射性セシウム濃度及び空間線量率は草地更新により大きく低下することを確認し、国及び県が作成する草地除染マニュアルに用いられる作業技術体系を提示した。また、除染目的の傾斜草地更新に使用する傾斜地用無線トラクター装着ロータリを開発し、傾斜25°の草地で安定した作業が可能であることを確認した。i)果樹では、ブルーベリー、クリ、リンゴの果実における放射性セシウム濃度は、原発事故発生年と比較して各々1/10程度、1/4程度、13~15%に低下したことを明らかにした。また、事故9か月後における樹体の解体調査に基づく放射性セシウムの分布は、ウンシュウミカンでは事故後に発生した新葉に多いこと、ブルーベリーでは1年枝以外の枝と根幹に多いことを明らかにした。j)茶では、樹体中の放射性セシウムは降下直後には葉層などの樹体の上部に多く存在していたが、収穫やせん枝を経るごとに減少し、また、部位による濃度の差も小さくなることを明らかにした。また、安定セシウムを用いた実験により、降下直後の洗浄であれば濃度低減効果があることを示した。k)シュウ酸処理による化学的除染では、土壌からの放射性セシウムの溶離率は28~64%の間にあり、処理の効果は黒ボク土に比べて非黒ボク土で大きいこと。処理後土壌を圃場に還元する場合には、pH矯正及びリン酸・加里・鉄等の欠乏対策が必要であることを明らかにした。
農作物の加工工程等における放射性物質の動態解明に関しては、小麦粉から調製したうどん及び中華めんのゆで調理工程、及びオオムギからムギ茶調製工程における放射性セシウムの移行割合を求めた。また、食品中の放射性物質濃度測定の信頼性確保に貢献するために、基準値よりわずかに低い濃度の放射性セシウムを含む玄米認証標準物質を独立行政法人産業技術総合研究所と共同で国際規格に従った仕様で作成し、頒布を開始した。
放射性物質の低吸収作物及び高吸収植物の探索に関しては、a)水稲におけるセシウム蓄積の品種間差を調べた結果、植物体全体でのセシウム濃度は「ハバタキ」等のインド型品種で高く、一般的な食用品種や、飼料用品種「ふくひびき」等で低い傾向にあることを明らかにした。また、低吸収品種を育成するためのイオンビームによる突然変異個体の誘発を行い、平成25年度の選抜に供試する材料を作出した。b)畑作物では、福島県川俣町山木屋地区においてアマランス属及び各種作物を栽培し、栽培特性及び放射性物質の移行性を調べた結果、アマランス属には種間差があることを示した。c)震災以前に栽培された作物体(イネ、ダイズ、ホウレンソウ、アスパラガス、タマネギ、牧草)及び平成23年作に北海道で栽培された43作目(343品種)の19種元素(必須:P, K, Mg, Ca, Mn, Fe, Cu, Zn, B, Mo, 非必須:Co, Na, Sr, Ba, Ni, Cd, Cr, Se, Cs)について、イオノーム解析を行った結果、種間のみならず、品種間のセシウム含有率に違いが認められることを明らかにした。また、非放射性セシウムの吸収は隣接した異なる圃場においても大きく異なることがダイズ種子の非放射性セシウム含有率から明らかになった。
カテゴリ アスパラガス イタリアンライグラス 温州みかん 加工 キャベツ くり 傾斜地 栽培体系 除染技術 飼料用作物 飼料作物 水稲 施肥 大豆 たまねぎ とうもろこし 土壌診断 なたね 二毛作 肥培管理 品種 ブルーベリー ほうれんそう りんご

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