k.地域条件を活かした高生産性水田・畑輪作のキーテクノロジーの開発と現地実証に基づく輪作体系の確立

課題名 k.地域条件を活かした高生産性水田・畑輪作のキーテクノロジーの開発と現地実証に基づく輪作体系の確立
課題番号 2006008471
研究機関名 農業・食品産業技術総合研究機構
研究分担 農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター 九州畑輪作研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター 東北水田輪作研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター 北海道畑輪作研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター 中山間耕畜連携・水田輪作研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 北陸水田輪作研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター 北海道水田輪作研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター 九州水田輪作研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 関東東海水田輪作研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 北陸大規模水田作チーム
協力分担関係 ジオサーフ(株)
ピポリー技研製作所
株式会社サンポー食品
秋田県農林水産技術センター
山形県農総研センター
JA全農
茨城農業総合センター
広島県東部農業技術指導所
佐賀大学
宮崎県総合農業試験場
研究期間 新規2006-2010
年度 2006
摘要 水田輪作では、稲、麦、大豆を主な対象として、輪作体系としての生産性と収益性の向上を可能にする栽培管理技術、作業技術、肥培管理技術、経営管理技術を開発し、現地における普及を図ることを目的として、地域条件を活かして様々な取り組みがなされ、以下の結果を得た。北海道地域では、(1)水稲乾田直播において、硝化抑制剤入り肥料を用いた栽培試験区の収量は慣行の化成肥料に比べて増加した。(2)界面活性剤SDS(ラウリル硫酸ナトリウム)溶液を用いて土壌抽出液を比色する方法により、湛水培養窒素量を迅速に推定することが可能であった。(3)春まき小麦の初冬播き栽培において、種子消毒剤アゾキシストロビン水和剤処理の越冬率が最も高かった。また、消雪後の施肥と止葉期の追肥により、春まき小麦の収量が向上し、子実タンパク含量を適正範囲に収めることができた。(4)大豆の狭畦栽培では慣行畦栽培より多収が期待でき、狭畦栽培と2~3葉期までの生育期除草剤処理との組み合わせにより雑草を減少させることができた。(5)地域水田農業ビジョンを分析した結果、南空知と北空知では水稲の産地化の方向は異なるが、水稲や小麦、大豆、野菜を組み合わせた複合化の経営形態は類似していた。(6)トラクタ作業の運転支援を行うためにGPSガイダンスシステムを開発した。東北地域では、(1)転換畑大豆での有芯部分耕栽培は慣行栽培に比べ1~28%(平均11%)の生育促進(主茎長)と2~28%(平均9%)の増収効果を示すことを現地試験等で確認した。また、有芯部分耕での所要動力の低減による高速化の可能性を認めたが、トルクの周期的変動が見られた。立毛間播種による小麦・大豆2年3作体系の現地実証での作業性は問題がなく、湿害のないほ場で東北地域の平均より小麦で0~35%、大豆で62~70%高い収量が得られ、簡易型機は作業速度の向上や大豆作期前進などのメリットを示した。また、散播方式の可能性を認めた。大区画圃場での水稲乾田直播の播種作業の能率はグレーンドリル条播で1.25h/ha、広幅散布機散播で0.6h/haで苗立ちは良好で、条播(条間15cm)の全刈収量で525kg/10aが得られた。自動水管理の深夜給水によって日平均水温が慣行より0.4℃程度高く維持できる可能性が示唆された。(2)田畑輪換長期継続ほ場の復元田初年目の水稲の増収効果は連年水田に比べ大きくなく、飼料イネ連作後の大豆作は低pH土壌を除き良好な生育・収量を示したが、田畑輪換長期継続ほ場の大豆はその初作に比べ低収であった。大豆連作による減収は根粒非着生系統T201で明瞭で、堆肥施用による増収と灰色低地土と黄色土での保水性の改善が見られた。また、作土の窒素、リン酸、カリウム、マグネシウムの可給態量と収量との間には正の相関関係があった。(3)初期生長が早い水稲品種の嫌気条件でのスクロースシンターゼ活性の発芽後の急速な上昇とその後のグルコースの増加を明らかにし、鞘葉伸長速度関与遺伝子座解析に有望な系統を選抜した。箱なし育苗では苗丈5.5cmまでの被覆、24日間育苗により慣行と同程度の苗、収量・品質が得られ、純正針金製部品で欠株率が低下した。北陸地域では、(1)出芽・苗立ち向上、湿害回避のための土壌条件に応じた耕うん同時畝立て播種における砕土率とクラスト形成との関係を調べる室内実験法を開発した。すなわち、現地の圃場状態のサンプルを用いたクラスト発生・通気性試験により、土塊の粒度分布、水分状態の違いによるクラストの出来方、通気性不良の程度等を検討できることを確認した。耕うん同時畝立て播種機の汎用化を図るため、爪配列を変更し、平高畝の造成が可能となった。また、そば、麦、えだまめの耕うん同時畝立て播種作業機を試作し、そばでは半数以上の試験圃場で5~20%程度の増収が得られる等、その効果を確認した。(2)大豆等の効率的な施肥・防除技術では、大豆のちりめんじわの発生は子実肥大期の日照不足や早期落葉により、窒素の集積量が少なく、子実の肥大が十分でない状況で増加する傾向があり、子実肥大盛期前後の栄養凋落が関係することを明らかにし、微量要素複合肥料やケイ酸肥料の施用は、子実肥大期の窒素集積量を高め、ちりめんじわの発生を軽減させることが示唆された。大豆害虫のウコンノメイガ雌の放出する性フェロモンは、E10-ヘキセデセナールとZ10-ヘキセデセナールを主成分としたものであることを明らかにしたが、地域個体群が異なると雄の誘引効果に違いがある可能性が示唆された。大豆茎疫病菌株について、9道県から206菌株を分離・収集し、茎疫病抵抗性遺伝子が明らかな22品種をUSDAより入手し、増殖した。(3)水田輪作に適する野菜の栽培管理技術では、えだまめの直播栽培計画策定に役立つ、発育予測モデルを開発した。(4)現地実証では、耕うん同時畝たて播種機が大豆用に約30台導入され、実証分と合わせて約40ヶ所370haで同技術が実施され、慣行法と比較して10~20%程度の増収となった。(5)経営的評価に基づく新技術導入効果の解明では、えだまめ直播作期前進・拡大を可能とする新技術体系の事前評価を移植体系との比較を通じて行った。(6)水田輪作作物に組み込むそばについて、製麺性、食味の良い「北陸3号」を夏そば用の新品種候補として申請した。北陸地域の大規模水田では、(1)直播水稲の出芽苗立ちと初期生育の安定化技術の開発については、発生分げつの有効化を指標に湛水直播水稲の初期生育に及ぼす気温と風の影響の解析に着手した。鉄粉粉衣種子の鳥害防止効果と初期生育への影響について明らかにした。(2)大区画水田の管理精度向上については、GPSの搬送波の位相変化量から相対位置を認識する手法が軟弱土壌に対応した速度連動散布を行うのに充分な精度であることを確認し、GPSの動的精度を評価する装置を開発した。また、NIRフィルタ装着のカメラ付携帯電話によるプロトタイプの植被率センサシステムを構築した。さらに、広域的に収量情報をモニタリングする予備的なシステムの実用性を確立するため、将来センサネットワークの中継ポイントを搭載できるような小型プラットフォームを試作した。関東・東海地域においては、(1)不耕起栽培の適地を判定するためのGIS活用技術においては小麦、大豆の生育期間中の航空写真により地区内の生育状況を把握し、収量の推定が可能であることを示した。(2)麦、大豆の不耕起栽培、水稲不耕起乾田直播の現地実証試験を実施し、労働時間を60%短縮する効果を確認するとともに、生育、収量の不足等の問題点を確認した。(3)生育診断技術においては、小麦高品質化のための子実蛋白質含量予測に利用できる要素を検討したが、高い相関関係を持つ要因が見いだされなかった。(4)大豆のコンバイン収穫における収穫損失および汚粒低減技術として、刈刃の刃先角が小さく受刃ピッチが狭い狭ピッチ切断部によって頭部損失を標準に比べ50%減らすことができること、扱胴回転軸と平行に配置されたコンケーブロッドの間隙が広い幅広コンケーブによって脱穀・選別損失を1%以下に低減でき、茎水分が30~40%の範囲で標準と比較して汚粒の発生を平均で0.2ポイント低く、1等の検査基準(0.4)以下の割合を増加できることを現地実証した。(5)小明渠浅耕播種機を用いた連続浅耕栽培における小麦・大豆の生育収量は慣行と同等であった。また、前作物収穫後に荒起しを行わない小明渠浅耕播種方式では、降雨後の速やかな土壌水分低下や地耐力維持効果から長雨後の大豆播種においても2日目に作業可能であったが、慣行では約10日後の播種となり、作業可能条件が拡大することを明らかにした。(6)試作した畦間除草処理作業機は、条間30~60cmの大豆狭畦栽培の畦間除草に適応可能であり、非選択性除草剤の畦間除草処理はアサガオ類の防除に有効であった。(7)浅耕栽培の連続期間が長くなると浅耕部分(耕深0~5mm)の全窒素・全炭素含量が増加する傾向が認められた。(8)移植水稲省力化技術としてロングマット育苗は施肥のコントロールが容易であり、高温下でも伸びにくく中苗の育苗にも適することを明らかにした。近畿・中国・四国地域においては、(1)大豆跡に鉄コーティング水稲種子を湛水直播し、さらに水稲跡に不耕起播種機を用いて大麦を播種する試験を行い、問題なく効率的に播種できることを実証した。(2)大豆および大麦の播種精度を向上させるため、播種溝に対する播種部の追従性を高める機能を不耕起播種機に付加した。(3)鉄コーティング種子大量製造の実用化を図るための予備的試験を実施するとともに、ばか苗病等の糸状菌発病抑制効果を明らかにした。(4)輪作で発生する大豆の病害、カメムシ等の虫害を調査し、開花期までの土壌過湿条件が青立ち発生に及ぼす影響を明らかにした。(5)大規模現地実証事例を対象として、鉄コーティング水稲直播技術は移植栽培に比べて14%の労働時間削減と育苗・田植え省略による作業の平準化、また、大豆の不耕起播種技術は慣行栽培に比べて48%の労働時間削減になることを示した。九州地域では、(1)乾土状態でのスクミリンゴガイの生存期間を実験的に明らかにした。また、銅粉末とアクリル樹脂からなるスクミリンゴガイの忌避材を開発し、現地水路で産卵防止効果があることを確認し特許の申請を行った。さらに、作溝機を開発し-4~+182ポイント苗立ち数が向上することを確認した。(2)実用的な量の大豆を一日で加湿できる簡易な種子調湿装置を開発し、水分15%に調湿した大豆種子は未調湿の種子より多湿条件下における出芽率が優れていることを明らかにした。なおその効果は未調湿の種子に湿害が認められた多湿条件下で本装置で調湿した種子に約20ポイントの出芽率の向上が認められた。(3)地下灌漑システムにおける地下水位制御により成長阻害水分点以下の乾燥を回避でき、「フクユタカ」を7月10日に播種した場合、地下水位を35cmに維持した試験区では無制御区より面積当たり莢数や粒数、百粒重が多くなり約50kg/10a増収することを明らかにした。また、大豆用軸流コンバインにおいて青立ち大豆による汚粒を50%以上低減できるロール式受け網を開発した。(4)風乾土を105℃・24時間加熱した熱土のアンモニウム態窒素量の定量により風乾土の窒素肥沃度を簡便迅速に推定できることを明らかにした。(5)稲麦大豆作集落(62ha)モデルにて、全経営参加の集落営農は、専業(10ha)2戸が独立する場合に比べ、生産費を 10%以上低下できるが、専業の所得には大差がなく、専業の加入は集落営農の低コスト化に貢献することを解明した。畑輪作では、北海道での馬鈴しょおよび小麦、南九州での甘しょおよび露地野菜を対象に、省力的、環境保全的でかつ生産性、収益性の優れた輪作体系に関する線虫対抗植物の利用等の要素技術を設計評価する研究がなされ、以下の結果を得た。北海道では、(1)馬鈴しょ生産における栽植密度、播種床造成法、収穫法等の要素技術を適切に組み合わせた新栽培法では、規格内収量を14%向上、労働時間を23%短縮でき、40ha以上の経営規模で導入効果が期待できることを明らかにした。(2)ペンタゾンやイマザモックス散布薬害に対するチアメトキサム剤利用による薬害軽減効果が北海道で栽培されている主な大豆品種で認められ、その実用性を明らかにした。(3)コムギ赤かび病罹病麦穂における菌の動態および植物体の抵抗反応について組織化学的に解析し、主に穎部から種子、穂軸へ菌が移行・増殖していること、春まきコムギ品種では、穎内部および果皮への菌の侵入・進展の抑制が抵抗性に強く関与していることを明らかにした。(4)ジャガイモシストセンチュウ等の有害線虫に関して、馬鈴しょ以外の各種作物に対する寄生性・被害症状を調査し、線虫密度抑制効果の強い多数のミニトマト品種を見出すとともに、ジャガイモシストセンチュウが寄生している作物根では特徴的な遺伝子群が発現することを明らかにした。九州地域では、(1)ソルガム-タマネギ輪作の継続試験(タマネギ3作およびタマネギ2作)では、初作目は輪作区のタマネギ球生重が単作区よりも約20%増加したが、3作目と2作目では有意差がなくなったので、初作目の収量増収効果を引き出す体系試験が必要となった。また、サツマイモネコブセンチュウの増殖性が低いエンバク「たちいぶき」の夏播き栽培は、後作サツマイモの線虫害を抑制し、線虫の増殖抑制効果は9月上旬から下旬に播種した場合に認められることを明らかにした。(2)サツマイモ苗の大量育苗システムの開発では、「宮崎紅」と「コガネセンガン」の一節苗を育苗すると、両品種とも5週間で全長が約20cmに達し挿入適正苗の形状となった。「宮崎紅」の一節苗育苗時に効果があった暗室処理による活着率向上は「コガネセンガン」では認められず、育苗2週間後の欠株率で40%以上と著しく大きく、「コガネセンガン」の一節苗育苗には無理があると判断された。(3)南九州畑作地域における企業的経営体の経営調査から、企業的経営体は土地利用率を高め、付加価値の高い作物選択や生産方法、経営の多角化等により販売金額を高めていることが示唆された。また、経営体相互のネットワーク形成やトレーサビリティシステムの導入等により契約販売へ対応していることを明らかにした。
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