製菓適性の優れる寒冷地向け薄力小麦新品種「ゆきはるか」

タイトル 製菓適性の優れる寒冷地向け薄力小麦新品種「ゆきはるか」
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター
研究期間 1996~2009
研究担当者 谷口義則
中村和弘
平 将人
伊藤裕之
中村俊樹
石川吾郎
吉川 亮
八田浩一
前島秀和
伊藤美環子
中村 洋
伊藤誠治
発行年度 2010
要約 小麦「ゆきはるか」は「キタカミコムギ」より、エキステンソグラムにおける生地の力の程度が弱く、スポンジケーキの比容積と官能評価点に優れ、製菓適性が高い薄力小麦品種である。穂発芽性がやや難で収量性が高く、寒冷地での栽培に適する。
キーワード コムギ、菓子、エキステンソグラム、スポンジケーキ、多収、穂発芽性
背景・ねらい これまで日本では、菓子用として育成された小麦品種はなく、東北地域ではめん用品種の「キタカミコムギ」や「ネバリゴシ」が菓子用として利用されている。しかし、「キタカミコムギ」は穂発芽性が「やや易」で、収量や品質が安定しにくく、蛋白質含量が低い割に生地の力がやや強い特性を持っている。一方、「ネバリゴシ」は低アミロース小麦のため、用途が限定されている。このような状況の中、東北製粉協同組合他より、菓子専用品種の早期育成が要望されている。そこで、スポンジケーキ適性が「キタカミコムギ」より高く、収量や品質の安定した寒冷地向けの薄力小麦品種を育成する。
成果の内容・特徴
  1. 「ゆきはるか」は1997年5月に、穂発芽性が「難」で製めん適性の優れた「東山30号(後のキヌヒメ)」を母とし、赤さび病に強く、製めん適性の優れた「関東117号(後のきぬあずま)」を父として人工交配が行われ、派生系統育種法で育成された。白ふ、有芒で紡錘状の穂を有する軟質小麦で、2009年度に播種した世代はF13である。
  2. 「キタカミコムギ」よりエキステンソグラムにおける生地の力の程度および伸張抵抗が弱い。また、スポンジケーキの比容積が大きく、官能評価点が高く、菓子用としての適性がある(表1)。
  3. 「キタカミコムギ」と比べ、粗蛋白含量は同程度で灰分含量が少なく、粉の色相は明度が同程度で、赤みと黄色みが低い。アミログラムの最高粘度が大きい。短所として製粉歩留が低い。(表2)。
  4. 播性がⅣのやや早生種で、「キタカミコムギ」より出穂期、成熟期は明らかに早く、稈長が短く、穂数が多い。「キタカミコムギ」より収量は10%程度多収であるが、容積重、千粒重が小さい(表3)。
  5. 耐寒性は「やや強」、耐雪性は「やや弱」、耐倒伏性は「やや強」、穂発芽性は「やや難」である。赤かび病抵抗性が「中」で、縞萎縮病、うどんこ病、赤さび病の各抵抗性は「やや強」である(表4)。
成果の活用面・留意点
  1. 本品種は実需評価を得るために品種登録を行ったものである。当面は岩手県で実証栽培を行い、実需者によりケーキ等洋菓子や和菓子原料としての加工適性評価が行われる予定である。
  2. 耐雪性が不十分なので、作付は根雪期間80日以下の地帯とし、雪害発生のおそれのある地域では薬剤による雪腐病防除に努める。
  3. 粗蛋白含量が高いと製菓適性が低下するので施肥管理に留意する。
  4. 赤かび病抵抗性が「中」であるため、ネバリゴシ等に準じた防除を行う。
図表1 234709-1.png
図表2 234709-2.png
図表3 234709-3.png
図表4 234709-4.png
カテゴリ 病害虫 育種 萎縮病 うどんこ病 加工適性 小麦 新品種 施肥 耐寒性 抵抗性 播種 品種 防除 薬剤

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