ニホンナシの収穫期と果皮色を支配する主要なQTLの同定

タイトル ニホンナシの収穫期と果皮色を支配する主要なQTLの同定
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所
研究期間 2011~2014
研究担当者 山本俊哉
寺上伸吾
高田教臣
西尾聡悟
尾上典之
西谷千佳子
國久美由紀
井上栄一
岩田洋佳
林 武司
板井章浩
齋藤寿広
発行年度 2014
要約 ニホンナシの第3、15染色体に同定された収穫期を支配する2種類の主要QTLおよび第8染色体に同定された果皮色を支配する主要QTLの近接マーカーを利用することにより、収穫期および果皮色の早期選抜が可能である。
キーワード ニホンナシ、収穫期、果皮色、DNAマーカー、早期選抜
背景・ねらい ニホンナシを始めとする果樹類では、樹体が大きく広い栽培面積を必要とし栽培可能な個体数が限られることが育種規模の拡大を妨げてきた。重要形質に関連するDNAマーカーを利用して幼苗で不良個体を淘汰することで、育種規模の拡大と効率的な育種が可能となる。ニホンナシでは、収穫期(成熟期)や果皮色を始めとする量的形質の遺伝解析や主要なQTL(quantitative trait locusの略で、量的形質を決定している遺伝子座)の同定、およびQTLに近接するDNAマーカーを利用した選抜育種が大いに期待されている。そこで、ニホンナシ「あきあかり」と「太白」の交雑集団を用いて、果実形質のQTL解析を行い、主要なQTLの検出とDNAマーカー選抜での利用を試みる。
成果の内容・特徴
  1. ニホンナシ「あきあかり」と「太白」の交雑F1集団93個体を用いて、7種類の果実形質を2年間解析した結果、収穫期に関連する2カ所、果皮色に関連する1カ所、果肉硬度に関連する1カ所、収穫前落果の1カ所のQTLsは、両年ともに同じ染色体領域に安定して検出される(表1)。
  2. 収穫期では、第3染色体下部と第15染色体上部に2種類の主要QTLsが同定され、表現型分散の約40%が説明できる。近接マーカーは、それぞれBGA35、PPACS2(あるいはMEST050)であり、DNAマーカー選抜に利用できる(図1)。PPACS2の領域は、収穫前落果にも関連し、早生を選抜すると収穫前落果が多くなる危険性が示唆される。
  3. 果皮色では、第8染色体に1種類の主要QTLが同定され、表現型分散の約35%が説明できる。近接マーカーのCH04g12-Aは赤ナシを63%(29/46)、CH04g12-Bは青ナシを80%(37/46)の確率で判別し、DNAマーカー選抜に利用できる(表2)。
  4. ニホンナシ主要76品種とゲノム全体に配置した162個のマーカーを用いたゲノムワイド関連解析により、BGA35とPPACS2マーカーが収穫期と有意に関連することが示されている。
成果の活用面・留意点
  1. 普及対象:ニホンナシ育種を行う試験研究機関
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:DNAマーカー、および収穫期と果皮色のQTL情報は、複数の研究機関での利用が見込まれる。
  3. その他:農研機構果樹研究所では、他の研究機関に先駆けて収穫期マーカーPPACS2を利用しており、これまでの2年間で142個体の実生から早生を示すと予想される73個体をマーカー選抜している。開発したマーカーはSSRマーカーであり、アガロースゲルを用いた検出では長さの差がわずかな増幅バンドを誤って判定する可能性があるので、遺伝子型の解析および判定にあたってはDNAシーケンサーを用いるのが望ましい。同定されたQTLは「あきあかり」と「太白」で検出されたものであり、他の品種ではこれらとは異なるQTLに支配されている可能性がある。
図表1 237023-1.jpg
図表2 237023-2.jpg
図表3 237023-3.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/fruit/2014/14_036.html
カテゴリ 育種 DNAマーカー 品種

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる