食パンの硬化を低減する澱粉合成遺伝子変異の組合せ

タイトル 食パンの硬化を低減する澱粉合成遺伝子変異の組合せ
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター
研究期間 2008~2015
研究担当者 中村俊樹
新畑智也
猪熊貴之
齋藤美香
伊藤裕之
石川吾郎
瀧屋俊之
谷口義則
関口哲
発行年度 2015
要約 コムギのA、B、Dゲノム由来の3個の顆粒結合型澱粉合成酵素I型及び可溶性澱粉合成酵素IIa型のそれぞれにおいてB及びDゲノム由来の酵素を欠く変異体の澱粉は、高い老化耐性を示し焼成後の食パンの硬化低減に寄与する。
キーワード 澱粉合成酵素、アミロース、アミロペクチン、澱粉老化耐性、製パン
背景・ねらい コムギA、 B、 Dゲノム由来のアミロース(Am)合成を制御する顆粒結合型澱粉合成酵素I型(GBSSI-A1、 B1、D1)、アミロペクチン(Amp)の側鎖の伸長を制御する可溶性澱粉合成酵素IIa型(SSIIa‐A1、 B1、D1)それぞれにおいてB1及びD1を欠く変異体(表1)に注目し、準同質遺伝子系統(NIL)を用いてその澱粉特性を明らかにすると同時に利用可能性を探る。
成果の内容・特徴
  1. 本研究においては、目的遺伝子変異以外の影響を最小限に抑えるために、モチ(Wx)及び高アミロース(HA)系統を1回親、盛系D-B004を戻し親とし、DNAマーカー選抜により得られたBC5F1(Wx側)とBC6F1(HA側)を交配し、その後代より選抜されたNIL野生型(NIL1-1)とGBSSISSIIaの双方で-B1及び-D1の活性を欠く変異体(NIL5-5)を利用している(表1)。両NILにおいては、128個のSSRマーカーによりゲノムの95%以上が同一、硬軟質を決めるPin遺伝子、高・低分子量グルテニンサブユニット遺伝子も全て同一であることを確認してある。
  2. NIL5-5の種子の大きさは、野生型(NIL1-1)と変わらず(1000粒重に有意差は無い)、また外観形質、ヨウ素染色 (ウルチ)、澱粉の形態にも差は無い(図1)。
  3. NIL5-5の澱粉含量は、野生型に比べて変化しないが、Am含量は、GBSSI-B1、-D1酵素欠失のために有意に低くなる(表2)、また示差走査熱量計(DSC)による澱粉熱的特性においては、糊化ピーク温度が有意に低下する(表2)。これは、WxやHAの澱粉には見られない特徴である。またNIL5-5の変異の組合せ効果は、澱粉の老化度にも有意に現れ(表2)、NIL5-5澱粉は高い老化耐性を示す(表2)。
  4. RVA解析において、NIL5-5澱粉は、NIL1-1に対して高いピーク粘度(約1.8倍)と大きなブレークダウン(約4倍)を示す。
  5. 60%粉を用いた製パン試験では、NIL5-5 の食パンは、NIL1-1 に比べて焼成1日後から有意に柔らかく、さらに3日後においてもNIL1-1の焼成1日後以下の柔らかさを維持する(図3)。
成果の活用面・留意点
  1. 5-5タイプ育成のための選抜用DNAマーカーセットは、公開済み(Genes Genet. Syst. 81:361-365)
  2. 食パンの「柔らかさ」や「硬化の低減」に効果があるので、パン用小麦への5-5変異型の導入が望ましい。
  3. 5-5タイプの品種系統を栽培する場合は、酵素遺伝子が合計4個欠失している劣性形質なので、隔離栽培、あるいは定期的な種子の更新が必要となる。
  4. 今回実験に利用したNIL5-5は、農業特性も優れており、盛系D-074として品種登録に向けて諸特性の調査を行っている。
図表1 237830-1.gif
図表2 237830-2.gif
図表3 237830-3.gif
図表4 237830-4.gif
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/tarc/2015/tarc15_s03.html
カテゴリ 小麦 DNAマーカー 品種

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