課題名 | a.気候温暖化等環境変動に対応した農業生産管理技術の開発 |
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課題番号 | 2008010620 |
研究機関名 |
農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究分担 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,北農研,寒地温暖化研究チーム (独)農業・食品産業技術総合研究機構,東北研,寒冷地温暖化研究チーム (独)農業・食品産業技術総合研究機構,九州研,暖地温暖化研究チーム (独)農業・食品産業技術総合研究機構,果樹研,果樹温暖化研究チーム (独)農業・食品産業技術総合研究機構,果樹研,カンキツグリーニング病研究チーム (独)農業・食品産業技術総合研究機構,畜草研,畜産温暖化研究チーム (独)農業・食品産業技術総合研究機構,近農研,暖地温暖化研究近中四サブチーム |
協力分担関係 |
福岡県農業総合試験場 福島県農業総合センター 長野県果樹試験場 弘前大学 筑波大学大学院 鳥取大学 新潟大学 北海道大学 カルガリー大学(カナダ) アメリカ穀物協会 |
研究期間 | 2006-2010 |
年度 | 2008 |
摘要 | 農業生産に及ぼす温暖化の影響の解明に向けて、1)土壌凍結深モデルによる最大土壌凍結深の長期シミュレーションを行い、北海道道東地方における土壌凍結深は顕著に減少する傾向にあること、十勝の火山灰土壌において融雪期直前の土壌凍結深や表層の年最低地温と融雪期における融雪水の浸透量との間には高い相関があることを明らかにした。2)FACE実験により、周囲よりCO2濃度を200ppm高めると、水稲の生育量は19年度と同様に増大し、19%増収した。一方、19年度にはほとんど効果の認められなかった高水温処理(周囲+2℃)においても7.5%の増収効果を得た。3)大気大循環モデルの予測値を基に、領域気候モデルと新たに開発したモデル誤差補正法を用いてアメダス観測値に準じた1kmメッシュ気候予測図(気温、湿度)を作成した。 水稲等における温暖化対策技術の開発に向けて、1)水稲における環境耐性の向上に向けて、吸水能力に関与する膜たんぱく質であるアクアポリンに着目し、それをコードする遺伝子が水稲では33種存在することを見出すとともに、葉や根における発現量が種類によって異なることを明らかにした。さらに、稲の根の水透過性における温度応答性および窒素濃度応答性を明らかにするとともに、これら応答とアクアポリン遺伝子発現量の関連を示唆するデータを得た。 暖地性害虫類の北上予測等に向けて、1)アブラナ科作物の害虫コナガについて、岩手県盛岡市における最近22年間のフェロモントラップによる捕獲調査において、捕獲時期が20~30日早期化していることを明らかにした。 畜産、飼料作における温暖化対策技術の開発に向けて、1)適温環境と比較して暑熱環境下の肥育後期豚では、膵臓と空回腸重量が小さくなること、粗たんぱく質およびリジンをはじめとする各種アミノ酸の回腸末端部におけるみかけの消化率が3~7%低下することを明らかにした。2)温暖化に伴い増加が懸念される立枯症について、ライグラスいもち病菌の噴霧接種による検定法を確立した。本検定法における罹病個体の割合は、「ヒタチヒカリ」、「ワセユタカ」等の罹病性品種では90%以上であるのに対し、抵抗性品種である「さちあおば」では約50%である。 果樹における温暖化対策技術の開発に向けて、1)ぶどうの着色には着色開始後10日間の温度が大きく影響し、この期間を18℃の低温にすると着色が向上するが、40℃の高温では着色が著しく抑制されることを明らかにした。2)青森県を対象に、りんごの発芽期、展葉期、開花始期、満開期および開花終期を時別気温から予測するモデルを開発した。3)スペルミジン合成酵素遺伝子を導入した西洋なしの組換え体を解析し、スペルミジン含量が高いと、野生型よりも高い抗酸化活性が誘導され、膜の損傷も少なくなり、結果的に環境ストレスに起因する生育阻害が軽減されることを明らかにした。4)気候温暖化等に伴う降水量変動に対応した日本なしの効率的な水利用技術を開発するため、かん水量の指標となる蒸散量は、グラニエ法を用いた樹液流量の測定により1時間単位で1カ月間連続して測定できることを明らかにした。 カンキツグリーニング病の伝搬機構の解明および分布拡大阻止技術の開発に向けて、1)ミカンキジラミ体内のカンキツグリーニング病原細菌濃度を定量する技術を開発した。本技術を用いてミカンキジラミによるカンキツグリーニング病の伝搬機構を解析し、幼虫期に獲得された病原細菌は成虫体内で高濃度に増殖し、高い伝搬確率につながることを解明した。2)シークワーシャー、マンダリンの実生苗およびブンタン、レモン品種に、カンキツグリーニング病原細菌を接ぎ木接種し、症状の発現程度とPCR検定の結果に基づき、カンキツグリーニング病抵抗性系統候補として期待される3系統(ウンゾキ、導入ブンタン96130、スイートレモン)を選抜した。 温室効果ガス発生の地域的特徴の把握および発生制御法の開発に向けて、1)河川水中の溶存CO2濃度の観測より、融雪期に大気に放出されるCO2量に対する河川水に溶け込むCO2量の割合は、多雪年の方が大きくなることを明らかにした。2)北海道の常時湛水連作田では、年間に投入した稲わらに含まれる炭素の50%に相当するメタンが発生することを明らかにした。 転換畑から復元した水田からのメタン生成量は、復元初年目は僅少であるが、2年目になると増加し、19年連用田ではさらに増大した。水田への稲わら施用はメタン生成量を生育の早い時期から顕著に増大させ、増大量は高水温で特に多く、無施用時の4倍に達することを明らかにした。3)畜産に由来する温室効果ガス発生量の予測精度を向上させるため、縦型・密閉堆肥化施設における豚ふん堆肥化からの発生係数を求め、概ねN2Oは0.35%、CH4は0.04%であることを明らかにした。4)畜産や飼料生産等における温室効果ガス収支等の環境負荷量を、飼養頭数、輸入飼料量、自給飼料の作付面積・収量等からLCA手法により算出するツールを開発した。5)搾乳牛舎パーラーの排水浄化技術として、従来の処理法に比べてエネルギー消費が少なく、温室効果ガス発生量を削減可能な実規模の伏流式人工湿地(ヨシろ床)を開発し、通年で浄化効果を実証した。 |
カテゴリ | あぶらな いもち病 温暖化対策 害虫 管理技術 水田 水稲 西洋なし 接ぎ木 抵抗性 抵抗性品種 日本なし 乳牛 品種 フェロモン 豚 ぶどう ぶんたん りんご レモン その他のかんきつ |