課題名 | 受精・妊娠機構の解明と調節による雌牛の繁殖性向上技術の開発 |
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課題番号 | 2012020359 |
研究機関名 |
農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究分担 |
平子誠 |
協力分担関係 |
(独)家畜改良センター 宮城県畜試 福島県農総セ畜産研 茨城県畜産セ 埼玉県農総研セ畜産研 千葉県畜総研セ 神奈川県農技セ畜技所 静岡県畜技研 愛知県農総試 熊本県農研セ畜産研 |
研究期間 | 2011-2015 |
年度 | 2012 |
摘要 | 発情微弱化要因の解明と発情発現の明瞭化方策に関しては、a)高泌乳牛では、産歴にかかわらず、分娩後正常に卵巣機能が回復する牛は全体の1/3程度で、初産では卵巣機能の回復が遅延する牛が多く、経産牛では発情兆候の微弱化と発情間隔の乱れによる発情見逃しが多いことを明らかにした。b)肉用牛では暑熱期に鈍性発情が有意に増加し、緩慢な黄体退行が鈍性発情の原因の一つであることを明らかにした。また、発情牛の行動(乗駕許容)の様相は暑熱期でも他の時期と同等であることを示した。c)黒毛和種繁殖雌牛14頭に対して、分娩後の1~4回次発情周期にプロスタグランジンF2α製剤、安息香酸エストラジオール製剤、性腺刺激ホルモン放出ホルモン製剤を用いた発情・排卵誘起処置を行い、11頭において明瞭な発情徴候を認め、人工授精により10頭の受胎に成功した。また、黒毛和種繁殖雌牛の発情発見手法として、季節による影響を受けず侵襲性も少ない発情前後の体温(腟温)測定が有効であることを示した。 妊娠維持機構の解明と妊娠のモニタリング指標の策定に関しては、a)牛の子宮で発現する遺伝子を網羅的に解析した結果、低受胎牛では子宮機能の一部が過剰に活性化され、不受胎の一因となっている可能性があること、低受胎要因は、分娩後の経過期間に応じて異なる可能性もあることを明らかにした。また、経験的に子宮環境改善効果が期待される処理では、低受胎牛の受胎成績の改善は困難であることがわかった。b)妊娠18日目及びIFNτの子宮内投与時の末梢血白血球DNAマイクロアレイ解析により、着床前の妊娠モニタリング指標になりうる候補遺伝子を選別した。IFNτ無反応群の中から妊娠時に発現が増加する遺伝子1個を抽出した。c)オキシトシン(OT)感受性を利用した受胎性評価において、OT投与単位は100 IUが適正であることを明らかにした。 黄体機能の賦活による受胎率向上技術に関しては、受精卵移植と同時の徐放化IFNτ投与により健常な産子を得た。栄養膜小胞の子宮内注入が移植胚の生存性に及ぼす影響を解析するため、IFNτ遺伝子の定量RT-PCRによる評価系を構築した。 抗酸化機能性物質等を活用した繁殖性改善技術に関しては、a)早期に排卵しない初産牛は、摂取ベータカロテン(BC)量の割に血漿中ビタミンA(VA)とBC濃度が高い傾向があり、VAとBCの体内での利用が低下している可能性を示した。分娩後3日に比較的多量のビタミン剤を投与した早期排卵初産牛は分娩後の血漿中チオバルビツール酸反応物(TBARS)濃度の変動が小さいことがわかった。b)乾乳前期の栄養制限は、過肥を防ぐとともに卵巣機能の回復を早めること、分娩後の産乳性に影響することを示した。c)子宮内膜培養上皮細胞においてラクトフェリン(Lf)はリポポリサッカライド(LPS)に誘導される腫瘍壊死因子α(TNFα)の発現を抑制することを明らかにした。分娩前後の泌乳牛において、末梢血中のLf濃度は分娩前に高く、分娩後急激に低下し、その後は低値を維持することを確認した。d)オキソアラキドン酸を用いた後産排出技術については、オキソアラキドン酸のホルスタイン初産牛への投与時間を胎子の娩出後2時間に拡大できた。また胎盤由来線維芽細胞において、細胞剥離を誘導する12-リポキシゲナーゼ活性を初めて確認できた。 |
カテゴリ | 育種 機能性 飼育技術 受精卵移植 受胎率向上 肉牛 乳牛 繁殖性改善 モニタリング |