沖縄の秋播栽培と北海道の春播栽培を組合せた小麦世代促進の早生化効果

タイトル 沖縄の秋播栽培と北海道の春播栽培を組合せた小麦世代促進の早生化効果
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2002~2005
研究担当者 乙部千雅子(作物研)
加藤鎌司(岡大)
荒木和哉(北見農試)
高木洋子
佐藤光徳
松岡誠
西尾善太(北農研)
石川直幸(近農研)
谷尾昌彦
中道浩司(北見農試)
田引正(北農研)
田村泰章
波多野哲也(九農研)
平将人(九農研)
発行年度 2005
要約  沖縄の秋播栽培、北海道の春播栽培および暖地・温暖地の秋播栽培における出穂早晩性は、それぞれPpd・Vrn遺伝子型、Vrn遺伝子型およびPpd遺伝子型と密接に関係する。沖縄の秋播栽培と北海道の春播栽培を組合せた小麦世代促進は、暖地・温暖地で晩生を示す日長感受性個体を雑種集団から淘汰する効果を持つ。
背景・ねらい  国内の暖地・温暖地における小麦育種において、早熟化は梅雨による穂発芽被害を回避する上で重要である。一方、近年、品質や収量の向上のために、交配親として外国品種など遠縁の品種の利用が増加している。特に遺伝的組成が大きく異なる交配組合せの場合、出穂の変異が大きく、固定するのに長年を要する。したがって、早生化効果を持つ効率的な世代促進法の確立が望まれている。国内の小麦育種機関では1970年代より沖縄の秋播栽培と北海道の春播栽培を組合せた世代促進を実施している。しかし、この世代促進が雑種集団の出穂特性に及ぼす影響は十分に明らかにされていない。そこで、沖縄の石垣(24°N)、北海道の芽室(42°N)、暖地・温暖地の代表としての福山(34°N)における出穂早晩性とPpd(日長反応性遺伝子)およびVrn(春化反応性遺伝子)遺伝子型との関係を調査するとともに、石垣の秋播栽培と芽室の春播栽培を組合せた世代促進における雑種集団のPpdおよびVrn遺伝子型の頻度の変化ならびに早生および晩生個体の頻度の変化を解析する。
成果の内容・特徴
  1. 石垣の秋播栽培における出穂早晩性は、PpdおよびVrn遺伝子型と密接に関係し(Ppd-S Ppd-F&Ppd-S&Ppd欠、Vrn-A1&Vrn-D1&Vrn欠)、日長感受性品種と秋播型品種は晩生となる(表1)。
  2. 芽室の春播栽培における出穂早晩性は、Ppd遺伝子型とは関係なく、Vrn遺伝子型と密接に関係し(Vrn-A1≒Vrn-D1&Vrn欠)、秋播型品種は晩生となる(表1)。
  3. 福山の秋播栽培における出穂早晩性は、Vrn遺伝子型とは関係なく、Ppd遺伝子型と密接に関係し(Ppd-S Ppd-F&Ppd-S&Ppd欠)、日長感受性品種は晩生となる(表1)。
  4. 石垣における雑種集団の秋播栽培では、日長感受性個体と秋播型個体が淘汰される(表2AB)。一方、芽室における雑種集団の春播栽培では、秋播型個体のみ淘汰される(表2AB)。
  5. 世代促進集団と標準集団の福山における出穂日の違いはPpd遺伝子型に変異のある集団でのみ見られ、世代促進集団は標準集団より晩生個体が有意に少ない(図1AB)。これは、石垣の秋播栽培と芽室の春播栽培による世代促進栽培で日長感受性の晩生個体が淘汰されたためである。

成果の活用面・留意点
  1. この世代促進法は暖地・温暖地の春播型早生小麦の育種に有効である。
  2. 遺伝的組成が大きく異なる交配組合せの場合、固定度および晩生淘汰効果を考慮すると、F2石垣、F3芽室、F4石垣、F5芽室の2年4世代の世代促進がより効果的であると考えられる。
  3. 石垣の秋播栽培は北海道の春播栽培に適さない秋播型個体を淘汰する効果を持つため、北海道の春播小麦育種の世代促進としても有効である。ただし、北海道の春播栽培に適する日長感受性個体を淘汰しないためには、長日処理が必要である(表1の石垣L)。

図表1 214654-1.pdf
図表2 214654-2.gif
図表3 214654-3.gif
図表4 214654-4.gif
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カテゴリ 育種 小麦 品種

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